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寿命は腎臓次第

今回は、牧田善二先生の著書「医者が教える最強の解毒術」という
本の内容を紹介します。
本書は、40年間医療の現場に立ち、35年間腎臓の研究を続けて、
患者さんたちの腎臓を治してきた著者が
「あなたの腎臓は大丈夫ですか?」と、読者に警鐘を鳴らす一冊です。

著者は糖尿病専門医であり、アメリカのロックフェラー大学などに留学して
研究に没頭し、一流の医学誌に第一著者として
論文を掲載してきた人物です。
そんな著者が、近年は大変なことになっていると強い危機感を
抱いているのが、日本における慢性腎臓病患者(透析患者)の激増です。

皆さんは、慢性腎臓病というのを聞いたことがあるでしょうか?
現在日本には、気づかぬうちに腎臓を悪くして慢性腎臓病に
なってしまった人が、2,100万人もいるそうです。
にも関わらず、多くの医師はその脅威を知らず、健康診断でも
詳しく説明されることがありませんから、早期発見できずに
手遅れになっている人が多いのです。



ごく簡単な検査で前兆に気づくことはできるのですが、検査を受けずに
治療が遅れてしまうと腎臓は悲鳴を上げ、やがて人工透析を
しなければいけなくなってしまいます。

あなたの周りには、人工透析を受けている人はいませんか?
腎臓の状態が悪化してしまうと人工透析が必要になり、
一度透析を開始したら週に3回、1回あたり4時間以上の治療を死ぬまで
受け続けなければなりませんから、生活の質は激しく低下してしまいます。

一方で、きちんと検査を受けて早期に治療すれば、腎臓病は
確実に治せるのです。
早期発見により確実に治すことが出来るのに、それを知らずに
人工透析をしたり、命を落としてしまう人があまりに多く、
何とかこの現状を変えようという熱い思いをもって、
牧田先生は本書を執筆しています。

この本に書かれていることは、人生100年時代を健康に生きていきたい
全ての人にとって、将来のための有益な情報です。





100歳まで生きられるか?

皆さんは現在の延長線上に、無事に100歳がやって来ると
思っているでしょうか?

・・・・・・

皆さんの答えがどうであれ、著者は「今のままでは100歳は来ない」
言い切っています。
なかには、健康のために運動したり、食生活を考えたりして、
きちんと健康に気を遣っている人もいると思いますが、
そうした外から加える要素よりも遥かに大切なファクター(要因)が
あります。

それは、自分の体内で生成されている有害物質を体外へ排出する機能で、
この機能がどの程度働いているのかをしっかり見なければなりません。
そして、有害物質を体外へ排出するという大切な機能を
担ってくれているのが、今回のテーマである腎臓です。
腎臓が体に悪い物質をろ過して、尿として体外へ排出してくれて
いるからこそ、私たちは生命を維持できます。

・・・・・・ところが今は、働き盛りの世代を中心に腎臓が
壊れかけている人が激増しています。
自分は大丈夫だと思っているかもしれませんが、現在日本には腎臓を悪く
してしまった慢性腎臓病の人が2,100万人もいると推計されていますから、
自分だけは大丈夫と言えないほど慢性腎臓病患者は増えているのです。

腎臓には、老廃物をろ過するための大切な膜があり、その膜は
エアコン内部のフィルターのような働きをしています。
エアコンのフィルターが、手入れされることなく目詰まりしていれば
部屋中にカビや悪臭が循環してしまいますが、腎臓が壊れかけていれば
同じことが体内で起こり、体中に毒素や老廃物が広がってしまいます。

人生100年を見据えて充実した後半戦を目指したいのなら、
腎臓の解毒機能を少しでも高く維持することが必須です。
食事の重要性は多くの人が理解していますが、100年時代の健康管理は
それだけでは不十分で、老廃物や毒素をどう出すかということも
考えなければなりません。





慢性腎臓病の恐ろしさ

慢性腎臓病になってしまうと、それだけで死亡率は4倍にも
跳ね上がってしまいます。
私たちは、死亡原因上位のガンや心疾患などを心配していますが、
その裏では慢性腎臓病が大きな影響を及ぼしていることも少なくないので、
日本人の死亡原因である病気の背後には慢性腎臓病があると言えます。

実は、慢性腎臓病は年齢を重ねること自体がリスクになっていて、
50代以降に急激に発症率が増加しています。
ですから、100歳を見据えた人生の健康管理では、腎臓はとても大切な
臓器であると考えなければなりません。
腎臓のろ過機能が働かなくなると、体内に発生する有害物質や老廃物を
体外に出せなくなって、毒素が体中を巡ってしまいますから、
腎臓が悪くなってしまうと、最悪透析が必要になってしまいます。

人工透析は、頻繁に病院に通わなければならないという煩わしさ以外にも、
あまり知られていない重大なリスクがあります。
それは、透析を始めると血管が傷み、動脈硬化が進んでしまうと
いうことで、実際に透析を開始した患者さんが5年生きている割合は
60%ですから、40%の患者さんは5年生きられません。

だからこそ、人工透析になってしまわないような日常習慣が望まれます。





腎臓を守るためには

ここからは腎臓を守るために出来ることを紹介していくのですが、
血圧や血糖値をコントロールすべきであるとか、メタボを解消するなどの、
ごく一般的に知られていることは省略します。



・プロテインは摂取しない

一般の人が、良いつもりで積極的に摂取しているものの中で、
腎臓を悪くする物の代表格がプロテイン(人工的なタンパク質)です。
もちろん、タンパク質自体は体に必要な栄養素ですが、
パウダーやゼリー状などの人工的に作られたプロテインや
アミノ酸は話が別です。

