渋谷は退屈な街?!ガイド=海外旅行客が日本を愛する理由、最前線|令和のきらきらガイド×WOW U【インタビュー②:Kiriyoさん】
今回は、コンサルタントとして働くかたわら、副業ガイドとして活動を検討するKiriyoさんへインタビュー。
企業の正社員として働くKiriyoさんが、なぜ「ガイドって、アリかも!」と思ったのか。一歩を踏み出した理由と、これからのビジョンについて、詳しくうかがいました。
Kiriyoさんプロフィール
質問①:どうして、ガイドという道を選んだの?
Kiriyoさんは、本業ではコンサルタントとして、世界各国の新規事業における開発・拡大支援に携わっています。
そのまま会社員を続けていても、生活は全く問題なく送れるはず。なのになぜ、観光ガイドという仕事を副業として選んだのでしょうか。一歩を踏み出した理由をうかがいました。
■今のままでも生活はできる。でも、きっと後悔する
Kiriyoさん「もしも会社員として働くだけで人生が終わってしまったとしたら、ものすごく残念に思うだろうな、というのが、一番大きな理由です。
もちろん私は、今の会社も、チームメンバーも、仕事の内容も大好きです。私のスキルを活かせるし、好きな領域で働かせてもらっている。これは紛れもない事実です。
でも、今の会社で働くことは、私が人生で成し遂げたいことではないな、とも思うんです。このまま働いていても、人生が終わる瞬間に”やりきった”と思えないというか。
”やりきった自分”を実現させるための一歩として、ガイドというお仕事に、パラレルワーカーとしてトライすることにしました」
■日本と海外の架け橋になれない人生なんて、ありえない。
Kiriyoさんにとっての「人生で成し遂げたいこと」とは、何なのでしょうか。
Kiriyoさん「”日本と海外をつなぐ架け橋になること”です。学生時代からずっと思い続けていて、これが私の人生における大きなテーマなんだろうな、と感じています。
考えてみれば、私がキャリアや学びたいことを選ぶときって、いつも”これで目標が一歩、現実に近づくはず!"と考えている気がします。
たとえば大学生の頃は、”グローバル企業で働けば、日本と海外の架け橋になれる"と思っていました。それで、世界規模のコンサルティング会社を就職先に選んだんです。
でも、あるときの海外出張で、会議の司会や進行すら、海外では満足にできない自分に気づきました。
もっと力をつけて、経験を積まないと……という気持ちから、海外企業への転職を決意しました。2年間アメリカで働き、自分のなかでは納得できる結果を残せたかな、と思っています。
ビザが切れたタイミングで日本拠点に転籍してからは、むしろ日本にいるからこそトライできることに、どんどん取り組んでいます」
質問②:ガイドの魅力って、どこにある?
