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【えりた書店】

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元書店員で、雑食系活字中毒者のえりたが「おもしろい!」「好きだ!」と思った本をジャンル問わずにご紹介。売れ筋の本も、ひっそり輝く本もステキポイントをずっしり掴んで書いていきます。…
一か月で10本の書評を放り込みます。記事単体では300円ですから、マガジンの方が絶対にお得。また、…
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#国語

■面白さと「なんでやねん」①―『ヘルシンキ 生活の練習』

こんばんは。えりたです。 本日、読了した本はコチラ。 『ヘルシンキ 生活の練習』 ■朴沙羅 ■筑摩書房 ■ISBN:9784480815620 ■1800円+tax この本はTwitterで見かけて 購入した…のだと思います。 わりと前のことなので、 実はちゃんと覚えていないのですが(笑) 積ん読の山から この本を引っ張り出してきたとき まずタイトルに驚きました。 だって。 「生活」と「練習」の二つを 修飾/被修飾の関係で結んで使う単語とは 認識していなかったのです

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■果てしない想像力の破壊力―電撃文庫『タマとられちゃったよおおおぉ』

こんばんは。えりたです。 本日もラノベのお話。 『タマとられちゃったよおおおぉ』 ■陸道烈夏 ■電撃文庫(KADOKAWA) ■ISBN 9784049141474 ■640円+tax ものっそいインパクトを感じる タイトルですが(笑) 内容はこんな感じ。 読んでいると、 わりと昭和な抗争感あふれる場面が 何度も描かれています。 それこそ、 映画「孤狼の血」などで 交わされていたような なかなかにどぎつい台詞も 平気で飛び交いますし よく考えると(考えなくても) 相当に

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■知らずに読むことの愉悦―『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

こんにちは。 えりたです。 本日はコチラの小説のご紹介です。 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』 ■アンディ・ウィアー ■小野田和子 訳 ■早川書房 ■ISBN 9784152100702 ■1800円+tax 「小説のご紹介」と書きましたが コチラの小説は 何も知識のない状態で読むのが いちばんおもしろい、との前評判で。 私もそれを実践したのですが。 まさにその通りなんです。 ・・・ この作品を知ったのは 確かヤンデル先生のtweetが きっかけでした。

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■昔語りはわれのみやせん―ビギナーズ・クラシックス版『和泉式部日記』

えりたです。 大河ドラマ『光る君へ』第30話では、颯爽と「あかね」さんが登場しました。彼女は、のちに「和泉式部」という名で中宮彰子さまにお仕えする女性です。 和泉式部は、恋多き情熱的な女性と言われています。彼女の詠む歌は、その時々に心にぐっと来たものを素直に吐露したような、どこにも誰にもおもねることのない、まっすぐな気持ちを伝えるものが多く伝わっています。 そうして、彼女はたくさんの和歌と、『和泉式部集』『和泉式部日記』を残したのです。 個人的な思い出になりますが、『

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■よく生きるということ―『ぼくとがんの7年』

こんにちは。えりたです。 昨日読み終えたコチラの本の感想です。 『ぼくとがんの7年』 ■松永正訓 著 ■医学書院 ■ISBN 9784260049269 ■1800円+tax まずは、帯にある文言を引用します。 小児がん外科医である筆者が ある日突然、膀胱がんに罹ります。 そう。 診る側=医師が 不意に「診られる側」=患者に なってしまったのです。 本書は、 その時々の筆者自身の 身体的な変化、痛みの様子、 診断から手術、術後のことまで 時系列に語ります。

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■象の隣で眠る―『「帝国」ロシアの地政学』②

先日、前半部分の感想を書きましたが ようやく読み終えました、コチラ。 小泉悠 『「帝国」ロシアの地政学  「勢力圏」で読むユーラシア戦略』 東京堂出版/2400円+tax いやぁ、面白かった! というか、 日本という、四方八方を海に囲まれ 大陸の端にぺろっとくっついてるような 地勢に生まれ育った自分には 言われなければ、 意識しなければ、 「ロシア」の持つ焦燥感や大国観は 理解できないし、 想像も及ばないものなのだと痛感しました。 いや、だって。 ロシアって。 四方八方

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■今ひとたびの逢ふこともがな―ビギナーズ・クラシックス版『百人一首』

えりたです。 若い頃はその機微がまったく理解できなかったけれど、大人になった今なら何となく実感できる、身近に感じられる。そんなふうに変化したものが幾つかあります。みなさんにも、そう言われて思い浮かぶものは様々あるのではないでしょうか。 それらは、さまざまな経験がなしたものなのか、それとも生きた時間が醸成したものなのか。そのあたりの理由や理屈はよく分かりません。ですが、その変化のおかげで得た緩やかさ、穏やかさは、少なくとも私にとっては、とても温かなものでした。 さて、私の

