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本の虫12カ月 4月
↓先月の分
Dear me
本屋に寄るたびに
積ん読を増やすのを、
当分止めてくださると
助かります。
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カズオイシグロ
*
イシグロ作品三冊目。
「日の名残り」は、ちょっと曲がりくねっていて、
読みづらかった。二度読んだけど、「おだまり、ローズ」で知っていたアスター子爵夫妻だとかと
歴史的答え合わせみたいな読み方をしてしまった。
「浮世の画家」は、ふしぎな気味の悪いかんじ。
日本ついてなのに、日本の感覚ではないような、
居心地のわるい感じがした。
(意図されたものなのだろうけど)
それでこの「わたしたちが孤児」、
これがいちばん面白く読めました。
とっても読まされた。
文化の狭間に育つという題材、
イシグロさんらしい。
面白かった。
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カルロ・レーヴィ
*
かなしい嘆きの歌みたいな、民衆の暮らし。
無知と貧困、なにより精神の貧困。
「ある暮らしが悪いと分かっていても、
それから抜け出せるひとは英雄だけである」
というようなことばを、どこで読んだかいま思い出せない、チェーホフのシベリアの旅、
と書いてあった気がする。
*
留まることと、出ていくことについて
考えている。ほんとうは、どこに住むかなど
関わりないはずだのに。どこにいても、
真理につうじる狭い門を潜ることが
できるはずだ。それでもわたしが
今あるのは、前の世代が封建的な社会から
旅立って、自由な生活を作ってくれたからで、
わたしはその恩恵を大いに受けている。
*
イタリア南部の貧しい村の生活。
どこか日本の古い農村にも通じるような。
劇をとおして民衆が自らを表現する手法は、
たとえば信州の村に伝わる歌舞伎だとかを思う。
*
「わたしは貧しくあるすべも、
裕福であるすべも知っている」
とパウロが言った。
わたしはその言葉が好き。
貧しくあっても、精神は貧困に陥らないこと。
裕福であっても、成金のような精神に
成り下がらないこと。
パウロの精神は、物質的なものから離れた、
もっと上の部分にアイデンティティを
見いだしていたのだ。
*
それからどうでもいいこと。
この著者の恋人の、
パオラ・レーヴィ(オリヴェッティ) って、
ナタリア・ギンズブルグのお姉さんですか?
なんかそんなことが書いてあった気もしなくないので、時間が出来たら、「ある家族の会話」を
見返してみようとおもう。
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山川菊栄
*
なんどもなんども繰り返し読んでいる本!
幕末の水戸藩の武家の女性たちについて。
菊栄さんの聞き書きシリーズ大好き。
「わが住む村」は、義母の地元周辺だったため、
読んでみて、と押し付けて、あれ返ってきたっけ。
お義母さん、返してない本返すので、
あれまだ家にあったらください。
*
今回面白さを見いだしたのは、
日本が開国して関税自主権を失って、
どんどん産業が力を失っていった過程について、
女性たちの目線で、とても自然に書いてあったこと。綿花を育てて、糸を紡いで、という行為が、あっというまに女性たちから去っていった。
菊栄さんはもちろんそれの時代的、政治的背景を記して、そして手仕事の、オーラルヒストリーの歴史といっしょに、すうっと分かる文章で書いてくれる。菊栄さんの歴史は、色があって、匂いと形があって、女のひとの目線で、だからわたしには分かりやすい。あのタイトルだけで引いてしまいそうな、「幕末の水戸藩」でさえ、読み通すことができたくらい。
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高橋杉雄
*
正直、難しかった。
冗文や遊びがない。教科書みたいな文章。
題名はこうであるが、内容は軍事学初心者講座。
いまこのくらいは知っておいてください、
国民のみなさん、みたいな内容。
オオカミ少佐のYouTubeのおかげで、
すこしわかった。
ごめんなさい、
バカはYouTubeで学習しときます。
後書きがいちばんすっと入る良い文章だった。
*
一時期、高橋杉雄と小泉悠という名前の
ニュース解説をわくわくして見ていた。
このふたりの組み合わせは鉄板だった。
高橋さんは小学生のときにクラウゼヴィッツの
