福本修

The Long Week-End・Experiences in Groups・Seminarsとその周辺。

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最近の記事

メラニー・クラインの大人の分析記録

2024年度4月開講の小寺臨床講読セミナーでは、精神分析過程を主題として、二つの著作を軸に読み進める予定である。その一つは、2021年にジェイン・ミルトンからメラニー・クライン・アーカイヴの管理人を引き継いだクリスチーヌ・イングリッシュによる、『メラニー・クラインの大人の分析記録』(2023)である。 ウェルカム図書館は、1984年にメラニー・クライン・トラストから、それまでハナ・シーガルの自宅に保管されていたクラインの刊行されていない草稿・資料を寄付され、以来その何万ペー

    • 岐路にある精神分析 国際的視点2

      1の最後で言及したサピソチン(Sapisochin, G. (2019) Enactment: Listening to psychic gestures. International Journal of Psychoanalysis 100:877-897)は、「心的ジェスチャアpsychic gesture」という呼称を用いつつ、「自由連想と平等に漂う注意の対によって接近することができない無意識の水準」があり、そうした無意識は、言葉や思考ではなく、「実演/エナクトメント

      • 岐路にある精神分析 国際的視点1

        3年1クールの精神分析臨床セミナー「基礎理論を学ぶ」https://kodomo-psychoanalysis-sg.com/seminar/y2023/1495/ も、2月11日が最終回となる。そこでは、「終結」とともに、21世紀の精神分析を主題としている。その由来は、Alessandra Lemma著Introduction to the Practice of Psychoanalytic Psychotherapyの第1章、「すばらしい新世界:21世紀にBrave

        • 『W・R・ビオンの三論文』

          後期ビオンの始まり? 本書は、“Three Papers of W.R. Bion” Edited by Chris Mawson, Routledge, 2018.の全訳である。タイトル通りビオンの三つの講演記録を収録し、それぞれに編者のクリス・モーソン(1953-2020)がかなり長めの、これまで知られていなかった重要な資料も交えて解説を付けている。 ウェブ上の「内容説明」では、あとがきあるいは解題の代わりに書いた補遺のうち、負の能力(ネガティブ・ケイパビリティ)に関す

          大論争(1941-45)にて:クラインの意見表明

          Klein, M. (1944). The Emotional Life and Ego-Development of the Infant with Special Reference to the Depressive Position. In The Freud-Klein Controversies 1941-1945, p.566-599, Routledge. Abram, J. & Hinshelwood, R.D. (2018). Early psychic

          大論争(1941-45)にて:クラインの意見表明

          ハンス少年からハーバート・グラーフへフロイト「或る5歳男児の恐怖症分析」

          フロイト「ある 5 才男児の恐怖症分析(ハンス少年)」“Analysis of a Phobia in a Five-Year-Old Boy (‘Little Hans’)”(1909b) (SE 10, 1-147; 全 10、1-176) Midgley, N. (2006). Re-Reading “Little Hans”: Freud's Case Study and the Question of Competing Paradigms in Psychoana

          ハンス少年からハーバート・グラーフへフロイト「或る5歳男児の恐怖症分析」

          フロイト「詩人と空想すること」:神経症論から見た創作

          フロイト「詩人と空想すること」(SEⅨ,141-154;全9、227-240)“Creative Writers and Day-Dreaming”(1907e)  Blum, P. H. (1995). The Clinical Value of Daydreams and a Note on Their Role in Character Analysis. In Ethel Spector Person et al. (Ed.): On Freud’s “Creativ

          フロイト「詩人と空想すること」:神経症論から見た創作

          精神分析と芸術――フロイトの『グラディーヴァ』論周辺とその後の展開

          フロイト「イエンゼンの小説『グラディーヴァ』にみられる妄想と夢」(SE Ⅸ, 1-95; 全9、1-107)Delusions and Dreams in Jensen’s “Gradiva”(1907a) Makari, G. (2008) Vienna. In Revolution in Mind. The Creation of Psychoanalysis. Harper, Ch4, New York.ジョージ・マカーリ『心の革命 精神分析の創造』第四章 ウィーン、p

