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技術指導から、感性支援へ。幼稚園絵画指導の大改革記④ -ブロック研修を終えた、先生方の声-

藤枝順心高等学校附属幼稚園での、2年間にわたる絵画指導大改革。
下記記事から、数話にわたって書いています。

藤枝順心高等学校附属幼稚園は
年幼〜年長までの4学年、全15クラス380人のとても大きな幼稚園です。
今回のプロジェクトでは、授業作りや展覧会づくりのサポートを主に
担任の先生方、副園長、主任教諭の合計17名を対象に
研修や、報告↔︎フィードバックというかたちで関わりました。

2年間の変遷は、大きく3つの目的に分けることができます。
フェーズ1:2022年8月〜2023年6月 ブロック研修に向けて
フェーズ2:2023年10月〜2024年2月 作品展に向けて
フェーズ3:2024年5月〜2024年9月 持続的な指導に向けて

今回はフェーズ1、ファイナル!
ブロック研修を終えた先生方の、振り返りを綴ります。
このプロジェクトにおいて、最も先生の内的変化が大きかった時期の
とても重要な振り返りのため
丁寧に記述していきたいと思います。


フェーズ1-5:ブロック研修を振り返る

こどもたちに、自由に表現してほしい!
絵画や製作を楽しんでほしい!
という思いから
試行錯誤を重ね、新しい絵画指導を作り
2023年6月のブロック研修にて、それをお披露目をした
藤枝順心高等学校附属幼稚園の先生方。

15クラスどの授業においても、こどもたちは健やかに表現を楽しみ
それを見守る先生の姿は、とても凛としていました。

2023年1月に、絵画指導の内容を見直すことを決めてから
ここまでの半年間、先生方はどんな思いだったのか。
研修後のアンケートでいただいた、先生方の声をご紹介します。
(今、久しぶりに読んでもドキドキする!笑)

<もともと、美術やアートについてどんな印象をお持ちでしたか?>

-作るのも、見るのも好き 20%
-作るのは苦手だけど、見るのは好き 40%
-苦手。できれば避けて通りたい  20%
その他 20%
・大好きだったけど、教える側になって自信がなくなっていた。
・製作は好きだが、絵が苦手。

<自由な表現の場づくりをしてみよう!となった1月。どんな気持ちでしたか?率直なご意見をお願いします。>

一体自由って何?どうしたらいい?今のままではダメなの?保護者も何て思うのか?不安以外何物でもない!!!(ほか多数)

・今まで自分たちがやってきたことに不自由を感じていたわけではないし、学びたいところがそこではなかったので、とても戸惑い先に進むことができなかった。正直苦痛だった。

・本園の絵画指導がどんなふうに変化するのか、ワクワクという期待感が止まらなかったです。

・何をして良いのかわかりませんでしたが、やっていくうちに、こんな感じ?と何となく分かったように思う。

(ほか、不安や消極的な意見がほとんど)

<1月から6月までの間、嬉しかったこと、感動したこと、楽しかったことを、可能な範囲でお聞かせください。>

・こどもたちの「たのしい!またやろうね!」の声が増えた。「大胆にやる=めんどくさい、片付けが、、、」と思っていたが、園全体でやるようになって「汚れてもいいや!大胆にやってる子をもっとやっていいよ!」と楽しんで見れたり一緒にできるようになった。

・子ども達の笑顔が増えました!クラスの中で今までの活動だと取りかかれない子が、積極的に取り組んでいたと聞いた時すごい!と感動しました。

・これまでの絵画指導ではまったくやろうとしなかった子どもが、今回の取り組みになったら最後まで黙々と描いていたことを聞き、やろうとしていることは間違いではなかったと確信しました。また、ブロック研修の実践で、すべての子どもたちが生き生きと活動している様子を見て、嬉しく思いました。

・今までの絵画活動に比べて、明らかに子ども達の取り組む姿勢が変わった。「明日もできる?」と聞いてきてくれた時は、とても嬉しかった。私が抽象的な題材を提示した後は、子ども達自身が活動を広げていく様子を見て、子ども達の新しい一面や想像力を見れたような気がしている。