「戦争論」を読んでいたという謎の秀才なので、
こういう文章になるのかもしれない。
でもこのタイトルで、わたしたちが
教えられてきた「憲法九条」と、
現実的な国際政治や軍備との葛藤みたいなのを
書いてくれたら良かったのになあ。
小泉悠さんは、ご両親は平和運動をされているのに、じぶんは軍事学者になってしまった葛藤を
どこかで書いていた気がする。
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エリザベス・スパイアーズ
*
エミリの詩を用いた、
絵本のようなみじかい寓話。
エミリをじぶんの友だちのように
感ずるのは、傲慢でしょうか。
いいえ、どう思われようと、
エミリはわたしの友だちなのです。
わたしは感じ方の近しい友だちを
ほんの少しだけ持っている。
生きている友だちと、
本で知っている友だち。
だから、わたしはとても幸せ。
なんて恵まれているんでしょう。
*
四歳の息子に読み聞かせたら、
とても気に入ってくれて、
もう二度読んだ。
「こんなにおもしろい本だとは
おもわなかったよ!」
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ヴァージニア・ウルフ
*
子どもが遊び終えるのを待つ時間。
リュックには必ず本を入れておかなきゃ。
ウルフはなかなか良い。
どこから読んでもかまわないし、
さっと入り込めて、さっと出てこれる。
そして、なぜかそういう時間の方が、
じっくりと味わえる。
子育てに忙しいラムジー夫人は、
たいへん共感できる人物でもある。
*
キッズコーナー近くの椅子に座って、
ひとりで岩波文庫を読んでる
変な母親がいたら、
それ、わたしかもしれません。
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ダヴィッド・フェンキノス
*
詩のように、行分けの文体で描かれる、
アウシュヴィッツで殺された26歳の画家、
シャルロッテ・ザルモンのものがたり。
*
すごい本だった。
けれどもし精神的に不安定なものを
感じているひとがいるなら、
この本は薦めない。
シャルロッテの周囲には
自殺者がたくさんいて、
シャルロッテ自身も、
もしアウシュヴィッツで殺されなければ
どうなっていたかわからなかった。
そういった悪い霊は、伝染するものだから。
たしかにすごい本だった。
彼女をアンネ・フランクに例えるひともいる。
わたしはなんとなく、
パウラ・モーターゾーン・ベッカーを
思い出した。
読みながら、
気分はとてつもなく重い、重い。
疲れちゃった。
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ドストエフスキー
*
上巻は二年くらい放置してやっと読み終えた。
中巻は一週間で読了。
というのも、あのとてつもなく退屈だった上巻を
読んでもいないのに、母が中巻から読みだして、
わたしが独占できなかったからだ。
母曰く「(退屈な上巻なんて) 後から読み返せばいいでしょ」ずるい、なんてずるいんだ。
*
ロシア人、すごいな、破滅的。
最後は刑事物になる。
推理小説はほとんど読んだことがないので
(東野圭吾を一二冊と、アガサクリスティを
少ししか経験がない)
すこし戸惑う。読み方がわからん。
*
ミーチャが裸にされて戸惑うシーン、
これはキリストを象徴しているのか。
聖書との暗喩はなんとなく読み解ける。
きっとミーチャは無実なのでしょう。
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ドストエフスキー
*
「戦争と平和を読み通したで賞」
は十代のときに獲得した。
そしていま、
「カラマーゾフを読み通したで賞」
を三十手前で得た。
あともうひとつ、
「失われた時を求めてを読み通したで賞」
というのも存在するんだけど、
それはいつになるか分からない。
この人生では無理そう。
*
いや、さすがのカラマーゾフでした。
ここから怒涛のドストエフスキー祭りでも
始まるか、とか思いつ、
なぜかジェーン・オースティンのエマを
手に取っていた。
はっはっは。
*
感想がめっちゃぺらぺらなのは、
読み終わったのは昼なのに、
感想を深夜に書いているからだよ。
(印象の持続時間の短さよ)
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小泉悠
*
このひとなら、米原万里と高野秀行
(あと何でしょう、沢野ひとしや椎名誠?)
