「とりあえず覚えておこう」が怖い。~TV番組「ワルイコあつまれ」から~
#20240831-456
2024年8月31日(土)夏休み43日目
「ママママ、検算ってなんだっけ? なにに足すんだっけ?」
学習塾の宿題に取り組んでいたノコ(娘小5)が叫んだ。
私は洗濯物を畳む手を止めて、振り返る。
「どんな問題?」
「だーかーらー、検算だってば! なにに足せばいい?」
「問題を読んでください」
「面倒くさいから、ヤダ!」
力が抜ける。ずっこける。
人にものを尋ねておいて、平気で「ヤダ」と返すこのノコの感覚がわからない。
ここで立つのがいけないと思いつつも、どうしても、ことに勉強だと放置できない。ノコの場合、「それならいい」と高確率で投げ出してしまう。
タオルを畳む手を止めて立ち、ノコのそばに行く。
問題を見れば、割り算の式を解いた上で検算もしろとある。
割る数と商をかけて、あまりを足した数が割られる数になっていれば正解だ。
紙に「7÷3」と書き、ノコに解くよう促す。
「ママはさ、なににどれを足せばいいかいえばいいから」
それでは、検算のやり方を忘れた場合、お手上げになってしまう。
「簡単な式を作って考えれば、どうやればいいかわかるからやってみようよ」
「ヤダし。やりたくないし」
計算が得意なノコならすぐ解ける問題なのにやりたがらない。毎度のこととはいえ、これが人に教えを請う態度なのだろうか。
「ほら、解いてみて。ノコさんなら解けるでしょ」
普段はしない握り拳のままつかむような鉛筆の持ち方で、荒々しくノコは問題を解く。
「2あまり1だけど。それがなに」
「検算って、つまりは答えが合っているか、確かめる計算のことだよね」
私はノコが書いた「7÷3=2あまり1」の数字を指差しながら言葉を続ける。
「割る数と商とあまりを使って、割られる数になっていれば、正解」
「あ!」
数字を見ていたノコがするすると鉛筆を走らせた。
「じゃあ、問題のほうもできるよね」
昨夜、むーくん(夫)が録画していた教育バラエティー番組を家族3人で見た。
予備校講師の林修先生が子どもたちの質問に答えていた。
学年があがるにつれて勉強がわからなくなるのはどうしてか。
林先生がホワイトボードに四角い積み木が積まれていく絵を描く。
つまり、ひとつひとつ理解した上で積んでいかなければならないのに、理解せず「とりあえず覚える」ことでごまかし続けると、土台がしっかりとしていないためぐらぐらな状態になっていく。ぐらぐらなところへさらに積めば、それはいつか崩れる。
それが「急にわからなくなる」状態だと林先生はいう。
ノコでいえば、割り算の流れを理解せず、検算の式のかたちだけを「とりあえず覚えておこう」で済ませている。だから、検算の式を忘れてしまえば、もうお手上げとなる。
「ノコさん、昨日パパがTVで見せてくれたのは、まさにこういうことだよ。意味もわからず、検算の式だけを覚えておくと、式を忘れたら、もうどうしようもなくなっちゃうでしょ」
ノコがへらりと笑う。
「ママが意味もなく、7÷3って書いたわけじゃない。理由があるんだから。教えてほしいなら、ママがいうことをしてちょうだい」
「へーい」
なんとも気の抜けた返事だ。
まさに喉もと過ぎればなんとやら。
宿題も終わってしまえば、こっちのもんというところか。