未来クジ
宝くじ販売員。
(年末って感じね~。
やっぱりここが、
一番の書き入れ時ね。
朝から並んでまで買わなくても、
1時間ズラしてくれれば、
待たずに買えるのに…。
あら。
また、お客さんだわ)
「いらっしゃいませ~」
「………」
「………」
「当たるのどれ?」
「はい?」
「どれが当たる?」
「え~と、
こちら宝くじ、ナンバーズ、スクラッチ、
ロト、着せかえクーちゃん等ございますが
どちらがよろしいですか?」
「だから、当たるのくれ」
「お客様、すいません。
こちらはクジでして、
どれが当たるかは私の方でも、
わからないんです」
「………」
「………」
「じゃあ、おっきいのくれ」
「おっきいの?」
「おっきいのだよ、おっきいの!
今、大きいのやってんだろ!
それを3000円!」
「大きいの…
あ~、年末ジャンボですね。
では、連番とバラ、
どちらがよろしいですか?」
「どっちが当たる?」
「私の方ではわかりかねますけど、
連番なら上手くいけば、
1等7億円に前後賞で1億5千万。
合計10億円の当選金額になります。
そんな大きな額をお望みでない方は、
バラの方を購入されますね」
「1等の確率は?」
「だいたい2000万分の1ですかね…」
「そんなの当たるわけないだろ!
当たるやつくれ!」
「でしたら、
年末ジャンボミニはいかがですか?」
「それの確率は?」
「250万分の1ぐらいかと…」
「当たるわけないじゃないか!
当たるのくれよ!」
プチッ
「お客様……
ちょっといいですか。
他のお客様に漏れるといけませんので…
外部スピーカー…
切らせて頂きました。
もう少し近くまで来てもらっても、
よろしいですか?」
「ああ…」
「ありがとうございます。
実は…
ここだけの話…
高確率の宝くじ…ございます」
「じゃあ、それをくれよ!」
「ただし…
ちょっとお値段の方が、
少々お高くてですね…」
「い、いくらだよ?」
「1枚100万円です」
「はあ!?
100万円!!
そんなの買えるわけないだろ!」
「ですがこちら…なんと!
確率20%!
5分の1の確率で当たります」
「5分の1~!!
じゃあ、500万あったら、
確実に当てられるじゃねえか!」
「残念ながらこちらのクジ…
お一人様一枚となっておりまして」
「でも…5分の1?
100万?
当たったら…いくらだ?」
「一部の富裕層向けのクジですので、
その売上に比例しますけど、
前回の当選金額は12億円です」
「じゅ、じゅ、じゅうにおくえん!!
5分の1で~!!」
「どうなさいますか?」
「ちょっと…いま…手持ちが…」
「カードでも大丈夫ですよ」
「本当…か?」
「はい」
「あ~あ~ああ~…
………
ちょっと待て!
それ、どんなクジだ?
まだ説明受けてないぞ」
「これは失礼しました。
こちらのクジは、
ロトやナンバーズと同じ、
お客様が選択するものに、
なっております。
5つの項目がございますので、
そこからひとつお選びなるだけです。
用紙はこちらになります」
「どれどれ…
………
ん?
なになに…
………
これはなんだ!
この中からひとつ、選べというのか!?」
「はい」
「………
次の中からって、これ…」
「こちらは未来クジ。
未来で起きることを、
予想して頂きます。
その5つの項目のうち、
必ずひとつは当たります。
2つ以上当たる時もございますが、
その場合は先に叶った方が、
優先されますので、ご注意下さい」
「この5つのうち、
どれかが当たるというのか?
本当に……?
………
サーッカーワールドカップ日本優勝…?
………
日本初の外国人総理大臣…?
………
高速道路完全無料化…じゃと?」
「ええ…。
必ず当たるようになっております」
「………
………
AI作家ノーベル文学賞受賞…!
AI監督ワールドカップ2連覇…!
最後のふたつなんて、
終わりの始まりじゃないか…」
「さあ、どれになさいますか?」
「わしは……
………
ん~~~
………
これだ!
これに決めた!!」
「わかりました。
では抽選器に読み込ませますので、
少々お待ちください。
………
手続き終了です。
こちらが控えになります」
「ああ…どうも」
「お客様。
当たりますように」
「あ、ありがとう…」
「あっ、お客様。
いい忘れたことが」
「ん?!
いまさら、なんだ!」
「当選発表は、
50年後ですのでお気をつけ下さい」
「ウソじゃろ~!!」