2024年1月(前半)の読了本+感想
あらためて、あけましておめでとうございます!
正月は読書と執筆をしておりました。充実した時間でした。
今年も頑張ります!
2月には文学フリマ広島への出店も決定したので、近くの方はぜひ遊びにきてください〜!!
これからの予定
1) 1/17(水) 『読者たちの夜会』
日時:2024年1月17日(水)
場所:ネイキッドロフト横浜
OPEN 19:00 / START 19:30
会場チケット 前売り¥ 1,500/ 当日¥ 2,000 (※要1オーダー500円以上)
【出演】
カモシダせぶん
エル上田(エル・カブキ)
キャメル花形
あわよくばファビアン
彼方さとみ(変ホ長調)
ぜひ会いにきてください〜! 詳しくは↓↓
2) 2/23(金・祝)
第2回『第一芸人文芸部』公開配信 in 芳林堂書店 高田馬場店
こちら後述するstand.fmの公開配信となっています。
日時:2024年2月23日(金・祝)
開始:14:00(開場13:45)
場所:芳林堂書店高田馬場店8Fイベントホール
参加料無料です。ぜひ、お気軽にお越しください。
当日会場にて物販をいたします。
『第一芸人文芸部 創刊準備号』 またはゲストの著作をお買い上げ頂いた方にサイン会にご参加頂けます。お待ちしております!
3) 2/25(日) 『文学フリマ広島』
こちら第一芸人文芸部での遠征です。
と言っても、行くのは僕ひとり。広島の皆さま、中国地方の皆さま、ぜひ会いにきてください!
日時:2024年2月25日(日)
場所:広島県立広島産業会館 東展示館 第2・第3展示場
時間:11時〜16時
第一芸人文芸部の活動
1) stand.fm配信
毎週水曜日、22時からstand.fmの生配信で、今週読んだ本について語ったり、活動報告も行なっているので、ぜひ聴いてみてください!
次回(1/17日)の放送のテーマは『正月に読んだ本』
僕は須藤古都離さんの『ゴリラ裁判の日』を紹介します!
2) Amazon Audible『本ノじかん』 配信中
番組のパーソナリティを担当させていただいております!豪華なゲストと本や創作について、めちゃくちゃ語っているのでぜひ!
また番組では『クチヅタエ』という企画で、バイク川崎バイク(BKB)、しずる・村上、3時のヒロイン・福田、ニッポンの社長・辻、レインボー・ジャンボたかおのリレー小説を朗読連載中。
読んでくださっているのは、声優の白井悠介さんです!
登録30日間は無料なので、ぜひ聴いてください!
より詳しく、読書大学さんが書いてくれましたので、ぜひこちらも読んでみてください!
3) 文芸誌『第一芸人文芸部 創刊準備号』の発売店まとめ
2024年1月31日まで、ラフォーレ原宿『愛と狂気のマーケット』に出店しているので、原宿に予定のある方、ぜひゲットしてください!
そのほか、書店のまとめ↓↓
2024年1月前半に読んだ小説
1)『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 町田その子
『52ヘルツのクジラたち』を読んでから気になっていた町田その子さんのデビュー作。5本の連作短編集で、めちゃくちゃ面白く、完成度が高かった!
