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本日の本請け(2023.10月)

できるだけその本に合った飲み物やお菓子を用意して読書しています。

『道具のブツリ』文・田中幸、結城千代子 絵・大塚文香(雷鳥社)

ジュンク堂書店のFacebookで見かけて面白そう!と思って購入した本。

身近な道具にまつわる、物理についてイラストを交えて解説してくれています。
25個の道具について、その他コラムなどもあり、一日にひとつの道具、ひとつのコラム、と決めて、のんびり読みました。

東京のお土産でもらった最中

自分は高いところが苦手で、ロープクライミングをしたときにカラビナを初めて見たとき、外れないということを信じられず、かなり疑ってガチャガチャした覚えがあるんですが、これのフックの章を読んでようやく納得しました。

「マクデブルグの半球実験」、思わず画像を調べてしまった。

けっこうな厚みのある本なのですが、留め方が面白くて(おそらく糸綴じ製本)綺麗に開いて読むために開けるのが楽しかった。学校とかにさりげなくあるとよさげな本。

『新装版 魔女の宅急便 4 キキの恋』角野栄子(角川文庫)

オーディオブックで読む、『魔女の宅急便』も4作目。

ねないこだれだのチロルチョコ

前巻が外側から来てキキを脅かすものだったのに対し、この巻は内側からのザワザワ。自分にも覚えがあるけれど、これがまた厄介なんですよね。

トンボさん……パートナーになる人、なりたい人とどう関係を築いていくか、とても丁寧で嬉しくなってしまった。
最後はドキドキしたけれど、このお話での魔女や魔法がどういったものなのか、わかる気がします。

そういえばニュースで、ツリーハグが世界的に流行っている、というのをちょうど聞いたところなので、今回の展開には妙に納得してしまいました。

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件/奇妙という名の五人兄妹』アンドリュー・カウフマン(創元推理文庫)

最初にSNSで見たのだったかな?
気になっていて書店で購入しました。「奇妙な物語」が読みたい気分でもあったのです。

表紙もとても良いですよねー。けっこう、買うときの決め手でした。
元々、黄色い表紙で「銀行強盗〜」だけの本が出ていたっぽい?今回ふたつ入っているのでこうなったのか。

たまたまもらったカナダのお土産

起こっていることは変なんだけど、なんだかそこまで突飛に感じないのが不思議でした。
なんとなく「そうはならんやろ」ではなく、「そうなるだろうな」と思わせる、この描いている世界が私たちの世界とも地続きであるような説得力がありました。

「銀行強盗〜」の方が読みやすかったんだけれど、登場人物たちが愛おしかったのが「奇妙という名の〜」の方。
リチャードがカメラを置いたときとか、映画のようだった。
キーをケントに投げたときには「おおお!」と心の中でスタオベしてしまいました(笑)。

呪いと祝福は表と裏。

『高橋源一郎の飛ぶ教室 はじまりのことば』高橋源一郎(岩波新書)

読書会をしたときに紹介してもらったラジオ番組。
他のラジオ聞いたりオーディオブック聞いたりでなかなか聞けてはいなかったのですが、Podcastで最初の言葉だけは配信しているのに気づき、とても短くて聞きやすくてたまに聞いていました。

そうしたら、はじまりのことばだけを集めた新書の朗読がAudibleにあることに気づき、聴くことに。

ラジオの言葉を他人がまた朗読するって、ちょっと変な感じ(笑)。でも、高橋さんの素朴な読み方を踏襲しているようで心地よい。最後にラジオドラマの朗読もあり、そちらは情感こもってて打って変わっているのも面白かったです。

これも東京のお土産にもらったお芋のお菓子

81時間目の「読む前の本」が好きだった。
実際には読まないけれど、いつか読む本。憧れのままの本。
『三月は深き紅の淵を』を思い出したな。

お芋のお菓子と、「物理のブツリ」で食べた猫のもなかは同じお店のものだそう。上品な甘さで美味しかった!

『つかれた日には鍋にキャベツとホロホロ鳥を放り込み』谷内雅夫(西日本新聞社)

本の置いてあるカフェに行ったときに、たまたま手に取った本。さくっと読めてしまったのだけど、楽しかった!という気持ちになれてとても満足でした。

また読みたいな、手元に置きたいと結局ネットで購入しちゃいました。

テリーヌという料理も出てきたから、チーズテリーヌを頼んだ

ホテルオークラのシェフのエッセイ集。

1ページほどの文章に料理のスケッチが続きます。どれも印象深くて料理への愛情と情熱に満ちていて、ちょっぴり愛嬌のある筆者の人柄が垣間見えて素敵です。

最後にタイトルにもなっているホロホロ鳥の煮込みのレシピがついているのですが、鳥ももでも良いということで再現してみました。

これで合っているのか謎だがおいしかった

本当にホロホロ鳥で作ったらどうなるんだろう。
「ホロホロ鳥ってどんなの?」とSNSで呟いたら、海外や日本のあちこちを行き来している友人が「派手なやつだよ。おいしい」と教えてくれました。日本のどこかにも売ってるのだろうか。

