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Photo by
arcturus32
【義のために遊ぶ】(2024/11月ver)
義のために遊ぶ。
煉獄の炎の中で我が身を弄ぶかの如く
極寒の風に晒されながら
琥珀の酒で身体を火達磨にして
熱いのか寒いのかもわからぬまま
漠然とした不安に視界は微睡む。
ただ……
ぼんやりと白く微笑む月は優しく香り
しかめ面のこの頬を、じんわりと緩ませた。
今もきみは泣いているのだろうか。
今はきみは笑えているのだろうか。
月はいつまで優しく微笑み
夜風はいつまで寂しく香り続けるのだろうか。
公園の噴水では、どぽどぽと水が膨らみ
その波紋の最果てで、鴉の羽が揺れていた。
ゆらっ!ゆらっ!!
主人から逸れた黒い羽は、
必死で水面にしがみつく。
あちらこちらで蛙は戯けて
ヴァイオリンをかき鳴らす。
誰かこの世界を一緒に眺めよう。
この世界で遊ぼうじゃないか。
幻想は現実を殺せない。
しかし幻想は時に現実を呑み込む。
“ここじゃないどこか”はここにある。
熱く激しく
寂しく痛く
苦しみの中で
僕達はアンドロギュヌスを懐かしみ、
生活の全てを投げ捨てたくてたまらない。
遊ぼう。
義のために。
遊ぼう。
激痛の体を抱きしめながら。
遊ぼう。
精神の尊厳を、悲痛の生産に見せつけながら。