表題作でもある『チョコレートグラミー』は、ある特徴を持った魚のことで、その他の短編『カメルーンの青い魚』『波間に浮かぶイエロー』『溺れるスイミー』『海になる』でも、魚や海が主人公の心をあらわすモチーフとして使われている。魚小説。
———あらすじ———
『カメルーンの青い魚』
主人公・サキコがみたらし団子を食べて差し歯が取れるシーンから始まる。しかも、2本。その場に居合わせた啓太は「ちょう歯抜けじゃん、何やってんの!」と笑いだす。しかし差し歯になったのには理由があり、幼なじみであるりゅうちゃんの喧嘩を止めに入り、殴られてしまったのだった。
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
主人公・啓太。啓太はクラスメイトの晴子が「孵化した」のを見た、と言う。祖母の烈子と暮らしている晴子は、11年前、烈子が起こした事件のことでクラスで噂を立てられていた。新聞配達のアルバイトを始めた啓太は、そんな晴子の家にも配達に行くことになる。
『波間に浮かぶイエロー』
突然、自殺してしまったなき恋人への想いを抱いている沙世と、沙世の勤務先『ブルーリボン』という軽食屋のオーナーの芙美、かつて芙美と交わした約束を頼って店にやってきた環。3人がそれぞれ抱えるものとは。
『溺れるスイミー』
主人公は製菓会社の工場で働く唯子。父親は「離れたくなる衝動をどうすることもできない」人だった。何度もふらりと消えてはなかなか帰ってこない。そんな父に愛想を尽かした唯子の母は、父親に「もう帰ってこなくていい」と告げる。
『海になる』
死産を経験し、夫からのDVを受けている主人公・桜子。この世に存在する意味がわからなくなり、死のうとするが、目の前に現れたのは“あの男”だった。
———感想———
どれも完成度が高く、何度も読み返したくなる。テーマを簡単に言うと、生きづらさからの脱却になると思うけれど、どの話も絶望が本当に絶望で、かなり感情移入してしまった。おもしろい。
一番好きだったのは『カメルーンの青い魚』。完璧すぎる。完全に騙された。啓太はわたしをさっちゃんと呼び、なかなか対等な関係で喋る冒頭。カジュアルにミスリードされました。りゅうちゃんと再開後、主人公が過去の恋愛に惹起され、浮気をしてしまわないか心配していたのが恥ずかしい。余韻も素敵な良い話でした。
また『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』も最高にドキドキした。めちゃくちゃ面白いし、啓太がアルバイトを始めたのにそんな理由があったとは。唸った。
『溺れるスイミー』は意外だった。ここではないどこかへ行くことを選んでも幸せだと思うし、自分でもそうするかもしれないと思ったが、まさかの選択。自分もウロウロしたい人間なので、めちゃくちゃ唯子の父に共感できるし、唯子の母の気持ちはわからない。
2)『祐介』 尾崎世界観
クリープハイプ・尾崎世界観さんの、まさにエピソード・ゼロ。
何をやってもうまくいかなかった頃の物語を、五感フルマックスで、緻密に綴っている。
エッセイではないので全て事実というわけでないけれど、退廃的で強烈な出来事の連続に胸を打たれ、ページを捲る手が止まらなくなる。
———あらすじ(公式より)———
スーパーでアルバイトをしながら、いつの日かスポットライトを浴びる夢を見る売れないバンドマン。ライブをしても客は数名、メンバーの結束もバラバラ。恋をした相手はピンサロ嬢。
どうでもいいセックスや些細な暴力。
逆走の果てにみつけた物は……。
人気ロックバンド・クリープハイプの尾崎世界観による、「祐介」が「世界観」になるまでを描いた渾身の初小説。
たったひとりのあなたを救う物語。
———感想———
面白いというより、ヤバいという言葉の方がしっくりくる。
めちゃくちゃヤバい。強烈。
祐介のセリフ、行動には全く理解できないものもあるし、筋が通っているわけではないけれど、なぜかしっくりくるものもある。どこか哀愁もある。
共感より、そんな感情もあるのか、そんな行動をとるのか、と気づきの方が遥かに多かった。
僕は読書に共感より発見を求めているし、未だ味わったことのないものに出会いたいタイプなので、かなり刺さった。
アルバイトの日々、バンドメンバーとの確執、認めてもらえないことへの怒り、夜行バスと京都でのクライマックス、どれも強烈で印象的で、頭の中に一度描いた映像がずっと消えずに鮮やかに思い出せる。静かな怒りをずっと感じながら読んだ。
文庫版にだけ収められている『字慰』もヤバい。
タイトルからは物語が想像できず、読んですぐ意味がわかった。
ラストシーンはかなり笑ってしまった。
3)『母影』 尾崎世界観