『カフカはなぜ自殺しなかったのか?ーー弱いからこそわかること』頭木弘樹(春秋社)

本屋さんの普段は行かないような棚で見かけて、面白そうで購入した本。

コーヒーでじっくり

カフカは大学生のときに読んだけれどやっぱり強烈な印象がありました。
また、最初の方の序文で、「自殺したときになぜ自殺しなかったかは多く語られるけれど、なぜ自殺しなかったのかは語られていない」というのを読んで確かに、と思いました。
とても読みやすい言葉で書かれていて、大学で、好ましい教授の講義を聞いている安心感があります。

カフカの優柔不断さにはなんとなく覚えがあります。

小さいとき、私は靴屋さんがとても苦手でした。
その靴が足に合っているのかどうか、しつこく聞かれても、どう答えていいかわからないのです。
踵をトントンとして、指先が痛くない?歩いてみてキツくない?
何度尋ねられてもわかりません。大人になった今も、その場ではわからず、一日二日履いてみないとわからないです。みんなわかるものなの?
服屋も苦手でしたが、こちらははけるはけないが第三者から見て明確なのでまあ……靴は、本人の主観にしか頼るところがないので本当に苦手だったんです。
早く終わらせたくてテキトーなことを言って合わない靴を履いていたり、キツくなってもずっと言い出さずにいたので、足のかたちがちょっと変です。

それと同じで、自分が今どんな気持ちで、何を望んでいるかなんて、100パーセントの答えなんてないのでは?と思います。

カフカが本を出したくて出したくなかった気持ちも、結婚したくてしたくなかった気持ちも、とてもわかります。

弱さゆえに、「男だから」「女だから」「〜するべき」のようなバイアスなしに立っていたカフカ。手紙の言葉も日記の言葉もとても面白かった!

カフカの小説だけでなく、手紙や日記の面白さがよくわかる、良い本でした!

『フキダシ論: マンガの声と身体』細馬宏通(青士社)

前に、『マンガ学からの言語研究』を読んだときにもっと漫画の研究の本が読みたい!と思ったので購入。

七飯に行ったときのりんごシェイク

巻末にはフキダシがどのようにして現れたかの話があり興味深かった!
自分は少女漫画の歴史からしか知らないので、とても古いところから始まっていて漫画のはじまりというより、フキダシというものが現れた過程がよくわかって面白かった。

少女漫画的なもので言うと、『ガラスの仮面』の背景の花とフキダシの関係についての考察がすごく面白かった。それから、『ルックバック』の考察も興味深い。

読みながらあのマンガのあのフキダシは〜、と考えられて面白い。これからマンガが読むのがさらに楽しめる一冊。

そういえば、マンガ熱が高まって北海道出身のマンガ家さんの展示が中央図書館で行われていて、見に行ってきました。

大和和紀さんと山岸涼子さんの複製原画があって嬉しかった!
北海道出身の漫画家さんの紹介って感じだったので、もっと原画とか見られたら嬉しいな。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』汐見夏衛(スターツ出版)

子どもから勧めてもらったので読んでみた作品。

夏っぽい話だったので、ジンジャーエール

反抗期真っ只中の中学生の女の子が、戦時下の日本にタイムスリップ。特攻隊員と恋に落ちるというストーリー。どうしてタイムスリップしたのかの理由は特に説明ない。

わかりやすい、ストレートな言葉で伝えられる主人公の気持ち。ひたすら美しいストーリーだけど、途中の空襲の場面はストレートな言葉ゆえになかなか恐ろしい。

出てくる過去の人々が優しく穏やかだけれど、本当はもっともっと「話の通じなさ」がある気はした。例えば、現代でも誰かと話すとき、たまに常識が違い過ぎて戸惑うことがあって。彼らにしたら「当たり前」のことが、自分にとっては当たり前ではないのだけれど、あまりにも離れていて説得も面倒で、反論せずにやりすごす、みたいな。

もう祖父母も直接戦争の被害を受けた世代ではない、という子どもたちが多いだろうし、SF的な設定で、美しい物語だからこそ身近に感じられるもの、届くものものあるのかもしれないと思う。

『百鬼夜行 陰』京極夏彦(講談社文庫)

京極夏彦マラソンの残り。

暑いんだか寒いんだかわからなくなった日に選んだメニュー

本編ではあまり深く描かれなかった、名前だけさらりと出て終わった人たちの内面を描くもの。どれもこれもおどろおどろしい。

特に教師の山本の話がキツかった。

復習できて良かった。昔、本編しか読んでいなかったのが本当に悔やまれる。お金がなくて買うのやめたのを覚えているんですよね。読めてよかった。

『火星の人 上』アンディ・ウィアー(ハヤカワ文庫)

