ふたごやこうめ

小説を色々書き散らかしています。処女作「いぬじにはゆるさない」は、大昔の実体験が元ネタ、半分フィクション/初の100%創作「だけど願いはかなわない」→メフィスト賞『印象に残った作品』/note創作大賞2023中間選考通過 などなど

ふたごやこうめ

小説を色々書き散らかしています。処女作「いぬじにはゆるさない」は、大昔の実体験が元ネタ、半分フィクション/初の100%創作「だけど願いはかなわない」→メフィスト賞『印象に残った作品』/note創作大賞2023中間選考通過 などなど

マガジン

  • 短編集『のどに骨、胸にとげ』

    どこから読んでも、『いや〜な話』の、詰め合わせ。 短編小説集。

  • 短編小説『親愛なる子殺しへ』一覧

    前・中・後編の短編小説です。実際にあったショッキングな事件が元になっています。繊細な方はご注意下さい。

  • あいかわ双子は恋が下手

    高校の入学初日、五十音順に並んだ教室の席。隠キャの合川秋生(あいかわ あきお)の高校生活は、帰国子女の双子の姉弟、相河朱里(あいかわ あかり)と相河旭(あいかわ あさひ)に挟まれる形でスタートした。 クスっと笑えてちょっぴりジーンとなれる、青春ラブコメディ!!

  • だけど願いはかなわない

    ※メフィスト賞『印象に残った作品』選出作品 この小説の登場人物達は、皆、それぞれの願いを抱きながらも嘘をついて生きています。 身分を偽って出会った相手を好きになってしまった「ハルキ君」。 どこかミステリアスな「スミちゃん」。 嘘つきな大人達の複雑な恋愛のお話…かと思いきや、物語は意外な方向に…。

  • 大濠公園シリーズ『ヤブサカ君はやぶさかではない』他

    福岡の大濠公園が舞台の、短編オムニバス小説集です。全てのお話がつながっています。

最近の記事

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【短編集】のどに骨、胸にとげ/さいしょのおはなし 「あの子」

 仕事帰り、思いがけず空いていたバスの中で手持ち無沙汰になり、スマホでニュースサイトの流し読みをしていると、出身高校のテニス部が今年も全国大会で優勝した事を知った。  地元を離れて、もうすぐ二十年。出身校どころか、自分の実家や両親がどうなっているのかも知らない。同級生の連絡先だって一つも知らないし、特に会いたいと思う人も居ない。  けれど時折、ただ一人、ふとした瞬間に思い出す女の子が居る。  いや、女の子と言っても、相手は私と同い年だ。だから、彼女も今では四十歳手前。私

    • 【短編集】のどに骨、胸にとげ/いつつめのおはなし 「同棲日記」 

      四月 一日  リョータと映画に行った帰り、一緒に住もうと言われた。  てっきりエイプリルフールだと思って笑って流していたら、本気なのにとスネられた。何で、よりにもよって、こんな大事な話を今日するんだろう。  まあ、リョータらしいけど。  うちの返事は、もちろんOK!!  ゆくゆくは結婚かな。なんて、気が早い?  でも、リョータの所はパパもママも優しそうな感じの人だし、二人居る妹ちゃん達は齢が離れててカワイイし、結婚ってなっても上手くいくと思うんだ。 四月 十四日  新生活が

      • 【短編集】のどに骨、胸にとげ/よっつめのおはなし 「モンスターハウス」

        「性別、知りたいんでしたっけ?」  まだ年若い担当医は、私のお腹にエコーを当てながら、まるでいたずらっ子のようにわざと焦らして言った。 「前から言ってるじゃないですか、早く知りたいって。女の子希望なんです。もちろん、長男のおかげで男の子の可愛さも充分知ってますから、男の子でも嬉しいですけど」  性別なんてどっちでもいい、元気に産まれてくれさえすれば。建前としては、そうだ。いや、違う、本音だって、男の子続きでも何でも、かけがえの無い我が子に変わりは無い。心の底から可愛いと

        • 【短編集】のどに骨、胸にとげ/みっつめのおはなし 「山口店長」 

           結婚二周年もまだ迎えていないのに、引っ越しはもう五回目になる。全国規模のチェーン店の、新店舗立ち上げ責任者という特殊な立場の人と結婚したため、転勤続きになる事は最初から覚悟していた。  律儀に毎回ついて行く必要も無いのだけれど、子どもが出来たら単身赴任一直線になるのだろうからと、せめて最初のうちは二人で一緒に居られる時間を大事にしようと決めたのだ。  そうは言っても、半年も待たずに次の土地に移るとなると、知り合いなんて出来る隙も無い。まともに会話をする相手は夫だけで、そ

