文豪とお酒の逸話に触れる!千鳥足のようにふらふら揺れるグラス
坂口安吾に中原中也、梶井基次郎と萩原朔太郎! 「丸底グラス」をきっかけに、「お酒と文豪」の人間味あふれるエピソードに、楽しく触れてみませんか?
みなさま、こんにちは!
歴史と読書が好きなミュージアム部プランナー・ささのはです。
私はかねてより、もっと多くの方々に私が大好きな本の世界、そしてそれらを生み出す作家たちに親しみを持っていただきたくて「文学作品」や「文豪」をテーマにした雑貨商品を企画・ご紹介しております。
例えばこちらのnoteでご紹介しているのは、坂口安吾のエピソードをモチーフに企画した「ライスカレー100人前トートバッグ」。
どことなく気難しそうで、取っつきにくい印象を持たれがちな存在・文豪。しかし実のところ、彼らだってごく普通の人たちで、人間味あふれるエピソードがたくさん残っているのです。
作品はもちろん、文豪たち自身が持つ不思議な魅力を、もっとたくさんの方々にお伝えしたい……!
そこで今回新たにご紹介したい雑貨が「“お酒と文豪”の組み合わせに着想したグラス」です!
このグラス、丸底なのでゆらゆら揺れます! まるで酔っぱらった文豪の足取りのように……!
「“お酒と文豪”の組み合わせとは……?」と不思議に思われた方。詳細はのちほどグッズと一緒にご紹介いたしますが、近現代に活躍した作家たちは酒をかっくらっては酔いつぶれて作家仲間に絡んだり往来で暴れたりと、なぜか「お酒」にまつわる逸話持ちが多いのです。
文豪というのは何かを強く感じ取ることができるからこそ、強い言葉を生み出す力を持つのだと私は考えています。つまるところ、作家というのは一般的な人よりもどこか繊細な面があってふとした事で傷つきやすかったり、それに由来する独自の悩みを持っているのではないか?と思うのです。お酒はそれら悩みを一時解消するためのアイテムであり、なにより創作に向き合うために欠かせない原動力のひとつだったのかもしれません……。
そんなことを考えたら、「切っても切れないお酒と文豪の縁」をテーマに、何か作ってみたい!と思ってしまうのが私の性!
というわけで今回作ったグラスには「お酒に関する興味深いエピソードを持っている、昭和に活躍した文豪4人」をピックアップ。彼らが愛したもの&著作から得たモチーフをレトロなデザインに落とし込んだ「丸底グラス」について、さっそくご紹介いたします^^
〈坂口安吾の酔いどれグラス〉
小説『夜長姫と耳男』に登場する何十本もの「蛇」風の模様と、坂口安吾がたしなんだ「囲碁」をイメージしたデザインのグラス。
安吾は「自分は囲碁をタンデキしている」と明言するほどに碁を好み、途中戦争に活動を打ち切られながらも文人囲碁会に参加して碁を楽しんでいました。戦前の会について綴ったエッセイ『文人囲碁会』では、川端康成や小林秀雄ら著名な作家たちの碁の打ち方について語っています。
坂口安吾は「ただ酔い眠るため」に、ウイスキーなどの洋酒を好んで飲みました。ちなみに毎度1~2本の酒瓶をあけていた安吾でしたが、本人曰く「俺は胃が弱い」とのこと。
安吾が作家として大成した戦後、物資不足にあえぐ人々の間にカストリと呼ばれる密造酒が出回ります。含有成分メチルアルコールにより多数の死者が出た酒・バクダンに次いで生まれた飲料だったため、「飲んだら何が起こるのか……」と危険視されていましたが、安吾は付き合いのある新聞社の人に誘われたのをきっかけにカストリを催眠薬として愛飲していたようです。
“彼らから死者が出ないうちは大丈夫“だと考えて、エッセイでは新聞社の人々を「メチル検査器」と衝撃の名前で呼んでいます。
~グラスをより楽しむために~
