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技術指導から、感性支援へ。幼稚園絵画指導の大改革記⑩ -日常に続く研修 年少クラス編-
藤枝順心高等学校附属幼稚園での、2年間にわたる絵画指導大改革。
下記記事から、数話にわたって書いています。
藤枝順心高等学校附属幼稚園は
年幼〜年長までの4学年、全15クラス380名のとても大きな幼稚園です。
今回のプロジェクトでは、活動作りや展覧会づくりのサポートを主に
担任の先生方、副園長、主任教諭の合計17名を対象に
研修や、報告↔︎フィードバックというかたちで関わりました。
フェーズ1:2022年8月〜2023年6月 ブロック研修に向けて
フェーズ2:2023年10月〜2024年2月 作品展に向けて
フェーズ3:2024年5月〜2024年9月 持続的な指導に向けて
大きく3つの目的に向かって、歩んできた2年間。
いよいよ最後の研修です!
フェーズ3-6:/年少クラス研修への思い
先生たちが日常の中で
持続的にこどもたちの表現と健やかに向き合えるようにと
構築してきた研修も、いよいよ今回で最後。
年長、年中に続き、年少クラスの研修です。
年少(3−4歳)の子どもたちの絵画表現は
私の経験上、一番変化に富んでいると感じています。
紙にクレヨンをこすりつける感触
腕の動きに伴って残る、描画材の線
どんどん色が変化する、えのぐの混ざり…
プロセスを五感で味わうあそびから
〇〇をつくる、という目標設定や
〇〇は△△なんだ、という見立て
そっくりに描きたい、という写実性へのあこがれ。
だんだんと「完成」を意識する制作へと、移り変わる時期です。
これまで、こどもたちの自由な表現を見守ってきた先生方も
そんなこどもたちの変化を感じていたようです。
【こどもたちのあそび的表現を、どう見守ったらよいのか】
というのが
見守るおとなの勘所が、最も問われる部分かと思います。
また、こどもの表現に変化がみられた時
おとなはどう対応していったらいいのか?
というのもまた、バランスをとるのが難しいポイント。
これらの問いに、対する私の答えは
どんな表現でも
「おとなも一緒に楽しめる感性をもつこと」。
今回の研修では、その二つの表現姿勢を見守る
おとなの感性づくりをテーマにすることにしました。
フェーズ3-7:「こどもの作品を味わう、おとなの感性づくり」年少クラス対象の研修
これまでの研修と同様に
当日は午前中に、先生が行う絵画指導を見学予定、、、
だったのですが
なんと電車の遅延により、授業を見させていただくことは叶いませんでした。悲しい。
せっかく準備してきてくださった先生方、ごめんなさい。
園に到着後、副園長先生が記録していた
動画や写真を見せていただきました。
(テクノロジー万歳)
この日の絵画指導は、年少クラスを対象にしたえのぐあそび。
白いえのぐをキーに、おおきな白い紙や黒い紙の上で
他のえのぐとの混色を楽しむもので
この授業は、今年度から担任をもつ先生が
悩みに悩んで、たどり着いたものだそう。
授業後、直接担任の先生にお話を伺うと
とても深く反省されていましたが
私から見れば、このダイナミックな活動を
よく実施した!と◎をあげたい時間でした。
こどもたちに委ねる自由度も
先生が一生懸命模索していたのが写真から伝わってきたし
このまま続けていけば、きっと先生の勘所がついて
肩の力を抜いて、いい授業ができるだろうなと感じました。
自分の授業と真剣に向き合うこの先生に
ベテランの先生方がかける声かけもまた
これまでの変遷に、想いを馳せるものでした。
そして、いよいよ最後の研修がスタート!
