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「客数ビジネス」から「客単価ビジネス」への戦略転換が求められる理由

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
モノ・サービスがなかなか売れない時代です。コロナ禍をきっかけに、飲食店・サービス業を筆頭に、あらゆる業界において、販売戦略転換が求められています。
 
そのなかで注目されているものの1つに、「客数ビジネス」から「客単価ビジネス」への転換という戦略転換があります。
 
言葉だけでもなんとなくイメージができますが、具体的に自分のビジネスに落とし込むには何をどうすればいいのでしょうか?
 
そのためにはまず、「そもそもこの戦略転換が、今、求められているのか?」、その背景や理由を知っておく必要があります。
 
客単価ビジネスの成功戦略として、「一点突破戦略」で成功をおさめ、コロナ禍に関係なく着実に利益を出し続けている、超話題の人気商品本格ボロネーゼ専門メーカー「ビゴリ」のオーナーにして、事業創出・業務改革コンサルタントの石川潤治さんは、2023年4月12日発売予定の著書『たった1つの商品で利益を上げる』の中で、客数ビジネスから客単価ビジネスへの戦略転換が求められる背景や理由について詳しく解説しています。
 
今回は、同書発売に先立ち、本書の中から該当箇所を一部編集して公開します。

市場の変化はビフォーコロナに戻るのか?

 前述したとおり、2022年のゴールデンウィークは久しぶりに行動宣言がない状態となりました。海外でもマスクなしで野球観戦をする映像などを観る機会も増えました。
 ここで1つ、これからの未来に向けての質問です。
 本書が出版された時点、つまり2023年4月時点の市場は、果たして2019年末までの「ビフォーコロナ」状態に戻っているでしょうか?
 私の答えは「NO」です。
 日本には「覆水盆に返らず」ということわざがあります。
「一度起きてしまったことは二度と元には戻らない」という意味ですが、市場の変化も同様で、一度起こってしまった変化は元には戻らないと私は考えています。
 今、外に出れば必ず一度は見かけるUber Eats の自転車やバイクが、この先1台も見かけないようなことにはならないはずです。宅配ビジネスの勢いは衰えないでしょう。
 他の例で考えてみればよくわかります。
 もう私たちはAmazonや楽天のない生活はできなくなっています。Net­ixやAmazonPrimeビデオを解約して、再びTSUTAYAにDVDやCDを借りに行く生活はできないでしょう。同様にLINEやFacebookメッセンジャーを使わずにEメールや電話だけのコミュニケーションもできなくなっています。
 そもそも、インターネットを使わない、スマートフォンを持たない生活はもはや現代人には不可能でしょう。
 つまり、コロナ禍に限らず、何かをきっかけに人は新しい〝良い経験〞を享受してしまうと、特に理由がない限りは継続してしまうものなのです。
 そう考えると飲食の実店舗もまた、かつてのような喧騒を取り戻せるかと言うと、正直難しいと私は考えています。
 時短制限もなく通常営業ができるようになった都内の居酒屋は、賑わっているところも多いです。とはいえ、コロナ禍前のような二次会に流れるお客様は減りました。
 社会が大きく変わり、市場が大きく変わった世界は、言ってみれば多くの消費者が変化によるストレスに慣れ、むしろ「これでもいいじゃないか」と気づいてしまった世界と言い換えることができます。
 飲み会に行かなくてもいい、外食をしなくてもいい、深夜までバカ騒ぎしなくてもいい、リモートメインで毎日オフィスに行かなくてもいい、化粧をしなくてもいい、外食じゃなく自炊か宅配でいい、実店舗にまでわざわざ行かなくてもいい……。
 コロナ禍によって起きたこれらの変化は、形を変えながら多少はビフォーコロナに戻るとは思いますが、完全に元に戻ることはないでしょう。
 ですから、私の答えは「NO」となるのです。

