無邪気な計算
日曜日の午後。
買い物へ向かう男性。
(雪…積もったねえ…
用事さえなければ、
家に居たいんだけどなあ…)
キャッキャッキャ
(子どもは元気だねぇ…
大人は無理よ…
こんなに降られると、
雪かき疲労でコタツが友達だよ)
庭の前に…
モコモコの防寒具を着た女の子。
キラキラした目で、
日差しを浴びてキラキラ輝く、
雪を見つめている。
(自分もあんな頃…
あったんだよなあ…)
女の子は急に背を向け…
そのままゆっくり後ろに倒れる。
ボフッ!
「アハハハハ!」
雪上に女の子の型抜きができあがる。
その形にご満悦な女の子。
(わかる~
その形が面白いんだよね。
オレも道端の雪に、
よくダイブしたなあ…)
女の子は…
紐で繋がった毛糸の手袋で、
雪をニギニギし始める。
さらに…
ギュッギュッギュッギュゥゥ…。
雪玉を確認しようと手を開くと、
雪玉が手袋から離れない。
(毛糸のは、くっつくんだよ…
絡まっちゃうのな…
そうそう…経験ある~)
女の子はブンブン手を振るが、
なかなか取れない。
「アハハハハ!」
激しく手を振る女の子。
ブンブンブンブ~ン!
ズボッ!
「あっ、おちた」
女の子は、
雪玉の落ちた穴を覗き込む。
そして見つけた雪玉を、
そのままコロコロ転がしだした。
(雪玉投げて遊ぶのかと思ったら、
急に雪ダルマ作り?
やっぱり子どもって、
発想が自由だなあ…)
「ゴロゴロ~ゴロゴロ~♪
ミカンがメロン♪
ゴロゴロ~ゴロゴロ~♪
メロンがスイカ♪」
(何だ、その歌?
スイカゲームか?)
女の子は2つできた雪玉の…
ひとつを下から押し上げる。
(おお~力持ち~
上手に作るもんだな~
あれ?もう終わり?
どこ行くの?)
女の子は家に入ってしまった。
(気まぐれだな~
歌ってたら…
ゲームでもしたくなったのかな…)
すると女の子は、
手に色々持って戻ってきた。
(戻ってきた。
まだ途中だったのか…
飽きたのかと思ったよ…)
女の子は雪ダルマの頭に、
黄色いバケツを乗せた。
(それ筆洗バケツ!
懐かし~い!
それ、まだあるの?!)
次に雪ダルマの顔を作る。
そして最後に胸に…。
「出来た~!!
かわい~!!」
(あれ?
その胸のは何だ?
マフラー?
いや…ポケットかな?
しかも、それって…)
玄関から両親と思われる2人が、
勢いよく飛び出してくる。
「ミヨ~!!」
「ちょっと~!
ミヨちゃ~ん!」
「あっ!
パパ~!
ママ~!」
(どうした!?
どうした!?)
「ミヨちゃ~ん…
これ返してくれない?」
「え~雪ダルマさんの、
お顔がなくなっちゃう~」
「じゃあ、代わりに…これ」
女性はミカン2つと、
うまか棒を2本差し出した。
「いいよ~!」
女の子は…
ファンデーションとフェイスパウダー、
2本のリップを女性に渡す。
(やっぱり…
お母さんの化粧品だったのか…
ってことは…)
「ミヨ~!
パパとも交換して~!」
男性は板チョコを差し出した。
「いいよ~♪」
女の子は…
雪ダルマの胸に埋まっていたスマホを、
男性の板チョコと交換した。
(アハハ。
子どもは色んなものを、
遊び道具にするから、
ご両親も大変だあ…)
「よし!
じゃあ、記念写真撮ろうか!」
「うん!」
3人はスマホで、
雪ダルマを囲んで写真撮影。
「ミヨちゃん、寒いからママ行くね!」
「パパも!
あ~さむっ!」
「じゃあね~」
薄着の両親は、
慌てて家に戻っていった。
(その格好は寒いよ…
2人とも部屋着だったし…。
余程、慌てて出てきたんだな…)
雪ダルマの前で女の子は、
目…鼻…口を取り外す。
そして庭の石ころで顔を作った。
(?)
そして胸の板チョコも外すと、
また何かを胸に埋め込んだ。
(ん?
あれは何だ?)
すると再び男性が、
家から飛び出してきた。
「ミヨ~!
これと交換して~!」
男性の手にはポッキー。
「いいよ~♪」
女の子は雪ダルマの胸から…
テレビのリモコンを取り出し、
男性と交換した。
「パパも…もう少ししたら、
遊びに来るから、
もうちょっと待っててね」
「わかった~」
そう言って男性は、また家の中へ。
女の子は…
何もなくなった雪ダルマの胸に、
拾った木の板をはめ込んだ。
そして…
パクパクパクパク
雪の中で…
おやつを食べ始める。
(まさかこの子…
全て計算づくか!)