時は短し恋せよ乙女
デート中の二人。
「この後どうしよっか?」
「買い物も思ったより早く、
お目当てのもの買えちゃったし。
どっか入ろう」
「それ賛成。
最近、暑くて外いるの辛い」
「映画はどう?
私、映画観たいかも」
「いいよ。
何か観たい作品ある?」
「特にこれってのはないけど、
何か面白そうなのがいい」
「まあ上映時間もあるから、
行ってから決めよっか」
「そうしよう」
シネコンのエントランス。
「休みだから結構いるね、人」
「でもほら、客席に余裕あるし、
どれでも観れそう」
「上映開始時間は?」
「う~ん。
早くて20分後」
「まあそれくらいの待ち時間なら、
いいよね?」
「そうだね…
ちょっと待って!
すぐ観れるのある!
【時は短し恋せよ乙女】
…この映画知ってる?」
「知らない。
って、え?!
これおかしくない?
料金100円って!」
「100円?!
千円じゃなくて?」
「いち、じゅう、ひゃく…円。
これにしよう!
100円なら失敗でも許せるし」
「面白くないってこと?
インディーズやマイナー作品だから、
安いんじゃなくて?」
「でもこれにしよう!」
「まあ、そうね。
良し悪しは観ればわかることだし。
やばっ!あと3分で始まる!」
二人はチケットを購入し、
上映スクリーンへ移動しシートに座る。
「恋愛ものでよかったの?」
「俺、わりと好きで観るよ」
「なら良かった。
男の人ってそういうの、
観ないイメージあったから」
「大丈夫。
あっ、始まる」
プーーーーーーー。
【時は短し恋せよ乙女】
校門を抜け、
校舎入り口までの並木道を、
ゆっくり歩いている女生徒。
「何とかギリギリ入学できたけど、
私、授業に付いて行けるかな~。
心配だな~」
「よっ!おっはよ!」
「イッタ!
誰?!
危ないでしょ!」
「よっ!美桜!」
「北人!
急に危ないじゃない。
それに幼馴染みだからって、
馴れ馴れしくしないでよね」
「別にいいじゃん。
いつも通りで」
「そっちはよくても、こっちは困るの」
「何でだよ?」
「何でって…」
「おはよう」
「あっ!亮くん…おはよう」
「相変わらず二人とも仲良いな」
「仲良くなんて…ないよ!
北人がちょっかいかけてくるから…」
「何?俺のせい?違うだろ。
お前だって急に俺に膝カックンとか、
してくるだろ」
「そんなことしてません!」
「しました!」
「いつですか?!
何時何分何秒、どこでですか~?
正確な場所を座標で教えて下さい」
「やっぱり仲良いじゃん」
「違うぞ、亮!」 「違います!」
三人の幼馴染みは、
今日からまた新たな学園生活を始める。
そして…
「美桜。僕と付き合わないか?」
「…亮くん…ごめんなさい」
(え?) (え?)
「美桜!俺と付き合ってくれ!」
「…北人…ごめん」
(ええ~?!) (うそっ?!)
「私…寛先輩のことが好きです。
私と…つ、付き合って下さい」
「俺でいいのか?」
「はい」
美桜は寛先輩の恋は始まった。
END
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監督 福本 雄二
照明により劇場内が明るくなる。
「え?!終わり?」
「まだ1分経ってないよね?」
「これ予告?」
「でもENDって出てたよ。
しかも最後に監督さんだけ、
しっかり、名前出てた」
「あの高速で流れて行った、
あの横棒ってスタッフロール?」
「全然、わからなかった。
ほぼ残像だったし」
「しかもあの終わり方、正解なの?
寛先輩が渋すぎだし…」
「何なんだ、
この豪華キャストの不思議映画」
「ちょっと何か情報ないの…
あった、フライヤー!」
「何て書いてある?」
「え~と…
世界最速…
恋愛映画だって!」
「時短の波がここまで…」
「これ!
3倍速上映あるって!」
「3倍速必要?!」
お疲れ様でした。