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技術指導から、感性支援へ。幼稚園絵画指導の大改革記⑧ -日常に続く研修 年長クラス編-

藤枝順心高等学校附属幼稚園での、2年間にわたる絵画指導大改革。
下記記事から、数話にわたって書いています。

藤枝順心高等学校附属幼稚園は
年幼〜年長までの4学年、全15クラス380名のとても大きな幼稚園です。
今回のプロジェクトでは、授業作りや展覧会づくりのサポートを主に
担任の先生方、副園長、主任教諭の合計17名を対象に
研修や、報告↔︎フィードバックというかたちで関わりました。

2年間の変遷は、大きく3つの目的に分けることができます。
フェーズ1:2022年8月〜2023年6月 ブロック研修に向けて
フェーズ2:2023年10月〜2024年2月 作品展に向けて
フェーズ3:2024年5月〜2024年9月 持続的な指導に向けて

今回からいよいよフェーズ3。
持続的な指導に向けて、2年間の総仕上げの様子です。


フェーズ3-1:日常に続く研修を

ここまで2年間にわたり、大きく絵画指導を見直して
努力と工夫を積み重ねてきた先生方。
新しく捉え直した絵画指導を
ブロック研修で地域の他園の先生方に発表し
作品展で保護者にこどもたちの成長を伝えました。

ハレとケを繰り返してきた
先生方の進化は堅実で
正直、私個人的には
ここで研修を終了しても大丈夫だろう
という感覚がありました。
一方で、行事(ハレ)を終えたタイミングで
ずばっと研修が終わってしまうことより
日常(ケ)に続くメッセージを
先生方に残したい気持ちもありました。

それを察知していたかのように
作品展研修のタイミングで
副園長先生から、静岡県内の教育研究を支援する
はごろも教育研究奨励会の助成が決まった!
とお知らせをいただきました。
さすが敏腕マネージャー!!
またしばらく、先生方と絵画授業づくりをウムウムできる!

ということで、2024年5月
藤枝順心高等学校附属幼稚園にお届けする
UMUMの最後の研修が始まりました。

フェーズ3-2:小学校進学を視野にいれる/年長クラス研修への思い

再び副園長先生と、主任の先生とzoomで打ち合わせを重ね
今回の研修は各学年にフォーカスした3回の研修を
他のスケジュールと調整しながら
月一回づつくらいの頻度で行うことに決めました。

新年度を迎え、新たなクラス編成で動き出した先生方に
早速絵画指導に対する所感を伺う、アンケートをお願いしました。
集まった意見をもとに、まず実施したのは
年長クラスを中心とした研修。

テーマは
「自分の表現を深める/主体と協調のバランスを学ぶ
そんな授業づくりとサポートとは?」
にきめました。

年長さんだけでなく、年中さんもその気配を感じていましたが
ここまで1年間、自由表現の経験を重ねて
表現することが楽しい、面白い、好きという感覚が
子どもたちの中にしっかり根付いていると感じていました。

個人個人が持つ、そんなポジティブな感情が
グループになると共鳴しあって
こども同士のコミュニケーション豊かな共同制作も
実現してきたのだと思います。

そんな年長クラスのこどもたちは
これから小学校という新しい社会に飛び出します。
そこではこれまで以上に、協調を必要とされる場面や
他者の批評をうける場面が増えていきます。

自分の表現という、しっかりした土台をつくり
その上に、社会的な経験を重ねて
自分と他者のバランスをとっていける
そんな人になっていってほしい。
そのためには、幼稚園でどんな準備(授業)ができるのか。

先生方とイメージを共有しながら
それぞれの授業作りや関わりの
アイディアのきっかけになる研修を目指しました。



フェーズ3-3:「主体と協調のバランス」年長クラス対象の研修

研修当日。
この日も、午前中に先生方が実施する
絵画指導を見学しました。
ホールに集まり、紙をつなげた大きな支持体に
こどもたちが街を描いていました。

相変わらず、圧巻の規模感!
絵の具で描いた自分のお家を、大きな台紙に貼っています

一人一人が描いた家や建物を起点に
それらを道で繋げたり、電車や車を走らせたり。
公園や横断歩道、空港やプール、、、
こどもたちはコミュニケーション豊かに
アイディアを出し合って、世界を広げていきます。

紙もどんどん継ぎ足して
とても柔軟かつ生き生きとした作品が出来上がっていました。
(今年度からスモッグを取り入れたのも、ナイス判断!)

こどもたちの意思表示もとても活発で
先生方も暖かくそれを受け止め
楽しそうに思いを形にしていました。




お昼を挟んで、午後は先生方に集まっていただき
私からの研修がスタート。
年長クラスが中心の内容ですが
研修自体は全クラスの先生方が参加してくれました。

「表現を深める」「主体と協調」
という二つのテーマと
そのテーマを実現する授業づくりのヒントを
スライドでお話しします。


自分の表現を深める、とはどういうことか?
主体と協調のバランスとは?


研修後半は、先生方と手を動かすワークショップ!
ここまでの取り組みで
先生方とじっくり制作を行う機会があまりなかったので
フェーズ3の研修では、どの回も制作する時間を
積極的に取り入れました。

座学で知った知識を、実体験で体に落とし込むのは
UMUMが最も得意とし、かつ着実だと思う方法です。

この日は前半にお伝えした「主体と協調」の部分を体験できる
グループワークを実施しました。
「へんないきもの」というテーマで
一枚の絵に、順番に体のパーツを書き足していき
偶然できあがった不思議ないきものに
物語をつけていくという活動です。

うろこ?がついてる、カエルのような不思議な生き物!
こちらのグループは、おじさん風?ちゃんと変でいい◎

おとなでさえ(おとなだからこそ、より一層)
思い切りがなかなか出せず
冒頭戸惑っていた先生も
「"変"ないきものですよ!」
「だからかっこよくなくて、うまくなくていいんですよ!」
と声かけすると
開き直って鉛筆を走らせてくれるようになりました。

お互いのそんな形が重なりあって
いよいよ誰も見たことのない
「へんないきもの」が紙の上にできあがると
大爆笑するチームや
真剣に色を塗り重ねるチームなど
そのテンションもさまざま。

いきものが完成したら、その名前や生息地
性格を考えます。
妄想で適当に、と思いきや
意外にもここは「観察」と「こじつけ」がキーポイント。
うろこがあるってことは、泳げるから水の中に生きてる?
耳が大きいってことは、音がよく聞こえるから繊細な性格?
みんなで描いた形からヒントを得て
ストーリーをこじつけます。

コミュニケーションがベースになるため
自分の思う通りにはいかない、ままならなさと
共同だからこそできる、先が読めない創作の面白さと広がり
そして、作品を深めるコンセプトづくりを体験しました。
最終的に、どのグループも遊び心あふれる
へんないきものができあがり
先生方も、すごく楽しそうでした。


研修後は、先生方との立ち話雑談も活発になったり。
私と先生方の関係も出来上がってきた気がして
とても嬉しい気持ちになりました。

<つづく>



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田中 令|UMUM
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