          精神分析と芸術――フロイトの『グラディーヴァ』論周辺とその後の展開

          フロイト『性理論のための三篇』とMakari, G. (2008) The Unhappy Marriage of Psyche and Eros.ほか

          フロイト『性理論のための三篇』(SE Ⅶ, 123-243; 全6、163‐310) Van Haute, P. and Westerink, H. (2016). Sexuality and its Object in Freud's 1905 Edition of Three Essays on the Theory of Sexuality. Int. J. Psycho-Anal., 97(3):563-589. Blass, R.B. (2016). Underst

          フロイト『性理論のための三篇』とMakari, G. (2008) The Unhappy Marriage of Psyche and Eros.ほか

          「或るヒステリー患者の分析の断片」(ドーラ)を巡って

          フロイト「或るヒステリー患者の分析の断片」(ドーラ)(SE Ⅶ, 1-122; 全6、1-160) Balsam, R.H. (2015). Eyes, Ears, Lips, Fingertips, Secrets: Dora, Psychoanalysis, and the Body. Psychoanal. Rev., 102(1):33-58. Civitarese, G. (2016). Dora: The Postscripts. The Italian Psyc

          「或るヒステリー患者の分析の断片」(ドーラ)を巡って

          クライン:遊び理解の深化と「役」の形成

          メラニー・クライン「子どもの遊びにおける人格化」(1929)、著1第 10 章、239-251.Klein, M. (1929) Personification in the play of children, Int. J. Psycho-Anal. 10: 193-204. ミーラ・リカーマン『新釈 メラニー・クライン』第 6 章 「誰がそれを疑えようか?」─早期対象愛,心的防衛と解離のプロセス、岩崎学術出版社、2014。Likierman, M. (2001). 6.

          クライン:遊び理解の深化と「役」の形成

          ベルリンでの最初の患者グレーテと「フロイトからの離脱」

          メラニー・クライン「エディプス葛藤の早期段階」(1928)、著1第9章、225-238.Klein, M. (1928). Early Stages of the Oedipus Conflict. Int. J. Psycho-Anal., 9: 167-180. ミーラ・リカーマン『新釈 メラニー・クライン』第 5 章 「完全に現実離れしたイマーゴ」─フロイトからの離脱、岩崎学術出版社、2014。Likierman, M. (2001). 5. 'Figures whol

          ベルリンでの最初の患者グレーテと「フロイトからの離脱」

          フロイト『夢解釈』の世界

          フロイト『夢解釈』(SE Ⅴ, 1-621; 全5、全巻)Ⅱ Anzieu, D. (1986). Freud’s theory of the psychical apparatus in The Interpretation of Dreams and his further discoveries. Part 3: a synchronic account of the topography. In Freud’s Self-analysis, pp.487-513, H

          フロイト『夢解釈』の世界

          アナ・フロイトとの最初の論争

          メラニー・クライン「児童分析に関するシンポジウム」(1927)、著1第7章、165-204.Klein, M. (1927). Symposium on Child-Analysis. Int. J. Psycho-Anal., 8: 339-370. Sherwin-White, S. (2017). 5 The negative transference and young children in analysis: new dimensions. In Melanie

          アナ・フロイトとの最初の論争

          イルマの注射の夢(フロイト『夢解釈』第二章)とその註解論文

          フロイト『夢解釈』「第二章 夢解釈の方法」(SE Ⅳ-Ⅴ, 96-121; 全4、131-164) Wax, M.L. (1996). Who are the Irmas and What are the Narratives?. J. Am. Acad. Psychoanal. Dyn. Psychiatr., 24(2):293-320 Bonomi, C. (2013). Withstanding Trauma: The Significance of Emma Eck

          イルマの注射の夢(フロイト『夢解釈』第二章)とその註解論文

          クライン「幼児分析の心理学的原理」(1926)から「児童分析の心理学的基礎」(1932)へ+2章

          メラニー・クライン「幼児分析の心理学的原理」(1927)、著1第 6 章、151-163.Klein, M. (1927). The Psychological Principles of Infant Analysis. Int. J. Psycho-Anal.,8:25-37. ミーラ・リカーマン『新釈 メラニー・クライン』第 4 章 「ただの奔放さにあらず」─初めてやってきた子どもの患者たち、岩崎学術出版社、2014。Likierman, M. (2001). 4. '

          クライン「幼児分析の心理学的原理」(1926)から「児童分析の心理学的基礎」(1932)へ+2章