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「常勝軍団のプリンシプル」岩出雅之著
この話は2018年まで大学ラグビー選手権9連覇という偉業を達成した帝京大学監督岩出雅之さんの著書「常勝軍団のプリンシプル」という、僕が2019年に読んだものの中で最も感化された本の内容だ。
この本のおもしろいのは、ラグビーが興味がない人でも勝負事にまつわる物語として構成が練られており、そして変化の激しい現代に生きる考え方としてかつてのスポーツ界にはびこる古い考えと比較しながら学び楽しむことができる。会社組織のビジネスマンやチームに属するスポーツ選手や学生は読むべき本だと思う。
大学の在学期間は4年間だから、定期的に選手が入れ替わる中で9年も連続で勝ち続けることは、僕自身本気で競技スポーツに取り組んできたからこそ、その難しさがよくわかる。並大抵の考え方では成しえないことだ。
僕がこの本に感銘を受けてからは、大学ラグビーに興味を持ち帝京大学を応援していたが、その後は残念ながら優勝を逃し9連覇で途絶えてしまった。でも、岩出さんの組織論は普遍的だと思う。
岩出さんの組織論
勝ち続ける組織の作り方
1)勝ち続ける組織とは、「メンバー一人ひとりが自律的に考え、行動し、仲間と助け合いながら、自ら学習、成長する集団」
2)まずはトップやリーダーが変わらなければいけない
3)メンバーの「自律」を促す心のマネジメントに精力的に取り組む
4)「自律型組織」の究極的な目的は、メンバーの成長とイノベーションを生み出す能力の開発
5)VUCAの世界を生き抜くため、「適応パフォーマンス」を発揮できる能力を身に付ける
自らの能力を100%発揮する方法
6)普段の練習、生活を通じて、フロー状態に入る技術を身に付ける
7)最強のモチベーションは「お金」ではなく「楽しさ」
僕は人の顔色をうかがいながら育ってきたから、周りの人が何を考えているかなどは興味が絶えない。岩出さんは帝京大学でスポーツ心理学を教える教授である。心理学的な考察とアプローチが僕には刺さった。
個人に求められるもの
モチベーション3.0
作家のダニエル・ピンクは、人がどんな動機によって行動するかをパソコンの基本ソフト(OS)になぞらえこう説明する。
モチベーション1.0)食欲や生命の安全など生理的欲求が人間の行動の動機となる
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モチベーション2.0)アメとムチ方式で報酬が欲しい(罰を避けたい)からする
⇓
モチベーション3.0)外的な報酬よりも自分の内部から生じた欲求をエネルギー源とし、やっていること自体が楽しいからする
帝京大学の組織文化作りもモチベーション2.0から3.0へのバージョンアップに照らして考えると共通点が多いのだそうだ。
VUCAの時代
Volatitity(変動)Uncertainty(不確実)Complexity(複雑)Ambiguity(曖昧)これらの頭文字をとった予測困難な時代を意味する言葉があるように、成熟社会の中ではいかにスピーディに、不測の事態に対応していくかが問われている。そして、コロナがそれを実践的に教えてくれている。
このような中でモチベーション3.0いわゆる内発的な動機が重要である。
フロー状態
フローというのは、ハンガリー出身の心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱する「集中して何かに取り組み、あっという間に時間が過ぎてしまった」その時の感覚のことで、フローに入ることによって人は充実感や楽しさ、生きることの幸せを感じることができる。としている。フロー状態は誰もが経験していると思う。フローの特徴として、チクセントミハイは次の7つをあげている。
1)高度に集中し、没頭している
2)現実離れした忘我の感覚がある
3)目標が明確で、何をどうすべきか心得ている
4)タスクの難易度が適度で、やれる自信がある
5)平静な心。心配事がなく、成長を実感できている
6)時間の感覚を忘れる
7)活動自体が報酬になる内発的動機が原動力
僕自身のフロー状態は、トレーナーとして運動指導中における相手との心のやりとり(自分の経験を踏まえたトレーニング指導や、理論的にうまく説明できたことに相手が心底納得してくれること、僕自身が相手の人生哲学や話に学びを得られているとき、会話やコミュニケーションの節々に互いのリスペクトを感じられるときなど)それは運動指導に関わらず、自分の信念や考えに共感してもらえている時はずっとそれを話し続けられるし、自分の専門分野や興味のある事柄において深い学びを得られている時、細かくても新しいチャレンジをしてそれがうまくいって好循環に入っている時など、たくさんある。
自分自身にとってのフロー状態、内発的動機が何なのかというのは普段から個人個人が目を向けていくべきところだと思った。
自分の組織
そして僕がリーダーを務める10名ほどの組織でスタッフの教育に意識していることは大きく3つある。
〇どこに行っても通用し重宝される人材
フィットネス業界に入ってくるのは、基本的に自分の技術で食って行けるようにしていくということは大なり小なりもっている。その上では、マインドが重要だと考えている。フィットネストレーナーは、技術者である前にサービス業の人間だ。その上で技術を習得していくことが求められる。
身の回りの人に気配りと心配りをかけられる前提で、目の前のクライアントのニーズと心を満たしていく。その場その場で他のトレーナーにもクライアントにも頼りにされるようになってほしい。
そして万が一この仕事が無くなっても、または他の業界でも生きていく人間となるように、お節介ながらもそう考え、勝手に自己成長していくように適度に役割やタスクを与え、やはり心遣いについて伝え、ともに考えるようにしている。
〇内発的な動機
彼、彼女たちのもっと細かい内発的動機、なぜこの業界か、なぜこの会社か、この仕事のどこに魅力を感じるのか、どのようにしたら自然と楽しみながらイキイキと仕事をすることができるのか。
その根底にある、家族構成や価値観、考え方を汲み取る努力をしていかなければならない。悩んでいると思ったスタッフがいたら時間をとって話すようにしている。
〇サービスレベル
既存のクライアントに失礼のないように、混乱がないように意識している。クライアントも新人に対しては大目に見てくれているが、小さな不満が積み重なっていかないように、顧客満足度を下げないようにかなり意識を研いでいる。そこで自分の信頼も失ってしまいかねないだけでなく、これまでの経験上、目に見えにくい顧客満足度低下が顧客流出につながっていたのは明らかだった。
まとめ
いろんな業態があると思うが、現場に活気がなかったり、ひとりひとりのクライアントを満足させることができないと、結果チームとしても良好な結果を得ることは難しい。
この本からは、VUCAの時代を生き抜くため、どんな環境でも適応できるような自律した個人を、自分自身にも、そして組織のひとりひとりにに当てはめ、常に勝ち続けられる組織をめざしていきたい
今日もご覧いただきありがとうございました。
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