胃からすぐ小腸へ進み、一気に吸収されて血液中に入り込んでしまうと、
過剰になったアミノ酸を尿として排泄しなければならなくなり、
腎臓は過酷な労働を強いられます。
その結果、腎機能は低下してしまいます。

タンパク質は生き物にとって大切な栄養素ですから、必要量を食事から
しっかり摂ることは大切なのですが、もし不足するなら
プロテインなどではなく、肉や魚や大豆を意識して食べれば良いのです。

「筋肉をつけるためには筋肉の材料となるタンパク質をきちんと
 摂取することが重要でしょう?」と思う人もいると思いますが、
運動するときにタンパク質の補給が必要だというのは、全くの嘘であると
いうことが研究によって既に判明しています。



アスリートやボディービルダーにとってプロテインは有効か?
というのは、長きに渡って議論が続けられてきた問題なのですが、
この議論はもう決着がついています。
1994年、イギリスのダンディー大学の研究者が、17ページにわたる膨大な
研究報告を行っていて、明らかに否定されているのです。

そこで行われた実験では、男女26人のボディービルダーに対して
体重1㎏あたり1.93g(60㎏の人なら115.8g)という高タンパク食を
毎日摂ってもらいました。
しかし、筋肉には何の良い効果も出なかったという結果でした。

また、イェール大学で行われた実験では、5か月間にわたって
アスリートに1日のタンパク質を55gに制限してもらったところ、
筋力は逆に35%も増加していたそうです。

こうした結果を見れば、運動するときにはタンパク質の補給が
必要だという意見は、正しくないことが分かるでしょう。
しかし、プロテインを売りたいメーカー側が、こういった正直なデータを
出すことはありません。

ですから、人工的に作られたタンパク質(アミノ酸)の摂取には、
デメリットが多いと覚えておいてください。



・AGEを溜めない

AGE(終末糖化産物)は腎臓に悪影響のある物質で、私たちの体を
老化させてしまうことも分かっています。
AGEは、日光に当たったりストレスを受けたりするなど、
いろいろな理由で作られるのですが、食べ物が一番大きな
原因となります。
また、もともとの食品中にも存在していて、それを高温で加熱すると
加速度的に増えるということが判っています。

魚にも肉にも米にも、あらゆる食品にAGEは含まれているのですが、
生の段階では少ししかありません。
それを蒸す、茹でる、焼く、炒める、揚げるなど、高温で加熱すれば
するほど増えていきますから、食材は蒸したり茹でたりなるべく低温で
調理して、AGEを発生させないようにすることを心掛けてください。



慢性腎臓病になると、AGEの影響であちこちに炎症が起きてしまいます。

腎臓には老廃物をろ過するための膜があると申し上げましたが、
AGEがその膜にくっついて炎症を起こすと小さな穴が開いてしまい、
本来は出てこない筈のタンパク質などの物質が尿に漏れ出てしまいます。



・意識的に休憩する

台湾で、慢性腎臓病と睡眠の関係について興味深い大規模な研究が
行われました。
20歳以上の慢性腎臓病ではない194,039人の睡眠時間を調べたところ、
慢性腎臓病の発症率は睡眠時間が6~8時間の人たちが
最も低いということが判ったそうです。

腎臓は、疲労してもよほどのことがない限り黙っていますから、
沈黙の臓器と言われています。
ですから、大切にするのなら休憩を与えてあげる必要があり、
その一番の要素が睡眠です。

働き盛りの人は、睡眠時間を削ってでも結果を出すために働くなど、
どうしても無理をしがちですが、それは最悪の行動です。
睡眠によって疲労が回復しなければ、体が慢性的な炎症に晒されます。

慢性の炎症は、腎臓を始めとしてあらゆる病気の原因となり、
睡眠が足りなければストレスも解消できません。
ストレスは、血流を悪くして血圧を上げてしまうので、
やはり腎臓に負担を掛けてしまいます。

ですから、休むのも仕事のうちと考えて、意識的に休憩しましょう。





検査が将来を左右する

慢性腎臓病に関しては、一般的な健康診断は役に立ちません。
腎機能の診断指標に血清クレアチニン値を用いているのなら、
役に立たないどころか異常なしと油断してしまい、逆効果なくらいです。

あなたの腎臓を守るために、まず初めにしなければいけないことは、
健康診断の結果表で血清クレアチニン値が正常だからといって、
自分の腎臓に異常がないとは限らないと認識することです。

慢性腎臓病で最も大切なのは、早く気付いて進行を止めることですから、
一般的な健康診断が頼りにならないとすれば、確実に分かる検査を
受けるしかありません。
そこで、自分の腎臓の状態を知るために最も良いのは、病院で
「尿アルブミン値」を調べてもらうことです。

しかし、多くの医師は知識不足のため、患者さんの尿アルブミン値を
調べるということをしていません。
そういう状況ならば、自分の健康を守るために
「尿アルブミン検査をしてほしい」とかかりつけの病院へ行って
相談してみてください。
どこのクリニックでも、血液や尿の検査は大手の検査会社に依頼するので、
尿アルブミン検査はどこのクリニックでも可能な筈です。

特に高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病で通院中の人は
慢性腎臓病になりやすいですから、年に1度は調べることをお勧めします。
さらに、尿アルブミン検査に比べて世界で共有されている
「eGFR」という指標を知ることも大切です。

万が一、あなたが尿アルブミン検査をしたいと言って、
「そんなものは調べる必要なんてない」と医師が答えたのなら、
その医師は腎臓に関しての知識が不足しています。

多くの医師は非常に多忙ですから、自分の専門領域意外に
詳しく勉強している余裕はありません。
ですから、その医師は知識が不足していると考えて、腎臓に関しては
別の病院へ行くか、かかりつけ病院の変更も考えなければなりません。



終わり

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