・子どもの反応はとても素直だから、自分がこれでいいのか分からなくても子ども達が「楽しかった!」と言うだけで救われることがあった。

・絵の具を使うのはこの時期から。色変えをするのはこの時期から。絵画で使用する物。等、今まで決めつけていたものが多かったことに気付いた…チャレンジしてみたことで、子どもの可能性も伸び、子ども達が思い切り自由に楽しむ姿をたくさん見られたことが嬉しかった! 子どもの表現が自由で良いとなると、保育者も自由な姿を認める、大らかな気持ちで保育が出来ることが良い。

・研修でれい先生の言葉を直接聞くことにより、自分たちがやってきたことが間違いではなかったということを感じることができ、少しずつ前向きに進むことができた。最後にリモートで短時間ではあったけど、直接れい先生に相談できたことがとても大きかった。 そして一番感動し、楽しく、嬉しかったのは研修日当日の活動だった。自分が思っていたよりも子どもたちがとても熱心に楽しく取り組んでいることに驚き、「やってよかった!」と達成感を味わえた。

・今まで思うように描けなかった子が、自由表現にしたことで手が止まらなくなったこと。

(ほか、こどもたちの変化や能動性に関わる回答多数)

<単刀直入に!自由な表現の場づくりをやってみて、いかがでしたか?>
-
やってよかった! 73.3%
-どちらかといえば、やってよかった 13.3%
-その他 13.4%
・やってよかった!けどこれからも頑張らなきゃ!これから何しようかなぁ、、、
・まだわからない

<上記の理由をお聞かせください>
・嬉しい気持ちとまだ少し不安な気持ちもあるため

・嬉々とした顔で生き生きと活動している子どもの姿がすべてを物語っています。

・まず保育者が考え過ぎず、そして約束をしっかり伝えながら自由な部分を作る事で、子供達は楽しんで取り組んでいました。そして楽しんでいる私もいました。

・私自身が絵画活動を楽しめるようになった。次は何をやろうか、やってみたいなというような思いで取り組めるようになった。

・自分自身の勉強する時間となった。

・試行錯誤しながらも、れい先生にアドバイスを頂きながらやった活動は、子どもたちが伸び伸びと楽しめるものになって良かった。できれば今後も続けていきたいという気持ちはあるが、実際は仕事量が増え負担が大きい。

・今までの自分たちがやってきたことが間違いではなかったことがわかったことに加え、そこに持って行くまでに、今までとは少し違うやり方もあるということがわかったから。

<今回の経験を踏まえて、今後やってみたいこと、計画していることがあればお聞かせください>

・年幼クラスで模造紙1枚を1人で埋められるくらい作ることが好きになってほしい!五感を使える遊びを考えたい。

・今回作成した作品をオブジェのようにディスプレイして作品展に飾ってみたい

・画材を、子ども達と共に考えて取り組んでみたい

・今は私が題材を提示しているが、子ども達と題材から考え一から活動を作っていきたい。

・すべての技法を合わせて1つの作品にしたり、作品を違うものに活用したりしていきたい。

・まだ考えがまとまっていないが、今まで目を向けてこなかったことにも挑戦してみたい。

・廃材遊びをしているので、その活動を自由表現と結びつけて遊べる活動をしたい。



フェーズ1-6:ここまでの、田中のまとめ

上記アンケート回答から
改革の開始時、先生の中にはとても大きな不安があり
中には、これまでの実践が否定されたような気持ちもあったこと。
手探りで実践を始め、不安を自信に変えてくれたのは
こどもたちの能動性や楽しむ姿だったこと。
そこから、こどもたちとの相互関係の中で
絵画指導を先生自身も楽しむ余地が生まれてきたこと。
一方で、業務が多い中でまだ不安もあること。
など、先生方の半年間の歩みが
温度感あふれる状態で伝わってきます。

個人的には、今回の取り組みではなかなか直接見ることができなかった
こどもたちの様子(しかもポジティブな変化)を知ることができたのは
とてもとても嬉しかったです。

また、一連の回答から、私が一番強く感じたのは
先生方がもつ、こどもたちへの愛情でした。
だからこそ、先生方の中にあった不安が
たった半年の間に、自信に変わったのだと思います。
百聞は一見にしかず。
自由に表現することの価値を、どれだけ大人が説いたところで
こどもたちの姿には敵わないのです。

