谷本真由美著(2022)『世界のニュースを日本人は何も知らない4』株式会社ワニブックス
まだまだ日本には正確に伝わってこない事実があることに気づく本
この本もKindle Unlimitedを利用して読みました。
この著者の本は、世界のニュースを特にイギリスから見たときに、どのように見えているのかを探る意味で、毎回興味ある視座を与えてくれます。
特に一番はじめの項目は、安倍元首相に関するもので、日本のメディアや左派系の論者は悪い印象を与えるように印象付けているけれど、著者の言うように近代で評価されている日本の首相の一人ではないかとわたしも思う。日本では不思議に世界でイニシアチブのあるリーダーをこき下ろすのが好きな人が多いようで、評価の視点が違うところは本書の通りと思われる。
またSDGsについても、わたしの考えと同じである。わたしは経営学を志している時期も長くあり、企業の社会的責任(CSR)までは、企業経営の中でも議論できる題材だと思うが、SDGsはちょっと違うと考えている。わたしの場合は以前渋谷の組織に勤務していたけど、東京都でも屈指の紙ゴミが多い組織で環境負荷が多いにも関わらず、表向きはSDGs推進等といって、ネガティブな部分は一切開示せず、世間に良いことばかり言っていた組織のあり方に疑問を持った次第だが、SDGsの観点からは、たとえ公害を巻き散らかそうとも、環境に優しいことを他に行っていれば、それを声高にアピールすることで、その組織にとってネガティブなことを多い被せることが出来るので、インチキな側面を持っている。日本と国連以外にSDGsに熱心な国は無いのは、その表裏をその他は理解しているからに他ならないからなのだろう。
本書を通じて、日本が不思議にロシアや中国に甘いことも、他の国々から見ると奇異に映るとのこと。また、外国人参政権についても、日本では他国が進んでいるのに、何故日本は認めず遅れているのかという論調だけど、そもそも日本以外で外国人参政権をホイホイ与えている国なんぞ無いのが実情なわけで、日本は井の中の蛙状態で、情報リテラシーの低い国民に、それとなく変な情報を流すと、みんなその情報になびいてしまうという情けない状態であることも本書から伺い知れる。
同様のことはジェンダーの平等に関する議論の際も、同じロジックになっているように思われる。また動物愛護に関しても、日本が思っていることとはかなり異なる実態を本書で得ることが出来るだろう。
興味を持った内容は、アメリカの社交辞令と本音に関する記述で、アメリカ人が何故フレンドリーな対応をするのか、本書を読むと納得感が得られるところが見えてくる。また、不法移民の就労に関しても、オーストラリアを始め、各国の厳しい対応がある中、日本はかなり甘すぎることも理解できる。この甘さは、今後日本の未来に影を落とすかも知れない。
なぜ日本人は役所に並ぶのがすきなのかという項目も、実に面白かった。昨今の利便性が謳われているときに、日本は未だ役所のDXが進んでいない。もう笑い事状態であるのを日本人が一番知らない。日本の就労環境、たとえば日本人は職場で人と接触したくないと思う社員が多いのに、日本の職場はプレゼンティズム、つまり「職場に物理的にいること」を強要するところが多く、知識産業や大学でさえも職場に来ることを求めるという記述。まさにわたしの前職がそうだった…
なぜ日本人はゴミを路上に直接出すのかという内容も、なかなか面白かった。健康診断は日本では当たり前に職場や学校が実施してくれて補助までしてくれるが、海外では自己責任や親の義務で、会社は何もしないことが多いなど、日本の企業で純粋培養的に過ごしている人にとっては理解しにくいことかも知れない。
日本以外にも北欧の気遣い方や、企業の情報システムへの投資などの話題も、なかなかに考えさせられる。なぜ日本は企業独自にカスタマイズするのかといった説明も納得できる記載だった。
今回も、日頃わたしたちが気づかない日本というものに気づきを与えるユニークな内容だった。このシリーズはまだまだ続きそうである。