嘘の話

私は嘘つきです。
 
「孫を迎えに行かないといけないから帰る」
「りこさん。
　今日は息子さんが、
　お孫ちゃんお迎えに行くから、
　大丈夫だって」
 
「そうなの？
　でも、やっぱり帰る
　戸締まりとか心配だし」
「それも息子さんしてくれたって。
　りこさん…今日泊まっていってぇ？」
 
「どうして？」
「家に帰っても誰も居ないから。
　今日は息子さんたち、
　長野の親戚のところに
　泊まりに行くんだって」
 
「なにそれ！私聞いてないよ」
「そうなの？
　でも息子さん長野への遠出は、
　りこさんには大変だろうからって、
　ここにお部屋取ってくれたんだよ」
 
「じゃあ、今日帰っても誰もいないの？」
「そう。
　ひとりでは何かと心配でしょ？
　心細いし」
 
「ええ」
「ここなら他にお泊りしてる方もいるし、
　何かあったら私も今日お泊まりで、
　そこの部屋にいるから」
 
「そう。
　でも私、お金持ってきてないよ」
「大丈夫。
　もう息子さんが支払ってくれたから。
　先払いで貰ったって」
 
「そう。
　１日だけ？」
 
「そう。
　今日だけ」
 
「じゃあ、お世話になろうかな」
「心配しないでゆっくり休んでね」
 
「そうするわ」
「じゃあ、りこさん。電気消すよ」
 
「はいはい」
「おやすみなさい」
 
「おやすみ。
　ありがとね」
 
私は今日も…
たくさん嘘をつきました。
 
そして明日も…。
 
 
宿泊施設にて。