日本と海外の架け橋となるために「ガイド」という手段を選んだKiriyoさん。
でも、架け橋になる=ガイドとして働くこと、ではないはず。さまざまな仕事のなかから、Kiriyoさんはなぜガイドという働き方を選んだのでしょうか。
ガイドの魅力について、詳しくうかがってみました。
■架け橋=道のない場所に道を作ること
Kiriyoさん「私の目標は、”日本と海外の架け橋になること”だとお話ししました。そもそもそれってどういうことなのか……というのを、まずはお話ししたいのですが。
“橋”って、道の一種ですよね。
でも、橋と普通の道とが違うところは、橋が"もともと道ではなかった場所に道を作っている"ということ。日本と海外の架け橋になるというのは、海外の人に、“日本への興味"という"道"を作ってもらうことだ、と思うんです。
言い換えれば、私は日本を、"よく知らない東アジアの一国"から、"なんだかつい気になってしまう、あの国"にしたいんです」
■橋を渡った先での楽しみ方は、人それぞれ
ところがKiriyoさんは、世界に対して「日本って、こんないいところがありますよ」と押し付けることはしたくないのだとか。
Kiriyoさん「私たちだって、散歩中に橋を渡ったとして、"この橋の向こうは◯◯を楽しまないとダメなエリアです"なんて言われたら、面食らってしまいますよね。それと同じで、楽しみ方は人それぞれでいいんだと思っていて。
橋を渡ってたどり着いたその場所で、ある人は景色が綺麗だと思うし、ある人は"自分たちの街とここが違う"と思う。ある人は買い物を楽しむし、ある人は仲間を見つけたいと思う。
でも、その全部が正解なんですよね。
私にとってガイドとは、海外の人びとが"橋"を渡ってたどり着いた日本で、新たな発見や喜びを得られるようサポートすることです。
つまり"日本って、楽しいかも?"と思って、橋を渡ってきてくれた人に対して、"日本って、本当に楽しいんだ!"と確信してもらうためのお手伝いというか。
橋の"向こう岸"を作る、とても重要なポジションなんじゃないか、と思うんです」
■渋谷=つまらない街?!ロサンゼルスの同僚が発した衝撃の一言
「日本の魅力を日本人が押し付けても、意味がない」。
そうKiriyoさんが思うようになった理由には、ロサンゼルス在住の同僚が発した、衝撃の一言がありました。
Kiriyoさん「あるとき、同僚が日本へ来ることになり、私に"日本を案内してほしい"と頼んできたんです。
案内する場所として、私は渋谷を選びました。日本を代表する観光地としてよく紹介されているし、ショッピングなどにも便利ですから。
でも、同僚は渋谷を一通り観光してから、”ロサンゼルスと同じだね”とややガッカリした顔で私に告げてきたんです。
えっ?! と一瞬驚きましたが、考えてみると、たしかにそうなんですよね。
渋谷のショッピングセンターに入っているお店って、海外ブランドや、グローバルブランドがとても多いわけです。
GUCCI、DIOR、Hermès、IPSA、 JO MALONE LONDON、LOEWE、MARC JACOBS……。考えてみれば、ロサンゼルスのショッピングモールに行っても、見える風景は同じだな、と。
都市の便利さ、画一性って、実は"土地ならではの魅力"を失わせているのだと、そのとき気付かされました。
私たち自身が海外へ観光旅行に行くことを想像してみても、この気持ちって結構、理解可能ですよね。アメリカ旅行に行ってマクドナルドとコストコにしか行かなかったら「何しに来たんだろう?」って思うじゃないですか。
せっかく外国に来て、現地に住む人がガイドをしてくれるのだとしたら、ガイドブックに掲載されたことのないようなローカルエリアに行ってみたいと思う人、少なくないと思うんですよね。
たとえば、個人運営の小さなお店で、決済は現金オンリーで、もちろんSNSで情報発信なんて一つもしていなくて、お店の人も一切、こちらの言葉を理解してくれなくて……。
そんな場所に連れていってもらえたら、それって一生、記憶に残る体験になるんじゃないかと思うんです。
日本人からしたら”見る価値がない”と思われているものが、見方を変えるだけで強い価値を持つようになるかもしれない。
そう考えると、日本の魅力はここにあるんだ! と日本人が決めつけて、それだけを発信することは、ちょっと危険なのかも……なんて思うんです」
■秋葉原で、二車線道路に興奮するインド人。一体なぜ?
さらにKiriyoさんは、海外の方が何を面白いと思うか、日本人の視点から考えることには限界があるのだと思ったエピソードがあるのだとか。
Kiriyoさん「インド出身の同僚を秋葉原へ案内したときのことなのですが。
秋葉原というと、私たち日本人が”観光地”として想像するのは、たとえばネオン街や最新電化製品、あとはメイド喫茶のメイドさんあたりですよね。
でも、同僚が目をつけたのは、まさかの”道路”。それも、よくある二車線道路です。なんで?! と思わず笑ってしまいました。
何が気になったのか尋ねてみたら、同僚は”道路が綺麗だから”と言うんです。インドの道路はもっとカオスだ、と。道が綺麗に整備され、車が整然と走っている様子に、強い”日本らしさ”を感じたんだそうです。
こんなの、日本にしか住んだことのない日本人には、どう頑張っても見つけようがない視点ですよね。
何を楽しむかは、観光客の方それぞれのルーツや背景によって大きく異なるんだな、とそのときに思って。
だからこそガイドは、"楽しさの発見"をできる限りスムーズに進めてあげるために、知識やスキルを提供するお仕事なんだろうな、と思っています」
質問③:今までのキャリアや持っているスキル、どう活かす?
