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自由ってなんだ!?~藤枝順心附属幼稚園インタビュー~【前編】
株式会社UMUMの活動や想いを、応援してくださる皆様をご紹介します。
今回は、藤枝順心高等学校附属幼稚園(以降、幼稚園) の先生方にお話を伺いました。
副園長のすえひこ先生からお声掛けいただき、UMUMは2年間、現場の先生方の絵画研修担当としてご一緒させていただきました。これまでの絵画指導を見直し「子どもが自ら描きたいと考え、楽しんで自分の思いを表現する活動」を構築してきたこちらの幼稚園。どんな想いや葛藤、そして変化があったか…先生方にお話しを伺いました。まずは前編から、どうぞ!
【お話しを伺った、先生方】
鈴木すえひこさん…副園長。37年の教員経験を経て、幼稚園も8年目。大ベテラン!好きな食べ物はうなぎ。好きな色は青。
伊藤ゆみこさん…主任。教員・教諭暦計28年の頼れるお母さん的存在。好きな食べ物は、桃。好きな色は情熱の赤。
藤間あやのさん…クラス担任。幼稚園教諭10年。好きな食べ物はキムチ鍋(辛さ控えめの)。好きな色は白
青木なつみさん…クラス担任。幼稚園教諭3年。好きな食べ物は焼き鳥(滋賀名産のひね鳥が好き)、鮭の塩焼き。好きな色は緑、黒、白。
(本文中では敬称を省略させていただきます)
ーー藤枝順心高等学校附属幼稚園(以下、幼稚園)は普段どういった活動をしているんでしょうか?
あやの:大きな幼稚園なので、運動会のマーチングをはじめ、発表会も大々的にやったり、活動の軸がたくさんあります。今回れいさんとご一緒したアートの時間もその軸の中のひとつになります。対外的に見せる活動も多いですね。
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ーーあやの先生は、普段の活動はどのように取り組んでいらっしゃいますか?
あやの:基本的にはこどもたちと一緒に、生活の中でいろんなことに気がついて、感じて、学んでいくことに重きを置いています。まずこどもたちの声を聞いてみて「こどもたちはどうしたいかな? 何がしたいかな?」を確認しつつ、「じゃあ、できそうな〇〇をしよう!」という形で動いていきますね。決められたことをやらせる形にはしたくないので、こどもたちの思いや様子を見ながら、こどもたちとも職員同士でも話し合い、みんなで一緒に作っていると思います。
ーーありがとうございます。UMUMの絵画研修にはどのような経緯で取り組まれていったんでしょうか?
あやの:多分、UMUMさんにサポートしていただいたきっかけは、こどもたちの描く絵が同じような絵、おとなが描かせてる絵になってしまってるんではないか? みたいな意識が元にあったと思うんです。
でも、研修が始まる前もこどもたちの自由度を考えてやってきていたところもあったので、UMUMさんが来られる背景を聞いたときには、正直「おとなが描かせてはないんだけどな…」と思うところもありました。
自分はこの幼稚園に新卒で入ってきたので、絵画活動についても、先輩たちの指導の様子や記録を見ながら「絵画活動とはこういうものだ」と勉強し、そのまま何の疑問も持たずにやってきました。
元々、私自身絵を描くことは苦手で、絵を描きたいと思うことも全然ないんです。でも、こどもたちにそれを提案するというか、こどもたちとの絵画活動自体は嫌いではなかった。世界児童画展で入賞するこどもたちの絵を見て「選ばれる絵って何なんだろう?」と考えたり、自分なりに技法を勉強したりもしていて。
例えば、「ザリガニを描こう」というテーマで爪に重点を置いた迫力のある絵を描いて欲しいと思ったとき、まずはこどもと一緒にザリガニを触って、その時に爪に意識が向くような声かけをしたり、いざ絵を描く時にも「爪にインパクトのある絵を描いて欲しい」と伝えるような導入を試してみたりして。一緒に楽しんだ経験や担任の声かけ1つで、絵が変わるかな? と試行錯誤してきたんですが、UMUMさんの研修が始まる経緯を聞いた時、そういうのも本当は良くなかったのかなとか…。「今までの私の絵画指導は、ダメだったんだ」みたいな思いを持ちました。
ーー研修はどのような始まり方だったんですか? 「今までの絵画を変えよう!」というような形だったのでしょうか?
