下地寛也著(2024)『「しやすい」の作りかた』株式会社サンマーク出版
ひたすら「分ける」効用を解く本
病院での診察待ち時間に読みやすい本をチョイスして読んでみた。最初に4姉妹の部屋割り問題で、共用ゾーンを作ると散らかり、なくすと各々に整理整頓するという観点が面白く、効用というのが意外性もあるのかもと興味をそそれれ、一気に読んでしまった。本書の著者はコクヨに勤めておられ、本の所々でノートの話が散見される。
本書の中で面白いのは、「果物を取り分けて出すか、大皿で出すか」から「調整能力」の話が出現するなど、なかなかユニークである。「分けない」とワクワク感、「分ける」と安心感に繋がり、単純に分けるだけでも色々と出す方や出される方で面白い考察が出来るようです。
またご家庭での夫婦の家事の問題も目的やその内容を分けて考えると、各々に納得の行く考えに気づく事になり、相互理解が進む話も、「分ける」という概念がトラブル回避として利用できることを理解させてくれる。
人間は木彫印刷から活版印刷のように、文字を分けるという発想に至るまで700年かかったという記述も面白い。確かに発想としては「分ける」であるが、人々がそれに気づくのに長い年月を要している点は別途考察しても面白いかも知れない。
また、ピザの分割の話から、「限られた資源」を分ける3つの分配法として、必要原理、平等原理、公平原理を導き出し解説しているのも新鮮である。さらに人間は3つ程度に分けると、自分で取捨選択しようとするけれど、もっと多く分けると自分で判断するのをためらうことや面倒くさがる事があり、あえて3つにわけないで5つに分けてしまう方がよかったりすることもあると説いている点も興味深い。
その他、満員電車でできるだけ奥まで詰めて欲しい時にどうするかという問題で、ここでも「分ける」という概念でアイデアを展開されている。この辺の「分ける」の使い方は、是非本書をめくって確認してもらいたい。自分でも「分ける」という概念を色々なところに当てはめて考えてみると、意外と自分の想像していない観点からの解法を得るかも知れない。
色々と考えながら読むと、その「分ける」概念が様々なことに利用できることに気づける、そんな本だった。