        • 固定された記事

        【短編集】のどに骨、胸にとげ/さいしょのおはなし 「あの子」

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        • 短編集『のどに骨、胸にとげ』
          10本
        • 短編小説『親愛なる子殺しへ』一覧
          6本
        • あいかわ双子は恋が下手
          6本
        • だけど願いはかなわない
          28本
        • 大濠公園シリーズ『ヤブサカ君はやぶさかではない』他
          3本
        • 穴 ~FF内から失礼します!!~
          4本

        記事

          【短編集】のどに骨、胸にとげ/ふたつめのおはなし 「家族」

           時計の長い針が「12」を指すと、家の二階から目覚ましの音が聞こえて、そしてそれはすぐに消える。「1」になると、今度はお母さんが二階に向かって声をかける。それが「2」になって、「3」になって、お母さんの声がだんだん大きくなっても、空お兄ちゃんは全然起きて来ない。  だから、お兄ちゃんの部屋まで行って起こすのは、私の毎朝の仕事だ。 「お兄ちゃん、朝だよ。学校に遅刻しちゃうよ」  私がそう言いながらスリスリと布団に体を擦りつけると、お兄ちゃんは寝ぼけ眼で必死に、でも少し嬉し

          【短編集】のどに骨、胸にとげ/ふたつめのおはなし 「家族」

          『親愛なる子殺しへ』Twitter感想まとめ 2023

           私は普段Twitterでnoteを紹介しているので、そのままTwitterの方で感想をいただく事が多いです。  しかし、Twitterのリプライは次から次に流れて消えていくので、そちらでいただいた『親愛なる子殺しへ』への感想の一部をこちらに貼る形で残すと共に、皆様にもご紹介させていただきます。  本来ならいただいたもの全てをご紹介したいところですが、量的な問題もありますのでご了承下さい。  noteの読者様も、Twitterの読者様も、いつも本当にありがとうございます。  

          『親愛なる子殺しへ』Twitter感想まとめ 2023

          【短編集】のどに骨、胸にとげ/さいごのおはなし後編 「親愛なる子殺しへ③」

           いつから千里さんと話をしなくなったのだろう。  両親があの町に家を買ったのは、私が幼稚園に入るタイミングに合わせての事だったらしい。だから、私の記憶はほとんどあの家で始まっている。  幼稚園までは、徒歩ですぐ。坂を下る途中に馬淵家の前を通り、時々そこから千里さんとお母さんが出てくるタイミングと重なった。母親同士が話していくうちに、お互い同じ市の出身で年齢も近いと分かり親しくなっていき、私も千里さんと仲良く手を繋いで園まで歩いた。  幼稚園を卒園すると小学校は一気に遠く

          【短編集】のどに骨、胸にとげ/さいごのおはなし後編 「親愛なる子殺しへ③」

          【短編集】のどに骨、胸にとげ/さいごのおはなし中編 「親愛なる子殺しへ②」

           『世間』という曖昧な定義の界隈で、数多くの母親に一方的に押される、『母親失格』の烙印。  その烙印を押された者達の中でも、一番の頂点に君臨すると言うべきなのか、それとも最底辺に属すると言うべきなのか。とにかく、とりわけ究極の存在である、子殺しの母へ。  私は知りたい。あなたと私、何が違って、どこまで同じなのか。  だから、貴方について考え続ける事を、どうか許して下さい。  それが私の贖罪になると、思わないわけでは無いけれど。 ・・・・・  自分のスマホから通話の

          【短編集】のどに骨、胸にとげ/さいごのおはなし中編 「親愛なる子殺しへ②」

          【短編集】のどに骨、胸にとげ/さいごのおはなし前編 「親愛なる子殺しへ①」

           第二駐車場から保育園まで、大人の足なら片道四分。幼児連れの場合でも、順調にいけば十分足らず。  それでは、順調にいかなければどのくらい時間がかかるのか。その答えは、むしろ私が教えて欲しいところだ。  園庭に隣接した第一駐車場を使用していいのは、ベビークラスと一歳児クラスだけ。それ以外の保護者は、園から離れた第二駐車場を利用する事になっている。田舎出身の私は、この街の駐車事情に未だ馴染めない。  駐車場を出て小さな交差点を曲がると、保育園までは住宅街の細い一本道が続く。

