デレク・シヴァーズ著(2024)『エニシング・ユー・ウォント』東洋経済新報社
自分の好きなことが仕事に結びつくと色々と引き寄せるのかも…
色々と仕事上の提案や考察などを含め、できるだけシンプルに表現できると、それが自分も他者もしっかりと腹に落ちて、相互理解に繋がったり、仲間を増やしたり出来ることは多いですね。
書店でパラッとめくった時に「プロミュージシャン」「CDをオンライン販売」「独学でプログラミング」という言葉が飛び込んできて、CD販売はちょっと古そうだけど、プログラミングまで行き着くのが面白そうだと思い即購入。
全体として、一つのビジネスの立ち上げから運用、発展、退却までの一連の流れを短時間で経験者が語ってくれる点で、その工夫や失敗などのエピソードに引き込まれてしまう。
特に、ビジネスの要所要所で、思惑や先入観というものを誰しも思っているところがある。例えば、最初に出てくる「成功するための忍耐力」というのも、それは「改善と発明の繰り返し」と捉え、手応えが無い時の深追いをしないなど、あっさりと文章化されている。
また一旦客と接したら、当初変更を余儀なくされるという点もユニークで、多くの起業本はその辺をしっかりしてビジネスを始めよと解くけれど、著者は臨機応変に立ち回ることでビジネスを繋げるように、最初の一歩の考え方からしてあまり重たく感じず、あくまで趣味の延長的な気分からの起業のような雰囲気を漂わせてくれる。
出資を受けずにまずは立ち上げ、顧客のサービス向上とアイデアの続行、インディーズに特化したターゲット、広告より口コミ、計画やビジョンより自分のやりたいことの追求、セコくせずに寛大さや偉大さなど、一人起業で始める部分の著者のポリシーと言うべきことが軽く書かれているのも面白い。
会社の規模が大きくなると、クレーム対応や仲間の裏切り、意思決定、事業継続など、その時々の問題をどう理解し、どう対処していったのかが書かれている点は参考になる。後半には「任せても、放棄してはいけない」という、昨今の世の中で言えば、すべて丸投げして責任すらとらないようなことではいけないという点もしっかりと釘を刺している。個人的には大きな組織に居た時に、本当に責任を他人になすりつけ、上手くいったときだけしゃしゃり出てくる輩が多かったことをふと思い出してしまったり…
最終的に会社を慈善団体に寄付するという点も興味深く、短い時間でサクッと読めてスッキリした読後感を味わった次第。全体的に、お金儲けがメインではなく、むしろ自分の趣味や得意分野を伸ばしていく延長線上のビジネスの方が、長く寄り添えられるし、考え方の軸もブレにくいことが理解でき、好きだからこそ努力とは思わずプログラミングもマスターでき、のびのびとビジネスされたきたのだろうと感じた。