副業としてガイドを考えている人が気になる「これまでの経験があんまり活かせないかも」という悩み。Kiriyoさんは、コンサルタントというこれまでのキャリアとガイドとを、どう結びつけているのでしょうか。詳しくうかがってみました。
■相手の声に耳を傾けること
Kiriyoさん「実はガイドとコンサルティングって、結構似ているところが多いんじゃないか、と思っていて。
たとえばどちらも、相手の求めていることを探るお仕事ですよね。
お客さまが本当は何をしたいのか。"どうせ無理だから"とか"予算的に難しそうだから"といった思いに邪魔されて、言えない気持ちがあるのではないか。
言葉になっていないような思いを発見することで、本来実現したかった喜びを一緒に分かち合う。そのスキルは、ガイドでも活かせるだろうと感じています」
■誰かと、同じ時間・空間を共有する「手触り感」
Kiriyoさん「それから私は、普段の仕事でも、お客さまとかかわる瞬間がとても好きだし、記憶に残っているんですよね。
私の仕事では、お客さまのデータを分析するといった"綺麗な"作業だけではなくて、泥臭い業務もたくさんあるんです。
たとえば、イベントを開催するにあたって、集客のために街頭でチラシを配り歩いたり、チラシを貼ってもらえる場所がないか尋ねて回ったり。実際にイベントが開催されたら、参加いただいたお客さま一人ひとりにお声がけをしたり……。
そういう仕事が"カッコよくないと思うか"とか"できればしたくないか"と問われると、私は全力でNOと答えます。むしろ、誰かと同じ場所を共有しながら、何かを作り上げるという"手触り"に、私はすごくときめきを感じるんです。
もし、海外の良さを日本に伝えるだけなら、オンラインでの情報発信でも事足りるのかもしれません。でも、それではワクワクしない。
そんな私の特性があるからこそ、ゲストの方々と時間・空間を共有するガイドという仕事は、私にぴったりなのかな、なんて思っています」
質問④:資格は取得した?何のために取得した?
実はKiriyoさん、大学在学中に通訳案内士や世界遺産検定1級を取得していたそうです。
通訳案内士や世界遺産検定1級は合格者率も低い難関資格。思いつきや片手間で取得できるものではありません。資格取得のモチベーションはどこから生まれたのか、くわしくうかがいました。
■自分をアップデートしたい。そんな気持ちで取得した
Kiriyoさん「実はどちらの資格も、ガイドになりたくて取得したわけではないんです。どちらかというと、自分で自分に納得したい、ということが大きかったかもしれません。
私はもともと海外旅行が好きで、しょっちゅう外国を訪れていたんです。
旅先で現地の方と会話すると、よく”日本ってどんな国?”と質問されるんですよね。たとえば、神社とお寺の違いって何? とか。
資格の勉強を始めるまで、自分はそういった質問に答えるのが苦手じゃないな、と思っていたんです。ざっくりではあるけど、外国の方に納得してもらえる程度には回答できるな、と。
ディテールまで自分自身が理解していなくても、"そうなんだ"って言ってもらえるんだからいいよね、なんて思っていて。
でも、世界遺産検定3級のテキストを軽い気持ちで眺めていたとき、衝撃を受けました。
世界遺産検定って、”世界遺産”とはいいつつ、3級で扱われる範囲は割と日本の世界遺産が多いんです。そこで扱われていた日本の世界遺産を、私、全然答えられなくて。
その瞬間、これまで自分が人に説明していたことって、実はもっと深い角度から説明ができたんだ、と気づきました。自分の伸びしろに気づいた瞬間だったな、と感じます」
前回インタビューにお答えいただいたKirikoさんも「資格を取得する前に、ガイドとして活動を始めた」と話していました。
「資格がないとガイドになれない?」と考えている人はぜひ「とにかくトライ!」の精神で、ガイドへの一歩を踏み出すのも、アリなのかもしれません。
質問⑤:ガイドとして、将来のビジョンは?