もちろん、先生方の不安が全てなくなったわけではありません。
さらにここから、半年後の作品展に向けて
先生方との挑戦が再び幕を開けます。

先生が見た、こどもたちの姿
先生とこどもたちとの関わり
それを、対外的にどうやって見せ、伝えていくのか?
まだまだ改革記は続きます。

<フェーズ2へ、つづく>



おまけ:UMUMの関わりに関するアンケート回答

本題とはズレる部分があるので、おまけという形で、、、
先生方による、UMUMの関わりの振り返りもご紹介します。

<UMUM(田中)の関わり方について、よかったこと、改善すべきことがあればお聞かせください>

・たくさんアイデアをいただき嬉しかったです。どうしてもやらなければならない、描かなければいけないみたいなところがあったが「それでは先生達が大変じゃん」って言っていただいて気持ちが楽になり、「これでいいんだ」と思えました。

・いつも田中先生が笑顔で「いいね👍」って言ってくれるので半信半疑から自信に替わっていきました。改善すべき事と言えば、いつも側にいて欲しいです。無理ですねー!笑

・田中先生との直接的なやり取りを早い段階から行いたかった。可能であれば田中先生のアートの指導を実際に見てみたかった。

・色んなアドバイスを頂けたことで、悩みもとにかくやってみようという気持ちに変えることができました。また、私にはなかった考えを沢山教えてもらい、学ぶことができました。今回のことを今後にも生かしていきたいと思います。ありがとうございました。

・担任の思いに寄り添って、的確なアドバイスをして頂けて有り難かった。 自由表現について、質疑応答を繰り返すことで、全てがただの自由もいうことではなく、こちらの思いがありつつの、自由度を高めていく。ことも有りということが理解できた。 本当にありがとうございました。

・悩んでいる事に的確なアドバイスをくださった時の感覚は暗闇に光がさした感じでした。

・どんな些細な悩みにも適切なアドバイスをくださり、優しく寄り添ってわたしたちの活動の幅を広げてくださいました。令先生に出会えて本当によかった〜と思ってます!

・今まで色々とありがとうございました。私たちの根本的な考え方から変えることは、ご苦労された事でしょう。常に笑顔で受け応えしてくださり、そして自信に、繋がる様にしてくださり楽しかったです。順心のhappy Artはまだ出発したばかりです。今回の研修を見学された他園の先生方も絵画について悩んでいた方が多かったようなので少しずつ藤枝の絵画に対する考え方が変わっていくかと思います。心はガッチリ繋がっていますのでこれからも見守っていてください。

ジーン。
私のフィードバックは毎度長文で、うるさいかなあ、、、
と思ったりもしたのですが
いただいた回答を見て、一安心。

フィードバックの内容についても
先生の質問に対して
私の答えは、とても抽象的で
「◎◎しましょう!」
「△△を使いましょう!」
「××は、したらいけません!」
と明確な答えをしませんでした。
端的に言ってしまえば
先生のアイディアを肯定し
こどもの様子をしっかり見て、哲学を薦める内容ばかり。
やきもきしたのではないかな、、、と思っていましたが
先生方の思考を深めるきっかけになったこと、とても光栄に思います。

現実的な関わりについては
予算などの都合上、なかなか先生方と直接お話しする時間をとれなかったことが反省点です。
一方、先生方と1:1でお話しできたzoomが
とても貴重なコミュニケーションだったことが伝わってきました。
お忙しい先生方の時間をいただき
お一人15分×15名のzoomは
病院の「次の方どうぞー」状態でしたが
それでも、本当にやってよかった!
このような抽象的な内容のコミュニケーションは
フィジカルに伝えるのが一番良いということも、よくわかりました。

先生方、貴重なご意見を率直にお聞かせくださり
本当にありがとうございましたm(_ _)m


いつも長文を読んでいただきありがとうございます! サポートは、企画のための画材&情報収集に活用させていただきます。