尾崎世界観さんの2作目にして、芥川賞候補作に選ばれた作品。
前作『祐介』とは作風も文体も全く違う。そうなるのは主人公が小学生なので必然だが、それを書き切る表現力が凄まじい。
前作とは違う意味でヤバい。
———あらすじ———
小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。
電気を消し、隣のベッドで客の探し物を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。
母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。
少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。第164回芥川賞候補作。
———感想———
小学校低学年の主人公「私」の見る世界と心情を、丁寧に描写する文章が秀逸。主人公の純粋さがダイレクトに伝わってきて、面白くも、心苦しくもあった。
いけないことをしてそう、だとはわかっていても、具体的に何をしているのかはわからない世界を、大人になってこんな解像度で書くのがすごい。僕は小学校低学年当時の感覚や感性なんて忘れてしまっている。
4)『裸々』 村上純
コンビの二人ともが、そのように実感する今だからこそ書けたのだと思う。
面白すぎて、ページをめくる手がとまらず一気読み。しずるが芸人の中でも異質なコンビになった真相を、丸裸になって語っている。
———あらすじ(公式より)———
お互いネタを書くコンビだから「しずる」はぶつかりあった。
実力派コント芸人として若くして売れた「しずる」村上純が歩んできた芸人人生を赤裸々に綴った自伝的エッセイ。
これまで語られることのなかった冴えなかった子供時代になぜ“芸人”を目指したのか。
NSCで仲間との出会いや、尊敬するピース又吉直樹との親交、謹慎事件の裏話、そして相方との壮絶な仲違いとその先で見つけたもの。
お笑い、そして相方と向き合い続けたからこそ、得られたものがそこにはあった。
———感想———
めちゃくちゃ面白い。僕も同じ世界にいるからそう感じたわけではなく、一人の芸人が戦ってきた歴史として、誰か読んでも面白く感じると思う。
しずる結成秘話、解散からの再結成、又吉さんとの親交、謹慎事件の裏話などなど、全てにドラマと笑いと本音があり、ここまで赤裸々に語っている芸人本も珍しい。タイトル『裸々』の意味がわかる。
そしてやっぱり特筆すべきは、池田さんとの関係性と表現者・村上純の葛藤。読み応えがあり過ぎた。
「村上、お前俺のこと舐めてんだろ」
——コンビの方向性を決める会議。ずっと無言を貫いていた池田さんが唐突に放った一言が、しずる第二章の産声に感じた。
そしてキングオブコントで同期のライスさんが優勝した夜のある出来事。それを人づてに聞いた村上さんの意識が変わり始める。
仲良くさせていただいている先輩。自分より結果出している格好良い先輩にもこんな泥臭い夜と葛藤があったんだ。
そして最後の一行も最高すぎた。
変わらない池田さんと、変わった村上さんのこれからが楽しみで仕方がない。
5)『ピンクとグレー』 加藤シゲアキ
前から読んでみたかった加藤さんの小説。
『なれのはて』を読む前に、持っていた本作を読んだ。
———あらすじ———
大阪から横浜へ越してきた小学生の大貴は、マンションで同い年の真吾と出会う。性格は全く違う2人だったが惹かれあい、親友に。やがて高校生になった2人は、雑誌の読者モデルをきっかけに芸能活動をスタート。 同居も始めるが、真吾だけがスターダムを駆け上がっていくことで2人の仲は決裂してしまい……。
絶望的に素晴らしいこの世界の真ん中に、僕は君と共にある。
“ステージ”に魅入られた青年たちを描く、作家活動の原点となる青春小説。
———感想———
素晴らしい。続きが気になりすぎて、一晩で読み切ってしまった。
主人公・りばちゃん(大貴)と、俳優として成功したごっち(真吾)、二人の幼なじみの関係性を描いてゆく作品かと思って読み進めたら、途中で起きた事件によって物語がギュンと曲がっていった。そこから釘付け。
特に最後の撮影シーンが良かった。
俳優って役に入りすぎたら、あんなふうに、演じている対象が自分の中にぐわっと入り込んでくるものなのだろうか。演技が苦手な僕にはわからないけれど、ごっち(真吾)の一人称で書かれる独白はかなり迫力があったし、一人称の小説で、あんなふうに主人公以外の気持ちを表現するのは見たことのない手法だった。緻密な構成で、デビュー作と思えない完成度。
色の話も良かった。
吸収された色は見えない。だから、目に見えている色はそれ自身が嫌った色。めちゃくちゃ面白い考え方。バナナは黄色が嫌いだから黄色い。