目標に向かって、一歩ずつ歩みを進めるKiriyoさん。実現させたい理想のビジョンについて、具体的にうかがいました。
■個人ガイド+プライベートツアー、だけじゃない一手を
そもそもKiriyoさんは、これからどのような働き方をしたいと思っているのでしょうか。
Kiriyoさん「自分が個人ガイドとして活動するだけでは、”日本と世界の架け橋になる”という大きな目標の達成は難しいと思うんです。
もちろん、日本の楽しみ方をお客さまと一緒に創り上げるガイドという仕事そのものには、ずっと何らかの形で携わっていたいとは思います。
でも、たとえば、自分がガイドするだけではなく、ガイドになりたい人たちをプロデュースすることも、一つのアイデアなのかも、と思ったりするんですよね」
■ダイレクトな「橋をかける仕事」も手掛けたい
Kiriyoさん「それから、"橋を作る"ことそのものにも、軸足を置いていきたいと考えていて。
たとえば今は、新潟の旅館や秋田の古民家で、インバウンド向けの運営支援に取り組ませてもらっています。これも「橋を作ること」の一環かな、と。
それから、きっと自分はまた、海外で仕事をするんだろうなと思っているんです。
でもそのときは、海外企業に雇われるのではなく、自分で事業を始めたいですね。日本の良さを世界に伝える、まさに"橋"としての企業を作りたいな、と。
アイデアは尽きませんが、まだまだ今は準備の段階。
まずはガイドとして、お客様と一緒に楽しさを見つける"現場"の経験が、自分にはもっと必要だと感じています」
質問⑥:副業ガイドとして一歩を踏み出したい人へ一言!
最後にKiriyoさんに、ガイドとしての一歩を踏み出したいと考えている人へ向けた、エールの言葉をいただきました。
■日本=「終わった国」なんて、誰が決めた?
Kiriyoさん「かなり大きな話になるんですが……。
日本って、少子高齢化のニュースだったり、長引く不況だったりと、先行きの見えづらい状況が続いている国だと思うんです。
なかには"日本はもう終わった"なんてことを言う人もいたりして、自分はこれからどうしたらいいんだろう、なんて不安に思う方もきっといらっしゃるんじゃないでしょうか。
確かに、国内だけの消費に頼ることを考えるなら、日本はやや将来の見通しがしづらい国になってきているのかもしれない。でも、それなら外貨を稼げばいいだけじゃない? なんて私は思うんですよね。
外貨を稼ぐ方法はいろいろあると思いますが、ガイドもその手段の1つ。つまりガイドって、"日本終わった"という主張に"そんなことないよ"と言うための、強い一手だと思うんです。
私は、日本のことがすごく好きです。だから、「日本終わった」なんて言葉で、自分の母国を諦めたくない。
それに、海外の方の"好き"を見つけるためのコミュニケーションも、とても楽しく、ワクワクさせられることだと思っています。
誰かの「好き」と自分の「好き」、その両方を叶えられるガイドのお仕事に、私は大きな魅力を感じています。
「ガイドって、いいかも!」と思ってくださる方が一人でも増えれば、これほど嬉しいことはありません。
WOW Uで、ガイドの一歩を踏み出して
Kiriyoさん、すてきなインタビューありがとうございました!
▼インタビュー第一弾はこちら✨
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