技術指導から、感性支援へ。幼稚園絵画指導の大改革記① -改革のはじまり-
2022年夏。
私の元に、一本のメールが届きました。
問い合わせてくださったのは、藤枝順心高等学校附属幼稚園の鈴木副園長。
ここから2年間に渡り、藤枝順心高等学校附属幼稚園のみなさんとUMUMの
幼稚園における、絵画指導の大改革が始まりました。
大改革の前後
問い合わせをいただいた経緯を、副園長先生は次のように語ってくれました。
それまでの、この園での絵画指導は
教室の一角においた机に
クラスのこども3名と先生1名が対面で座り
先生が指定する絵の具を用い、描き順を丁寧に教えていました。
この指導方法により、絵画指導の経験が少ない保育者であっても
一定水準の絵をどの子にも描かせることができ
保護者に満足してもらえる展示作品として担保できる
「丁寧・確実」な指導法だ、と先生方は考えていたそうです。
年に一度の展覧会では、丁寧な指導の積み重ねによる
高い技術のたくさんの作品が並んでいたそうです。
2年後の絵画指導では
「つめたい」「あったかい」「おしゃれ」などの抽象的なイメージを、こどもたちが好きな色で表現したり
「宇宙」をテーマに、クラス全員で大きな作品を制作したり
段ボールや壁に立てたビニールなどに、好きな道具でえのぐ遊びをしたり。
2年前に比べると、個人制作の作品は一枚一枚の違いが大きく
個々の発想や解釈が表現された作品になっています。
作品の多様性のほかにも
画材の幅、テーマの幅、作品の大きさの幅など
活動そのものの多様性も生まれています。
さらに、園児の反応にも変化があり
「やりたくない」「できない」と言う園児や
「先生、〇〇していい?」と確認する園児が減り
絵画を能動的に楽しむ園児が増えたそうです。
この取り組みで、とても大事なポイントは
ほとんどの絵画指導の授業を、先生方が自ら考えたこと。
2年間の関わりの中で
「こんな授業をやってください」
「こどもたちには、こんな声かけをしてください」
と、UMUMが正解を手渡すことはしませんでした。
そのやり方では、実践の場面でいつか
「UMUMに、そう教えてもらったから(正しいはずだ)」
という思考停止の瞬間が訪れます。
それは、先生自身のアイディアや問いの種を
見えないものにしてしまいます。
また、長期的には、こどもたちが安心して自分を表現する環境を
持続的に作り続けることが難しくなると考えたからです。
対象(絵画指導、しいてはこどもたち)に興味をもち
自ら問いを立て
実践(授業)を重ね
自分なりの最適解を探していく。
まさに、こどもだけでなく
先生方も授業を通して、探求学習をしていました。
その渦中は、決して簡単ではなく
先生方の中には
それまでやってきたことを否定されたような気持ちになったり
これでいいのか、と自信を持てない場面
そして、変化への不安もあったと思います。
この大改革は、とてもドラマチックで
濃厚な2年間でした。
どんな変遷を辿ったのか?
まとめていきたいと思います。
長文になりますが、お付き合いください。
<つづく>
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