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![](https://assets.st-note.com/img/1737692865-huBH0XyCjbkPKUYOv6WErtMo.png?width=1200)
先述した、年少期によく見られる
こどもたちの表現の変化を取り上げながら
そこに寄り添う際の、おとなの不安を挙げてみます。
この不安は、これまで先生方から伺ってきたものであり
私自身も、場を作るうえで自問自答してきたものです。
その不安に対する有効なアドバイスとして
私が言葉にしたのは
成長の「表現」として受け止める
ということ。
教育現場では、ついついこどもたちに体得してほしい技術や
達成してほしい目標に目が行きがちです。
でも、幼児期の美術表現、とくに自由表現時間においては
それらを一回おいておいて
まず目の前のこどもたちの表現の発露から
成長の現れを感じてみよう、という提案をしました。
その際に大切になってくるのが
こどもたちの作品を、心から味わうことができる
おとなの感性です。
具体的には、あそびの痕跡のような抽象画にも
美しさを感じるような感性をもっていてほしい。
そうすれば、こどもたちの表現を
自然なかたちで受け止め、声をかけられるからです。
そこでまず先生方と行ったのが、抽象作品の鑑賞。
抽象画を見て、感じたことをメモし
最後に意見交換を行います。
鑑賞したのは下記5作品。
![](https://assets.st-note.com/img/1737693497-8vF5BykGEugrdihNceXKTVM1.png?width=1200)
美術史上、高い評価を受けるものから
ペンキの剥がれの写真まで
様々な抽象的な美しさを鑑賞したところがミソ。
先生方からは、絵の中の細かい部分や、全体的な印象まで
とてもよく見ているな!という意見を
たくさん伺うことができました。
続いて、今度は抽象作品を
デカルコマニーという絵画表現技法を使い
先生方ご自身が制作します。
そして、できあがった作品を
互いに鑑賞し
感じたことを作品の横においたメモに残していく
という活動をしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1737693594-TFXJx6BsePSn5Mbp12lU90rO.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1737693607-Q6pRwCiox1Tm5UdnyOEHSkBI.jpg?width=1200)
作り方に想いを馳せる人
色や形を何かに見立てる人
絵全体から、ネガティブ/ポジティブな印象を受ける人
好き、怖い、おいしそう、悲しい、などなど
さまざまな意見が、メモの上に残されていきます。
デカルコマニーは、偶然性を用いた制作技法なので
作者の思う通りの作品にはならないのですが
作者の意図、鑑賞者の受け取ったもの
それらが異なっていても、お互いに楽しめる!
ということを、体験を通して先生にお伝えました。
この体験をもとに、思考を深める振り返りに入ります。
![](https://assets.st-note.com/img/1737693951-FMdBs1keHXxvPrEy3J6tVOCh.png?width=1200)
こどもに委ねる時間、といっても
その時間をかたちづくるのは、やっぱり先生の思考や態度。
だからこそ、先生がこどもの遊びも「表現」として受け止め
作品として扱う態度は
こどもにとってその時間を
「絵画指導」にするために、とても大切です。
同じ画材、同じ技法でも
異なる作品が生まれ
作者と鑑賞者の間でも
異なる印象が生まれる。
この違いを、ともに楽しめる関係を
こども間でも、こどもとおとな間でも
構築してほしいと思います。
それはこどもたちにとって
とても嬉しいおとなの褒め姿になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1737694289-Gfyn0bDITZgHEPtUz124Q5sB.png?width=1200)
最後に、ここまで2年間の先生方との時間を振り返ります。
何度もお伝えしてきたことですが
UMUMが順心附属幼稚園に関わる以前の指導と
関わったあとの新しい指導
どちらがいい、どちらが悪い、ということではありません。
技術重視の丁寧な指導で見えた課題を
自由重視の委ねた指導で補完したり。
その逆もまた然りで
委ねすぎて課題が見えた時には
先生方主体で導く、修練のような関わりも
必要になるかもしれません。
教育は「〇〇が正解!」となった時点で
こぼれ落ちていくものや
弱者とされるこどもたちが生まれてします。
目の前のこどもたちを常によく見てヒントをもらい
その時点の最適解を、模索し続ける。
そんな柔軟な指導を、先生方に続けて行ってほしいなとお伝えしました。
さいごに
ここで、研修はおしまい。
2年間の関わりは本当に濃厚で
いい終わりの言葉をいくら考えても
言葉数が多くなるばかりで、終わらない!笑
後ろ髪引かれながら、静岡を後にしました。
今回のプロジェクトは、UMUMにとって間違いなく
とても貴重な経験になりました。
こどもたちの表現と関わってきた、これまでの時間を振り返り
伝えたいことの骨格を抽出した上で
園での絵画指導のあり方、先生方の思いを可能な限り受け止めて
言葉を肉付けしていく。
先生たちのこれまでの努力や迷いを否定せず
正解をぽんと渡さず
「わからないことを模索し続ける」おもしろさを
どうやって伝えられるだろう?
すごく難しく、同時にすごく楽しいクリエイションでした。
第一フェーズのブロック研修本番で
目の前に広がっていた光景に
ものすごい挑戦を始めてしまったという
わくわくとプレッシャーは忘れられません。
改めて
UMUMを見つけてくださった副園長
全てのバランスを調整しながら、UMUMを暖かく迎え続けてくれた主任の先生
そして、私を頼って、わからなさに挑戦してくれた先生方に
大きな大きな感謝を伝えたいと思います。
本当にありがとうございました。
先生たちの、まっすぐにこどもたちを見つめるまなざしを
私も忘れない様にしたいと思います!
そしてそして
10話にわたる大改革記を読んでくださったみなさま
長きにわたりお付き合いくださり
本当にありがとうございました!!!
<おしまい>
UMUMでは本プロジェクトのような、自由表現を園の活動に取り入れたい幼稚園/保育園からのご相談をお待ちしています。
HPやインスタグラムの活動も参考に、お気軽にお声かけいただけると嬉しいです。
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