行列のできるラーメン屋さん恐怖症
行列のできるラーメン屋さんが怖い。
私が本当に子供の頃は、ラーメン屋さんと言えば、近所の、地元の人がちょこっと来て、のんびり漫画雑誌を読んだりテレビを眺めながら、注文した料理が出てくるのを待っているような場所だった。
行列のできるラーメン屋さんを初めて自分の目で見て、実際に並んだのは、大学生になった頃だっただろうか。
同じ『ラーメン屋』くくりでも、
近所の、のんびり まったりしたラーメン屋さんとは明らかに異なる業種に見えた。
ミーハーだから、独りで、無理なく行ける範囲で何軒か食べに行ったことはある。
あるけれど、私は未だに行列のできるラーメン屋さんという文化に慣れることができない。
まず、列に並ぶ。黙って並ぶ。
開店前から並ぶこともある。割り込みはいけない。待ち合わせの人が遅れた時は二人で後ろに並ぶ。
列が進んで お店が近づいてきた時点で、ちょっとドキドキする。
食券はいつ買うのか。
食券はいつ出すのか。
お財布に千円札があるのを確認。
食券を買う。渡す。
店の中の椅子に座ってさらに待つ。
待ちながらカウンターで既にラーメンを食べている人達をぼんやり眺める。
食べ終わった順に前に詰める。
トイレに行きたいけど、いつ行っていいのだろうか。
カウンターに案内される。
水はセルフらしい。
座る。トッピングを聞かれる。
分からないので黙って首を振る。
周りに合わせてスムーズな注文を心掛ける。
いよいよラーメンが供される。
食べる。
後ろで待っている人の視線が気になる。
隣の人が席を立つ。
オバちゃんが入れ替わりで座る。
トッピングのところでモタモタしている。
麺少なめは食券の時点で。
麺柔らかめも出来ません。
この人、何も知らないんだなぁ。
待ってる時に観察もしてなかったんだ。
店員さんが呆れている。
そう思いながらも箸を持つ手は止めることなく、ラーメンを食べる行為を続ける。
早く食べ終わらなくては。
汗が吹き出る。
お腹いっぱい、食べ終わる。
荷物をまとめてそそくさと席を立つ。
店を出て一息。
何かスポーツをおこなった後みたい。
これで美味しかったら満足だけど、ちょっと虚しさが残る。
食べすぎて苦しかったり、不味かったりすると、なんだかなーと悲しい気持ちになる。
虚しさ、悲しさを感じるのはなんでだろう。
一連の流れを思い返して、急に怖くなる。
この流れの中で一番怖いのは、
オバちゃんを見る時の自分の視線だ。
いつの間にかオバちゃんに対して、ブログなり、店内の雰囲気を読むことを強要している。
店員さんが呆れ顔をしているのを、さもありなんと思ってしまっている。
黙々と列に並んで 行儀よく注文をし、黙々とラーメンを食べること、
リズムを崩してはいけないと思い込んでいて、
それを周りの客にも強要していること。
自分がベルトコンベアに乗った状態でラーメンを食べているイメージ。一つでも手違いがあればベルトコンベアから落っこちてしまうのだ。
落ちないように一生懸命と食べる。
でも、落ちなかったとしても、ベルトコンベアのは何処に向かっているのだろう。
怖い。