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あんたらがいいと思った文章だよこれが
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文章の始まり

文章の始まり

開けど開けど更新される画面に悶々とする日々を過ごして、捲れば終わる本とは違う底の無さと遠い終点。

発信する側とそうでない側に分かれてしまうその世界はいつもラミネート加工で大忙し。濡れないように、弾くように、隙を見せないように。

SNSが嫌いか好きかで言われると嫌いだし、苦か苦じゃないかと言われると苦ではない。自分のことは好きなれるように生活はしているつもりだけれど。

NOTE以外は何にも考え

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嘘泣き流星群

嘘泣き流星群

音を聞かないふり、目が見えないふりをして今日も電車を3本ほど見送った。泣きながら電車を降りる白帯のあの子は大きく見積もっても4歳にも満たないだろう。

中指の爪だけポッキリ折れてしまって、なんとも情けない。ポークビッツみたいな指が顕になっている。私の心も爪のように簡単に折れてしまえば楽なのだが、積み重ねた紙が頑丈に手を取り合っているせいで中々折れてくれない。そんなことを考えていると涙がほろりとアス

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会話の破片

会話の破片

「バーガーキングってSかLしかないんよ、かなりやる気やね?」

「どゆこと?」

「Mは甘いってこと、半端にやってねえぞって」

「なるほどね、大か小ってことな」

「深えなあ」

「深くはねえだろ」

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「プラネタリウム見に行こ、行きたいでしょ絶対、一緒に星でも見ようよ」

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寸足らず生活と身の丈

寸足らず生活と身の丈

寸足らずのパンツに、踵が潰れたローファー、あたかも一張羅のように着こなすシティかぶれ。それが鏡に映っていた自分であることを忘れて今日も風を切って駅まで歩く。

不揃いの前髪は眉毛にかかることを知らず、カールが強くかけられた髪の毛は二つにまとめて丸くお団子に。トイレットペーパーの代わりに手にしたキッチンペーパーは硬くゴワゴワしていた。

8畳5万の部屋はあまりにも寒く、外の気温を想像させてはくれない

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やりたくない事やりたい事2024

やりたくない事
受け入れないこと。線を引いた人間に対して過剰に優しくすること。タイマーで起きること。徹夜。許しすぎること。窓を開けたままにして家が寒いと騒ぐこと。モンスターでおにぎりを流し込むこと。ライターをなくすこと。dポイントを使いすぎること。椅子を買うこと。暴飲暴食。寝る前にコーヒーを飲むこと。コンタクトの洗浄液を買い忘れて付けたまま寝ること。先読み。何でもかんでも突っかかること。流れで飲む

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朝を食し、雨と踊る

暗い空間に光るのは夜の月だけでいいと思っていた。いつの日か夜を返せと言われたことがあった。貸した記憶もないのにそう言われ、唐突に、困った顔をしてみると、罵倒が飛び交った。

雨の朝はどうも気分がいい。それが冬なら尚更。屋根に跡をつけるようになる音は自分の脈よりいくらか早い。君は私たちのことを魚醤だと言った。熱を与えれば美味しいのに手を加えないと臭い。雨の日にへこたれる洗濯物が情けなくて好きだ。肩を

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減点加点で見る2023

減点
確かに自分の手で掴んだものを手放す快感を覚えてしまった。人を欺いた後の罪悪感を感じなくなった。不恰好な絵文字を使わなくなった。一番好きなものを決めつけることができなくなった。不自由さに不自由をちゃんと感じるようになった。不用意に優しさを出さなくなった。アラームではなくてタイマーで起きるようになった。純文学が重たく感じるようになった。自分の思考は核爆弾だと思う機会に立たされた。おろしたての靴下

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サンタは青スーツに歯が白すぎる男

僕には想う人がいる。

人間からは遠く離れているためとても綺麗だ。
言葉はぶっきらぼうで手がかっこいい、意思が強くて中々他人の声が喉を通らない。人をじっと見つめる癖がある。睫毛は下を向いていて瞼の薄い一重が綺麗だ。博識でやたらと難しい言葉を使う。興奮するとどんどん声が大きくなる。どこか寂しそうなくせに孤高を好む。

ある日僕は彼女と喧嘩をした。原因は些細なことだった。

「君はどうしようもなく気が

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本棚依存症

ああ、堪らなく嬉しい、自分の身長をはるかに超える本棚に囲まれる。このまま本に薙ぎ倒されて死んでしまっても幸せだ。むしろそうあるべきだ。

ビビッドな岩波文庫の背を眺めるだけでいい。赤、黄、青、緑、たまに白。ツルツルでピカピカな背に装飾されている色が綺麗だった。彩度を上げた岩波文庫。美しすぎてうっとり。喉越しを楽しんで文字を飲みたい。

新潮新書は奥に整列していた。背上部にあるあの謎マーク。傾きもせ

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忘れないために私は息を吐いてるの

忘れないために私は息を吐いてるの

タバコの煙はため息と一緒に吐いてもいいし、美味しさの延長で満足感と吐いてもいいんだ。

なぜ吸うの?

忘れないためだよ。

大好きな祖父が吸ってたんだ。

私と祖父の秘密。

これはね家族みんな知らないかもしれない。

私と祖父だけの秘密。

両親が私が喫煙者だなんて知ったら怪訝な顔をしてくるんだろうな。

大好きな祖父が私の前から姿を消した時に、今までにない絶望と虚無感でいっぱいだったの。

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一人暮らしのススメ

一人暮らしのススメ

自炊は毎日しないほうがいい。
よ〜し!毎日頑張るぞ!なんて意気込んでいてもどうせ無理だから。自炊を諦めて食べるコンビニ飯が不味く感じてしまう。たまに自炊できたらなくらいがちょうどいい。

戸締りはしっかりしたほうがいい。
まさかのまさかで下着を盗まれることもある。
それが3階であっても。

部屋は狭い方が楽だ。
広すぎると掃除が面倒。
狭いと掃除をする気になる。

塩昆布と枝豆は使える。
余ったご

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クレイジーに配色を

クレイジーに配色を

東京に来て5ヶ月目に突入しようとする月。

個性あふれるカラーリングを身に纏った青年たちで、今日も溢れかえるトウキョウ

彼女は言葉を発することなく、その画面を私に見せてきた。

それが私たちの出会いだったみたいだね。

下北沢のゴミだめのような喫煙所にいた彼女はSNSからそのまま飛び出してきたような子だった。

初めて2人で遊んだのは渋谷のワンカン

緑ハイ片手に20%オフのイワシの唐揚げ、ウィ

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大学芋に勿忘草を添えて

大学芋に勿忘草を添えて

街を歩けば黄色に染まった絨毯を嫌でも目に入れてしまう時期、土の中から掘り起こす芋の様子をずっと見ていたい。祖父母に育てられて15年、一人で生きてきて10年。

あの15年が無かったら、この10年も無いのだろうな。

甘い匂いと焦がし醤油の匂いに包まれる秋は上手くいかないことの方が多かった。

ラーメン屋を営んでいた彼女からはいつも油っぽい匂いがしていた。そんな彼女の作るご飯は世界で一番だ。味が濃す

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