坂口安吾の『夜長姫と耳男』に登場する「キレイな青空」をイメージした、水色が映えるカクテルをご提案。グラスに沈めた半透明の琥珀糖は、薄くたなびく雲のよう。天真爛漫の花言葉を持つエルダーフラワーを使ったシロップと、愛や美の象徴である林檎で「ヒメの無邪気な目や冴えた笑顔」を表現。林檎は太陽の光芒を思わせる形に飾り付けました。「耳男が持つノミ」をイメージしたピックを刺し、物語のラストを感じさせるように仕上げて。
〈萩原朔太郎の酔いどれグラス〉
詩『青猫』に登場する「青い猫の影」模様と、萩原朔太郎が愛した「マンドリン」をイメージしたデザインのグラス。
萩原は中学生(旧制)の時に父親から贈られる形で当時貴重だった楽器・マンドリンを手に入れ、一時は音楽家の道を夢見るほど入れ込みます。それは音楽愛好家を集め「ゴンドラ洋楽会」を組織したり、自らマンドリン独奏曲「機織る乙女」を作曲したほどの熱中ぶりでした。萩原はマンドリンと同じ弦楽器であるギターも好んで弾き、後年、ご息女・葉子さんが弾くマンドリンに合わせ合奏を楽しみました。
萩原朔太郎は家だけでなく外でも飲み歩くなど、毎晩の晩酌を欠かしませんでした。そんな萩原は、昭和13年に自身の一目ぼれを契機に再婚し、以降は自宅での晩酌をじっくり楽しむように。家では静かに飲む派だった彼も惚れた相手の前では一転、愛する人と戯れつつ上機嫌に酒を飲み続けたそうな。
しかし翌年、萩原の母との関係悪化により女性は家出。幸せな時間は儚く終わりを告げた……ように見えましたが、二人は秘密裏にアパートを借りて時折会っており、萩原はかつて妻だった女性を前にやっぱりお酒を飲んでいたそうです。
~グラスをより楽しむために~
萩原朔太郎の『青猫』に登場する「かなしい人類の歴史」をイメージした、苦いコーヒーをベースにしたカクテルをご提案。平和という花言葉を持つサトウキビが原料のホワイトラムが、胃と心にじんわりしみいります。作中の「みぞれふる日」をイメージして、スノースタイルに仕上げました。ふちに飾るライムの皮は、「おほきな都會の夜」の明かりに照らされた「猫」のしっぽ風にくるりと丸めて。
〈中原中也の酔いどれグラス〉
詩『春日狂想』に登場する儚い人生に見立てた「ゴム風船」模様と、中原中也が愛用した「帽子」をイメージしたデザインのグラス。
今も伝わる中也の写真の中で特に有名な、ソフト帽をかぶって真っすぐにこちらを見つめる一枚。撮影されたのは彼が詩人となる事を決意した18歳ごろであろうと、中也の友人であり作家の大岡昇平は推測しています。中也はこの帽子が特にお気に入りで、他にはベレー帽なども愛用していたそう。
中原中也ほど、酒乱エピソードにあふれる文豪もいないでしょう。中也は非常に酒癖が悪く、飲むととにかく喧嘩っ早くなるタイプでした。酔っては太宰治の家に押しかけ大騒ぎしたり、突然ビール瓶で友人を殴りつけて周囲に責められるやいなや大号泣したりと、飲酒のたびにひと騒ぎ起こしていたようです。
しかしどんなに酔って暴れても、中也は文学者。二日酔いが残る朝を題材にした詩では「千の天使が バスケットボールする。」と歌うなど、素晴らしい言葉の使い手であることに間違いはないのでした。
なお彼の日記によると、晩年、体調を崩した中也は酒をやめて和菓子などの甘味を好んで食べたようです。
~グラスをより楽しむために~
中原中也の『春日狂想』に登場する「麗日」をイメージした、あたたかい色合いのカクテルをご提案。『春日狂想(及び『在りし日の歌』)』は、亡くなったご子息・文也くんに捧げた詩のため、ノンアルコールに。作家が一瞬の夢のごとく儚い人生に例えた「ゴム風船」に見立て、さくらんぼを飾りました。立ち上る炭酸の泡や金平糖も、空に光りながら昇っていく風船をイメージしています。
〈梶井基次郎の酔いどれグラス〉
小説『檸檬』に登場するカリフォルニヤ産の「檸檬」模様と、梶井基次郎が愛飲したお茶の「茶葉」をイメージしたデザインのグラス。