を足して割ったみたいな、きっとおもしろい
エッセイを書けるとおもう。
だってあのTwitterだもの。
だから、あれ、と思った。
途中で筆が乗ってきたかな、とも思ったけど。
けれど実際のところ、これは語り下ろしの
手法で、彼の語ったことを編集者が
文章にして、それに手をいれたらしい。
まあ、あれだけお忙しいのですものね。
それだけ、タイムリーな需要があったわけだ。
*
ぜひ、いつかもっとゆっくりと書けるような
時間がやってきたら、渾身のエッセイを書いて
いただきたい。このひとが、じぶんでも
良し、と思えるようなエッセイを読んでみたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1713609598651-iTnd381EXA.jpg?width=1200)
ナタリア・ギンズブルグ
*
一冊一冊、導かれて読むような本がある。
星を繋ぐみたいに、生きながら考えていることを
そのときそのときに支え、示唆し、
導いてくれるような本が。
*
幸田文に似ている、と思ったのだけど、
ギンズブルグにそう感じたひと、
他にいらっしゃいませんか。
お金の使い方、なんてところは、
ああ、文さんもそんなこと書いてなかった
かしら、と思った。それだけでない、
なにか、女性としての在り方。
*
ある年齢から、母のスカートの後ろを離れて、
じぶんでどんな女性になるかを決めなくては
いけなくなった時から、
わたしはいつも、何かじぶんに近いものがあり、
そしてわたしより遠い場所にいるひと
を探している。 傾倒したいわけじゃない。
ただ、こんなふうに感じてもいいのよ、
こういうふうに進んでもいいのよ、
と頷いて欲しいのだ。
そして背中を押して欲しい。
同じ人間であるからには、
わたしが感じるものを感じて
それを言葉にしたひとがきっといる。
そんなひとをいつも本で探してる。
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*
鎌倉殿を見ていたころから気になってて……。
このあいだハイキングに行った近くの寺に、
源実朝が参拝にきた、と書いてあって、
へえ、きっと吾妻鏡に書いてあるんだ、
と借りてきました。うん、見つけた。
吾妻鏡、三浦半島に住むわたしにとっては、
古典というより郷土史料だ。
ああ、あそこね、と分かっちゃう。
あとあと、遠い先祖だろうひとの
名前を見つけた。泉親平の乱に加担して、
捕まっていた……。信濃の国でしたものね。
そしてわたしの住む場所を
所領にしていた武士の名も見つけた。
同時に金塊和歌集も読んでいる。
やっぱり同じ風景をみて詠んでいる歌だからか、
なんだか好き。偉大な歌人なのもある、
でも、地元の有名人っていう気がすごくする。
![](https://assets.st-note.com/img/1714220053071-4pxkSAUokQ.jpg?width=1200)
淵田美津雄自著伝
*
ねえ、これはすごい本ですよ。
こんなに大胆に、まっすぐに、
日本人がキリストについて語るなんて。
わたしがクリスチャンじゃなかったとしても、
この本を読んだら、聖書を読んでみようと
思うかもしれない。
わたしも、こんな本を書いてみたいな。
心にふれる、力強いことば。
誰かに、キリストを欲しがらせるような本を。
*
キャプテン・フチダは決して卑屈ではない。
卑屈なGHQ史観に真っ向から反対している。
とても優れた海軍軍人で、
物の見方はとても開けている。
頭のよいひと。
それなのに、キリストについては
頭がいかれてしまっているのが良い。
パウロもそんなひとだったでしょう。
何かひとつのことを究めたひとが、
突然方向転換してキリストにひた走る。
荒削りなのは、力があふれているから。
*
軍人として到達した死生観と、
キリストに倣うものとしての死生観に
共通点がある、という話が面白かった。
ちょうど、わたしも似たことを考えていたから。
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コテンラジオ
*
家事をするときに、なにか小難しいものを
聞いていないと落ち着かない。
いまは宗教改革。
なぜかカノッサの屈辱辺りを、
なんどか本で浚って理解しなおしたところ
だったので、いろいろな知識が
繋がっていく感覚がする。
脳みそがきしきしするくらいには、
なにかを考えさせられているらしいんだけど、
まだそれは形になっていない。
ただこうやって考えていることが好き。
それはわたしがわたしらしくあることだ。