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ドイツと極右政党AfD
東部三州の選挙や欧州選挙を控え、極右政党「ドイツのための選択肢/AfD (Alternative for Germany)」がドイツ国内で急激に支持率を伸ばしている。そんな中、ワイデルAfD共同党首がDrexit(ドイツのEU脱退)発言をし、国内で波紋を呼んでいる。いろんなことが起こっているドイツ国内情勢をすこし整理してみた。
記事要約
ギリシャ債務危機をきっかけに設立されたAfDは、移民問題へと焦点を移し、過激な反イスラム的、極右的論調を繰り返して支持を集めている。
最近、ネオナチ活動家らと秘密の会談を設け、移民の国外追放計画に関して話し合いを実施。
ファシズムやナチス台頭時のプロセスに酷似。中央政党らが同国民の支持を取り戻すか&極右政党とは協力しないかが大事。
1. そもそもAfDってなに?
2009年に端を発したギリシャ債務危機、当時のドイツ・メルケル政権は、多額の支援をする決定を下したが、それに反発した政治家らが反欧州連合/EUを掲げて2013年にベルリンで立ち上げたのが、ドイツのための選択肢/AfD (Alternative for Germany)。
しかし、同党は債務危機から移民問題へと焦点を移し、イスラム移民排斥など極右的論調を取る(下記写真は「イスラム化を止めよ、AfDを選ぼう」という同党のスローガン)。

増加し続ける移民に対し不満を抱く国民も多く、AfD以外の政党支持層も移民については全体的にネガティブなスタンス。2014 年、ドイツ東部のドレスデンに始まり各年へ波及していった「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者(PEGIDA)」。排外主義的な運動を開始し,イスラムの影響からド イツ社会を守ることを呼び掛ける運動だが、 2015年,難民危機の拡大により,多数の難民がドイツへと流入すると,ペギーダの運動への関心 はさらに高まり,運動への参加者も拡大。AfDはこのPegida参加者から多くの支持を集めている。
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現在の党首は、エコノミストのアリス・ワイデル/Alice Weidel(1979-)と元弁護士のアレクサンダー・ガウラント/Alexander Gauland(1941-)の二人。
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そして党内には、ナチズムに同調する議員もおり、その筆頭が党内有力議員のビョルン・ヘッケ(Björn Höcke)議員。ナチス・ヒトラー下で犠牲になった人々を追悼したメモリアルを「恥のモニュメント/monument of shame」と発言。しかも、前職は教師だったとのことで驚き。
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2. 最近の動き
2024年1月10日衝撃的なニュースが流れる。2023年11月25日、ポスダム近郊のホテルにて、AfDの代表らが、ネオナチなどの極右活動家らと会談。難民や、居住権を持つ非ドイツ人、そして『非同化』ドイツ国民たちの扱いに次いで議論を交わし、彼らの再移民/Re-immigrationというか国外追放を実施するためのマスタープランも議論したとのこと。
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つい先週、ドイツ全国で極右的過激化に反対するデモが実施、その数は数十万人とも百万人以上とも言われている。ただ、AfDへの支持は高止まり、現時点で23%、中道右派CDU/CSUの32%に次ぐ第2政党となっている(下記参照)
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そんな中、ワイデルAfD共同党首がドイツのEU離脱発言。政権を奪取した場合は欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を行うつもりとの発言をFinancial timesが報じている。が、国民全体でみれば、まだEU派が多数。
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そして1月23日、ドイツ憲法裁が極右政党「Die Heimat/the Homeland」への政党助成金打ち切りの判決が下された。反民主主義的な姿勢が懸念されていたことが背景にあるが、AfDに対する法的措置の議論にも波及しそう。
3. 思ったこと。
経済苦、反移民の高まりとポピュリスト政党の台頭、過激化、EU脱退。ファシスト政党やナチス政党の台頭プロセスにそっくりじゃん!と思った私は、その手の本を読みすぎただけだろうか。
下記2冊の本は、危険なポピュリスト政党体制プロセスを分析しているが、何より大事なのは、中央政党がこれら極右政党と手を結んだりしないこと。左派は大丈夫だろうが中道右派のCDU/CSUが怪しい。11月の移民国外追放に関する秘密会談にもCDU/CSU議員がいたらしいし。
そして、極右政党への法的措置というが、それで勢いが止まる気がしない。確かナチスもその手の法的措置を受けたような記憶があるし(間違いかも)、ヒトラーも投獄されたりしたが、結局不死鳥のようによみがえったし。
やっぱり足元の経済苦やきちんとした移民対応など、一般市民の心に響くようなマニフェストを中央政党らにしていただくしかない気がするなあ。環境はちょっとグリーンすぎるし、市民に響く経済対策といえば雇用だけど、ドイツ政府は緊縮財政(ドイツ基本法/憲法に規定)なのでスティグリッツ先生が進めるような大幅な政府支出による雇用創出も難しい。
最後に、同党は、時期欧州選挙に向けて台頭甚だしい欧州レベルの極右政党IDに母体となっており、ドイツのみならず欧州のあり方にまで影響を及ぼしそう(欧州選挙の詳細は下記)。
とりあえず今後も要注視。
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