ゆみこ:毎年、年度末に職員の反省会があるんですね。その中で、「絵画についてもっと勉強したい」、「絵画活動をどういう風にこどもたちと取り組んだらいいのか、わからない」という声が上がっていて。それで、副園長が調べてくれて、れい先生を見つけてくださったんです。「(副園長)こんな素晴らしい先生を見つけました!」「(職員たち)えええ!」 みたいな(笑) 急になにか分厚い壁がドーン! と降ってきたような感じでした(笑)
れい:ああ、そうだったんですね。研修中にお願いしたアンケートで、先生方がそれまでの指導を否定されたように感じたっていうのは受け取っていたんですけれど、どの辺りでそう感じたんだろう?とずっと気になってました。
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ーー先生はUMUMと関わる以前から、ご自身で勉強されて活動づくりに取り組んでいるお話を伺いましたが、そのような中で日頃から感じていた課題感などありましたか?
あやの:私がこの園に入った時から、「絵画の指導方法」みたいなものは特に無くて。「あのクラスの絵がすごい映える理由は、絵の具の濃さか!」「この台紙の色と、この絵の具の色って合うんだ!」みたいに、見よう見まね、自分で盗むしかないところがありました。
活動自体も、本当にその担任の先生次第みたいなところがあって。絵画活動のコマ数に決まりもないので、取り組む先生ごとに差が出てしまったり。先生はみんな、なんとなく自分の感じたままに取り組んで、それぞれが「これでいいのかな?」と不安になって、年度末のアンケートに「絵画が分かりません」って意見が出てきたのかなと思います。
ーーそんな状況の中で、UMUMが”どんと降ってきた”ときのことについてお聞かせいただけますか?
あやの:研修が始まる旨を知った時、私たちクラス担任はれい先生ともお会いできておらず、ひとまず副園長から話を聞いて、とりあえずやってみる!という感じで、想いも背景も全然理解できてない状態でした。
研修初回後取り組んだ自由表現は、本当に自由。こどもたちに、何か題材を与える必要もない。画材だけを置いておいて、こどもたちに描かせてみようという感じだったので、これまで私が考えてきた題材選びや導入などの工夫もできずで、なんかちょっと思考が止まっちゃったところがありました。でも活動を止めることはできないので、とりあえず言われた通りにいろんなものを用意してやってみました。
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大きな紙、細長い紙、大きな芯など
いろいろな支持体にえのぐであそぶ。
でも、やってみたら、確かにすごい気楽というか。「そう描くんだ…!」とか、こどもたちのありのままの姿を「へぇ〜」って見ることができて。
幼稚園では「画面から溢れ出てくるぐらい迫力のある絵の方が良い」と思い込んでるところがあったので、「(絵筆を)大きく動かせるよ〜」とか「先生はこんなのもできるよ〜」などと言いながら、こどもたちの見本になるような声かけをしていました。
そういった目当てや声かけなどもなく取り組んでみたら、本当にこどもたちがベタベタベタベタと塗りはじめて。
私は年少(3〜4歳児)の担任だったので、初めて筆を触る子もたくさんいました。画用紙に余白がたくさんあるのに、同じところに色をどんどん重ねて描いていて、でも、それも新鮮で。「これを何か作品として完成させたい」と思っていたら「ああ、なんか違うのに〜!」「う〜っ」て思ってしまうようなところを、「今日はどうぞどうぞ」というスタンスで見守りました。「へえ、そうやって描くんだね〜」って見守れたのは自分でもすごい気楽だったというか、一緒に楽しめたというか。
同じ学年の先生と「今のこどもたちにとって、自然に腕を大きく動かすことは難しいんだね」とこどもたちが取り組む姿から話ができたり、「この時期の子たちって筆をポンポン置いたり、色をどんどん重ねて、ただやる!ってことが面白い段階なんだね」というような気づきがありました。自由表現ってこういうことなのかと、なんか一歩進んだ感じがしました。
ーー自由表現に取り組む前後で、お話いただいた他にもこどもたちの様子に変化などありましたか?