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』がとてもよかったので他も読んでみることに。

カボチャまるごとプリン。ジャガイモじゃないけど野菜つながりということで

死んでしまった、と思われて火星に残された宇宙飛行士が、たったひとりで生き残るためにあれやこれや奮闘する話。

ポップな文体で、そんなに深刻にならずに読める。主人公のユーモアのある性格が救い。『プロジェクト・ヘイル・メアリーより、専門用語的なものが多くて、今何が起こっているのかよくわからないことも。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』があれだけ面白かったのは、書き方の試行錯誤が結実したのもあるのかもしれない。

ラストで声上げて「えっ!」と言ってしまった。下巻も楽しみ。

『塞王の楯』今村翔吾(集英社)

初対面の人と本好き!と話したときに、米澤穂信さんが好きと言ったらとても盛り上がり、「直木賞同時受賞した今村翔吾さんもいいですよ!」と教えてもらい、よし読もう!と思いました。
オーディオブックで次何聴こうかな〜と探していたときにオーディオブックに今村翔吾さんたくさんあるじゃん!と気づいて、直木賞のこちらにすることに。

和風にしようと思って、どら焼きとほうじ茶

一乗谷の城攻めで天涯孤独となった主人公・匡介は、穴太衆の飛騨屋を率いる源斎に助けられる。
穴太衆とは、どんな攻撃にも耐える石垣を作る集団。どんな城をも落とす鉄砲などの武器を作る国友衆と敵対している。「石の声が聞ける」才能のある匡介は、一人前の職人に成長。幼い頃に落城を経験したため匡介は、絶対に落ちない城を造れば乱世が終わると考えるが、国友衆の彦九郎は兵器の持つ抑止力によって乱世が終わると信じていた。ふたりは関ヶ原の合戦の前哨戦となった大津城の攻防戦で激突することになる。

武士ではなく、職人たちの話が中心。とてもエンタメ!を感じられて、ぜひ実写で見たい一大巨編。特別サイトもあります。

石を運ぶ玲次がいいキャラ過ぎる!大好きでした。

エンタメとしてとても楽しく聴いたのだけど、これはこの作品が、というわけでなく、やっぱり小説で字を追っていてリズムが良い、読みやすいのと、オーディオブックで耳で聴いてすっと過ぎていくのは違うなと思う。
「凛然と」「片笑んだ」が何回も何回も出てきて聴いててうーんと思ってしまった。これ、読むだけなら気にならないしなんなら状況がすぐ把握できてぱっと次に行けると思うんですよね。むずかしいな。

エンタメとしてはとても満足したけれど、これは自分が個人的な考えと若干ズレていたのもあるんだろうけれど、最後の矛か盾か?ということの結論についてはエンタメとして後味の良いものを選んだだけかな、と思ってしまった。

『環と周』よしながふみ(集英社)

インタビューを読んで、読んでみようかなと購入。

第一話はある三人家族の話だったのが、第二話から環と周という登場人物たちが次々出てきて一話完結していき、「あ、これ生まれ変わりの話なのかな?」とわかっていく。最後に封筒を見て、第一話の夫婦も環と周だとわかるんですよね。

自分は、あの夫婦の夫と妻の、どちらが環か周かはっきりわからないところが好きだなって思いました。

慣習として宛名が上になってる環の方が夫かな?となっちゃうんだけど。
というのも、第二話以降の環と周、それぞれ個々としてみんな違って「生まれ変わり」だからと言って環は環なりの共通点とか、周は周なりの共通点とか、そんなにはあるわけではないと感じたんですよね。みんな、その一生の中で獲得した「らしさ」があって、それがふいに共通しているような気もするけれど。

生まれ変わりものって、共通点を見つけることこそが至高!みたいなところ、あるじゃないですか。でも、そうじゃなくて、それぞれで会って、「また会ったね」とフラットに言えるのがいいなって。

名前は「環」「周」ってついてるけど、実は名前が逆かもしれないって考えることもできるかなって。そうなるほど魂みたいなものが一緒なのもいいなって思っちゃった。

読みが浅かったら申し訳ないんだけど、私はそういうところが好きでした。

読書のための道具の話

先月も書いたのですが、こちらのブックショルダーがやっぱりすごく良くて、今月大活躍でした。

私は四六判と文庫判をひとつずつ持っているのですが、四六判にはKindleを入れて歩くことが多かったです。

文庫判はチェック柄にしました

文庫判はチェック柄にしたので、秋に持ち歩くのがとーっても楽しいです。嬉しくて年内に読みきれないんじゃないかっていうくらい、文庫の本を買ってしまいました(笑)。積読をまた増やしてしまった。スマホも入るし、オススメです。

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