ゆふぐれの女鳥羽 (短歌)
枕辺にいまも残りし信濃なる
槻井泉にて汲みし湧き水
ゆふぐれの女鳥羽の畔
背のたかき草にひとむら風の渡れる
この先は伊勢町だよと君が言ふ
まるで知らない街でないやう
わが書きしひとの屋敷のある土地を
通りて彼のいない虚しさ
小説のなかのひとらが
生きてゐるやうに語ってくれる夫よ
このあいだ夫の誕生日に、彼に贈った短歌でした。
あゝ野麦峠の作者の、『松本連隊の最後』を昨晩一気に読んだ。すごく読ませる戦記。登場する兵士たちのひとりひとりに、括弧書きでその故郷の名が出てくるのが、すごく力強く、現実味をもって迫った。それが松本近辺の、わたしにも思い浮かぶような地名だったので。