          【短編集】のどに骨、胸にとげ/さいごのおはなし前編 「親愛なる子殺しへ①」

          あいかわ双子は恋が下手・夏 後編

           見た目が良いというのは、生まれながらに授けられたとんでもないチート能力だろう。  金持ちの奥さんは美人と相場が決まっているし、男の場合でも顔に自信がある奴とそうで無い奴とでは人生の伸びしろは天と地の差だ。アメリカの裁判では、被告人の見た目の良し悪しが陪審員の心象を大きく左右するとすら言われているらしい。  貧乳美少女の相河朱里は、俺が今までの人生で出会った三次元の女の子の中で、頭一つ抜けているどころか天井に突き刺さるレベルで整った顔立ちをしている。  一山いくらのアイ

          あいかわ双子は恋が下手・夏 後編

          あいかわ双子は恋が下手・夏 中編

           俺はその日、名も知らないお姉さんのおっぱいを見ていた。  長年のコンプレックスであるニキビ治療をするため近所のジジイがやっている皮膚科の門を叩きかけた俺は、どうせ通学用の定期があるのだからと思い直し、駅二つ先にある評判の良いスキンクリニックに通い始めた。  もうすぐ夏休みというある土曜日、受診を終えて帰りの電車に乗り込むとちらほらと空席はあったが、俺はどうせ二駅だからと自分に言い訳をしながらドア付近に立った。どの席を選択しても、隣が異性になる事が避けられそうになかったか

          あいかわ双子は恋が下手・夏 中編

          あいかわ双子は恋が下手・夏 前編

          このお話はこちらの続編です↓  チィチィーと、小さく可愛らしいニイニイ蝉の鳴き声には、我慢が出来た。  ジージジーとやかましいアブラ蝉の鳴き声に、思わず意識が逸れる。  そして、チュイーン・ギリギリギリギリ…という聞き慣れない機械音を放つ虫の音の登場に、クラス委員の鈴木がボソリと呟いた。 「お前っ…本当に虫なのかよ…。」  その言葉に、鈴木の両側で座禅を組んでいた女子二人が吹き出し、釣られて俺も吹き出す。しまった。  そう思ったものの時既に遅く、袈裟姿の山口先輩

          あいかわ双子は恋が下手・夏 前編

          あいかわ双子は恋が下手 後編

           相河旭は興奮気味らしく、その口調は少しずつ早くなっていく。 「移民って言っても、メインはEuropean。国民の九十五%以上がwhiteの国だ。Asianはあくまでマイノリティ。黄色い肌、ひ弱な骨格、平べったい顔、たどたどしい英語、それら全てが異質な存在なんだ。」  それを聞いている俺の背筋は、無意識のうちに真っ直ぐに伸びていた。これから続く話は、どう考えてもキラキラとした海外生活の話ではない。 「九歳で日本を離れて、しかもメルボルンには日本人学校だってあるのに地元の

          あいかわ双子は恋が下手 後編

          あいかわ双子は恋が下手 中編

           小学生までの俺は、そこそこ人生上手くいっていたと思う。  成績が良かったおかげで勉強熱心なタイプの男子達とつるんでいたし、教師からの評判も上々。女子は少し苦手だったけれど班やグループで行動する際に普通に口を利くくらいの事は出来ていた。半不登校になったのは、中学からだ。  親しかった友達は軒並み私立中に進学してしまい、新しい友人も出来ずにクラスから浮き始めた。そしてタイミングの悪い事に、近視が進んで眼鏡が必要になったのとほぼ同時、大量のニキビに悩まされるようになったのだ。

          あいかわ双子は恋が下手 中編

          あいかわ双子は恋が下手 前編

           一年一組、出席番号。  一番、相河朱里(あいかわ・あかり)。  二番、合川秋生(あいかわ・あきお)。  三番、相河旭(あいかわ・あさひ)。  この、日本の教育現場において最もポピュラーであろう五十音順というルールによって、双子の姉弟に挟まれる形になり、「双子じゃ無い方のあいかわ」と呼ばれる高校生活が始まったのは、約三ヶ月前の事。  お笑いコンビの目立たない方を「じゃ無い方芸人」なんて言って虚仮にする事から察して欲しいが、相河達の方は双子の中でも珍しい男女の双子とい

          あいかわ双子は恋が下手 前編

          かなめ君はろくでもない

          最初はただ、このちょっと面白そうな男(ひと)と、少しだけお喋りを楽しもう、少しだけからかってやろうと、その程度の気持ちだった。 二年付き合った彼氏の束縛から逃げるように別れて三ヶ月、やっと上向きになってきた気持ちをもう少し盛り上げようと、きっかけを探していたそのタイミングでたまたま出会っただけだったのだ。 けれど打てば響くような小気味の良い会話と、そこから滲み出る見た目に反した博識さ、そしてポーカーフェイスが崩れた瞬間に見せる可愛い笑顔に、もう少しだけ会ってみよう、もう少

          かなめ君はろくでもない