あやの:自由表現に取り組む以前と比べると、もう本当に絵画活動が楽しくてしょうがない!という様子です。絵画活動のことを幼稚園では「ハッピーアート」って呼んでるんですけど、「ハッピーアートやりたい! やりたい!」と言ってくれます。
これまでは「今日は絵を描く日だよ」と伝えても、「今日は何描くの〜?」ぐらいの反応だったと思うんですけど、前の日に「明日ハッピーアートやるからね」って言うと「やった〜、明日ハッピーアートだね〜」って楽しいイベントのひとつみたいな反応をしてくれます。本当にみんなハッピーアートが大好きです。
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個人制作で描いた家を貼ることをきっかけに
大きなホールに広げた紙に、「街」を描く。
ーーUMUMの絵画研修という形での関わりはひと段落ついている今。振り返ってどう感じているか、先生の気持ちを教えてください。
あやの:色々研修を重ねた今振り返ると、この幼稚園のやり方や今までやってきたことも含めて、私たちの全部をすっぱり変えたわけじゃなくて。
れい先生が来てくれるたびに、「クラスの中での約束ごとは決めていいのか?」や「ここは担任の想いを伝えてもいいのか?」など、ずっとやり取りしてきました。自分が疑問に思ったことについて、ひとつずつ答え合わせができたんです。
こどもに委ねると同時に自分の想いを持っててもいいんだなとか、逆にはっきりと「もうこれ以上はやらないよ」と伝えることも大事であるとか、その辺の塩梅を教えていただきました。
なので、まるっきり全部変わったかって言うと、意外と自分の中では一周回って元に戻った気もしています。(笑)
でも、色をもっといっぱい用意してあげようとか、自由度をもっと増やそうとか、迫力のある絵だけじゃなく、小さくちょんっと描いてる絵を面白がれるようになったというか。自分も一緒に楽しめるし、全員が同じように描けなくてもいいと思える自分になったのは、大きかったです。
れい:私も、キャリアの長い先生の方が葛藤は大きかったんじゃないかなと思っていました。あるべき姿や活動の手本を学んできたけど、これまでの学びと研修で言われたことの違いをどうしたらいいんだろうとか。
そんな中で、「目の前のこどもたちの姿を受け止めればいいんだ」って感覚を掴んだ時の先生の応用力は、やっぱりすごいなと思って見ていました。
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展示方法が大きく変化しています。
ーー担当してるクラスの子たちを見ていて、もっとこういう機会があったらいいなと思うことはありますか?
あやの:はっきりとは分からないですが、今世の中で主体性などと言われているなか、私たちも保育を色々見直したり、どんな活動においてもこどもたちが自分で考えられるように、自分で選ぶ力がつくようにと思って保育をしています。それと、この自由表現に取り組むUMUMさんの活動は、同じ方向を向いてるなっていうのはありました。
幼稚園は絵画に力も入れていますが、他の活動もあります。その活動の合間に時間さえあれば絵画活動をやるんですけど、そういう時に十分な準備をしてあげられていないと感じます。毎回思いっきり楽しめるような環境が整って、自分で選択していろんなことをやってみて、失敗もない、大丈夫だって思ってできるような場を、もっとちゃんと設定してあげられたらいいなと思います。
ーーここまで話されてみて、最後に感想などありましたらお聞かせください。
あやの:今まで思ってきたことを全部聞いていただけて、なんだかすっきりしました。
本当にれい先生には感謝をしていて。研修の一番最後の時に、「この幼稚園がやってきたことは間違いじゃなかったよ」と言っていただけて、ほんとに全てが報われたような気がしました。れい先生には絵だけじゃなく、保育のことや、こどもたちのことをいつも一緒に見ていただいて。保育士さんなのかなって(笑)
どんなことも受け止めていただけたことに助けられました。絵だけを見て否定するのではなく、幼稚園全部ひっくるめて見ていただけたのがありがたかったなって感じました。
れい:先生方がやってきたことも、先生方自身のことも、絶対否定したくないという気持ちで研修を作ってきたので、伝わっていて嬉しいです。ありがとうございます。
あやの:他の先生もきっと、皆そう思ってると思います。そう言ってました(笑)ありがとうございました。
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<↓後編に続く…>
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今回インタビューさせていただいたこちらのプロジェクトについて、UMUMれいの視点から時系列で綴っています。
活動の経緯や取り組みの詳細を、インタビューと合わせてぜひご確認ください!
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藤枝順心高等学校附属幼稚園
令和6年度の作品展が開催されます!
こどもたちの作品を、ぜひご覧ください◎
2025年2月7日(金)17:00-19:00
2025年2月8日(土)9:00-15:00
住所
藤枝順心高等学校附属幼稚園
〒426-0067 静岡県藤枝市前島2丁目3−2 3番2号
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