客数ビジネスから客単価ビジネスへの戦略転換

 そんな変化が起きた市場の中で、私たちは新しいビジネスモデルを考えていかなければいけません。社会の変化を悲観的に見ているだけでは、そこで思考は止まります。見方を変えて、変化を正しくキャッチできさえすれば、新しいビジネスの兆しも見えるからです。
 なぜなら、先述のとおり「人はお金を使うから」です。
「消費傾向の変化=お金の使い道が変わった」というだけなのです。「新しいお金の使い道ができた」と言い換えてもいいでしょう。
 これを実店舗で考えてみると、売上=客数×客単価の「客数」が落ち込むという前提では、「これまでのやり方で獲得する客数」だけではビジネスは伸びないことになります。
 となると、考えるべきなのは「客単価」です。
「そんなこと言ったって、集客ができなければ客単価を上げようがないじゃないか」
 そのような反論もあるかもしれません。
 確かに集客は別途考えなくてはならない問題ですが、消費傾向が今までよりも多様化してしまっています。変化した消費傾向に対応できない商品のまま集客方法だけを工夫したところで、今までどおりに売上を作るのはそもそも難しいでしょう。
 優先すべきは、新しく客単価を稼げる商品を考えていくことです。
 そのためには、普通の商品では勝負できません。
 アフターコロナの市場では、注目を集めるもの、引きのあるもの、普及品より少し高品質な商品で客単価を上げ、商品を武器に集客する方式で売上を上げていく必要があります。そのための戦略が必要です。
 例えば、飲食店ではテイクアウトを実施した店が多数ありましたが、テイクアウト商品なると、どうしても価格を下げざるを得ません。なぜなら、競争相手が同じ飲食店ではなくコンビニになるからです。
 コンビニに行けば、そこそこおいしいお弁当が500円くらいで売られています。
 ですが、飲食店がクオリティを維持したまま500円で売ろうと思うと、かなりの自助努力が必要になります。容器代1つとっても50〜80円くらいになりますから、商品そのものの価格は400円台にしなければいけません。
 仮に、その価格で出せたとしてもそれほど利益率は期待できません。
 だからこそ、普及品よりもいいものを作り、ライバルに負けない「これだ!」というキラーポイントがある商品を打ち出す必要があるのです。
 最近は、コンビニでさえもPB商品(自社ブランド商品)でちょっとリッチな弁当やパンやスイーツを出しています。安くてボリューミーな商品から、価格は上がるけど高級感のある商品への転換││これは客単価を上げるための基本戦略です。
 ライバルのコンビニがそのような戦略をとっているのに、飲食店側が変わらないでいたら、その差は開く一方でしょう。使われなかったテイクアウト容器がいつまでもバックヤードにうず高く積み上げられたままになってしまいます。
 このような事態を避けるためにも、客単価を上げる戦略を改めて考案する必要があるのです。

【著者プロフィール】
石川潤治(いしかわ・じゅんじ)

株式会社ジェイ・イシカワ 代表取締役社長。事業創出・業務改革コンサルタント。
1970年大阪府大阪市生まれ。学生時代に30種のアルバイトを経験。当時より、起業の夢を抱く。大学時代から起業したり会社員になったりを繰り返し、1999年、PCCW JAPAN(香港・通信事業者)に入社。ブロードバンド事業の創出をする新規事業開発室長を務める。2001年、株式会社ジェイ・イシカワを創業。自身が持つ特許(2002-320045)リース・管理および、事業創出コンサルの道を歩み始める。2002年、ワーナー・ブラザース・ジャパン(米国・映画メジャー)入社。部門のDX化を軸に業務改革を推し進め、クリエイティブシニアマネージャーを務める。2011年、株式会社ワールド(国内・アパレル)入社。業務改革推進本部・物流統括部長を務める。2016年、長年に渡るコンサルティングで軸としてきた「一点突破による売れない時代の売れる戦略」を具現化すべく、ボロネーゼ専門店ブランド「ビゴリ」を立ち上げ。ボロネーゼという単一メニューだけのフランチャイズで30店舗もの加盟店を有し、各大手メディアでも取り上げられる。現在、「中途半端を捨て一点突破」「ファンダムに不況なし」などをモットーに、40社を超えるさまざまな業界のコンサルティングを行なう傍らで、個人の方々に独立や転職を有利に進める実践的手法の勉強会を定期的に開催。社業理念は「スピード、柔軟性、一点突破力を発揮し、小よく大を制す」。

いかがでしたか?
 
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