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■ 前提がまるで異なる人を理解するということ―『「帝国」ロシアの地政学』①

今、起きていることを どうにかこうにか理解したくて。 理解するための取っ掛かりが欲しくて。 こちらの本を読み始めました。 小泉悠 『「帝国」ロシアの地政学』 東京堂出版 ISBN 9784490210132 本体価格 2400円(+tax) まだ、読んでいる途中なのですが それでも目から鱗が落ちすぎて 足元が煌めくほどに、学ぶところの多い本です。 たとえば。

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■「ただそこにいる」ことのたいせつさを―姫乃たま『永遠なるものたち』

色覚についての本を読み 色覚が人それぞれであると知ったとき 強烈な孤独感に襲われました。 隣りにいるこの人と まったく同じものを見ることはできない。 そして、その人が見ているものを トレースのように正確に知ることは 絶対にできない。 もちろん、感じ方は人それぞれで まったく同じことはない、なんて 当たり前のこととして 何の違和感もなく理解していていました。 それでも。 色覚について知ったとき感じた 強烈な孤独感は 私を奈落の底に落としたのでした。 それからずいぶん時間

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【読書note】あなたの「光る君」はだれですか―紫式部『源氏物語』

えりたです。 今日は、大河ドラマ『光る君へ』に関わる本のご紹介です。 以前、こちらの記事を更新しました。 こちらは、長い間『源氏物語』をはじめとした、平安時代の文学を研究していらっしゃる三田村雅子先生による『源氏物語』の入門書です。「100 de 名著」シリーズですから、書店で手に入れやすいですし、また、お値段もお手頃。なので、私にとっては、心からのおすすめ本♡ これを読むと、けっこう本気で「うわぁ…『源氏物語』読みたい…‼‼」ってなるですよ。しかも、大河ドラマ『光る君

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【読書記録】椎名誠『続 失踪願望。 さらば友よ編』―日常を綴ること。日々を愛おしむこと。

えりたです。 去年までは、本を読むのに「冊数」にこだわっていました。とにかくたくさん読みたい。だから、選ぶ本も手軽でささっと読めるものが主体になっていたのです。 それが今年に入ってから、なぜか、そういったざっくりとした集中力で読める本たちでは満足できなくなっていたのです。理由はいろいろありましょう。 たとえば、そういった本の文法にアタマが慣れきってしまって、読んでるときの感情の振れ幅が小さくなったこと。また、ありがたいことに、仕事が昨年よりも忙しく、手軽に一冊の本をざっ

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■自分のなかにある違和感をスルーしない―『言葉の展望台』

■『言葉の展望台』 ■三木那由他著 ■講談社 ■2022年7月 ■1300円+tax ■『言葉の展望台』について私たちは主に言葉を用いて、他者とコミュニケーションをとります。そのなかで、相手に伝わらなくてもどかしい思いをすることも少なくありません。あるいは、自分の伝えたいと思うことをうまく表現できず、のたうち回ることも多々あります。 また、日々さまざまな情報を目にするなかで感じる違和感があります。 なぜこの人はこんな風に言うのだろう。 あの言葉はいったい何を伝えようとし

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■歴史は勝者が描く―『藤原公任 天下無双の歌人』

2024年の大河ドラマ『光る君へ』。 1月7日に初回放送も始まり、私たちの期待以上の物語が展開されています。それを繰り返し見ながら、来週への期待に胸を膨らませていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。 そのなかで「藤原道隆公」をガチ推ししている私。放送開始前、井浦新さんが演じられる道隆公のお写真を見て、パトラッシュと一緒に天に召される勢いで沸き立っておりました。 が、実は、それを上回る高揚感をくださったお写真があったのです。それがこちら。 町田啓太さん演じる「藤原公任

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■1000年前のラグジュアリーを最新の研究から学ぶ―『紫式部と王朝文化のモノを読み解く』

大河ドラマ『光る君へ』は平安時代中期の物語です。年代で言えば、西暦1000年前後。今から約1000年前の時間を舞台にしています。 もちろん、同じく「日本」という国で暮らしていますから、1000年前と言えど、共感できるところ、身近に感じるところもたくさんあると思います。たとえば、春の桜を愛でる気持ち、あるいは、新年を迎える新鮮さ。そういったものは今も昔も変わりません。 ですが、やはり1000年の時間の隔たりは大きいと感じるところもあるのです。それは、衣食住など文化の具体的な

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