らくがきヱリ子さん~『給餌』冒頭
物心ついたときから、瞼を閉じると、わたしの目の裏はいつも青かった。漆黒の水に点々と青の絵具を落とし、やがて混じり合ってひっそりと青を裏に隠しているような、そんな青さだ。夜、狭い部屋に置いた二段ベッドで、わたしと兄は寝入りざまに目の裏に見えている風景についてよく話をした。兄はとても「寡黙な子」ということになっていて、父と母の前で声を発することはほとんど無かったけれど、わたしと二人きりになると左唇の端に泡を溜め、時にはそこから涎を垂らしながらよく喋った。兄妹の目の裏にはいつも、見