梶井は紅茶はお気に入りのブランドのものしか口にせず、また非常に高価な玉露を惜しみなく淹れ味わったりと、お茶にはかなりのこだわりを持っていたようです。そして本人の遺言から、死後、彼の棺には茶葉が敷き詰められたと伝わっています。
梶井基次郎は相当ヤンチャな人で、往来の屋台をひっくり返したり商品に異物を投げ込むなど普段から乱暴なふるまいをしていたのですが、そこに酒が入るといよいよ手が付けられない状態になったといわれています。料理屋では酔っぱらって池に飛び込んだほか店の備品を放り投げるなど大暴れ! 仲間の中でただ一人出禁になったこともあったそうです。
そんな梶井は若くして肺を病み、ままならない体調に苦悩する日々を送りました。ある日「葡萄酒を見せてやろう」と赤い液体が入ったグラスを友人である詩人・三好達治に見せたのですが、グラスの液体は実は梶井が吐いた血であった……という考えさせられる逸話も残っています。
~グラスをより楽しむために~
梶井基次郎の『檸檬』に登場する「カーンと冴えかえった檸檬」をイメージした、二層の見た目が美しいカクテルをご提案。
赤ワインは「えたいの知れない不吉な塊」、レモンジュースに混ぜたミントリキュールの清涼感で「カーンと冴えかえった」イメージに。レモンジュースの層に積み上げた琥珀糖は、作中に登場する「積まれた色とりどりの書籍」を表現しています。
グラスは両手のひらで軽く包み込めるくらいのサイズ感。ころんとかわいいフォルムなので、机や食器棚に置いているだけでもインテリアのような佇まいに。
グラスの背面には作家の名前入り。レトロな書体が最高にキュートです◎
ひとつひとつ、箱に入れてお届けします。飲んべえな読書家のお友達へのプレゼントにいかがでしょうか^^?
酔っぱらいの千鳥足のように、ふらふらと揺れるグラス。
大きく傾かせすぎると中身がこぼれてしまうかもしれないので、くれぐれもご注意を!!
日本が誇る文豪たちに思いをはせつつ楽しむ飲み物は、きっと格別の味になるはず。お酒を飲むときは飲みすぎてフラフラ千鳥足にならないよう、セーブしながらお楽しみください!
\ミュージアム部 文学作品・文豪関連シリーズはこちら/
~もっと作家・作品に触れたい方へおすすめ~
実際にプランナーが訪れた
作家ゆかりのミュージアム・その他の紹介コーナー
【萩原朔太郎関係】
・世田谷邪宗門(東京・世田谷)
萩原朔太郎の師匠・北原白秋の詩集『邪宗門』から名をとった、昭和40年創業の喫茶店。萩原のご息女・葉子さんもよくお客さんとして訪れていたのだそう。マスターがおよそ70年前から集めているという隠れキリシタン遺物や年代物のランプなどに囲まれて、ゆったりとした時間を過ごせます^^
世田谷邪宗門は、森鷗外のご息女である作家・茉莉さんの大のお気に入りのお店としても有名。名物「あんみつコーヒー」と一緒に、茉莉さんがいつも飲んでいたという紅茶「森茉莉ティー」をいただきました!
親切なマスターが街歩きマップをくださいました!
・代田の丘の61号鉄塔(東京・世田谷)
萩原朔太郎がかつて住んだ家は、この鉄塔のすぐ近くにあったそうです。萩原は自ら家の設計に携わり、三角屋根のデザインが斬新な邸宅を建てています。そしてそのおよそ10年後に、同地で息をひきとりました。
【坂口安吾関係】
・安吾文学碑(東京・世田谷)
実は安吾は作家になる前に、一年間だけ小学校の教員(代用員)をしていました! 彼が勤めていた学校(現・世田谷区立代沢小学校)に文学碑があります。碑の隣にあるのは、なんと安吾が住んでいた家の門なのだとか……。かつては竹藪に囲まれていたという学校も、今は閑静な住宅街の中に。安吾が働いていたおよそ100年前の光景を想像しながら、静かに見学させていただきました。
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