【読書】「汝、星のごとく」凪良ゆう
プロローグで提示される奇妙な家族関係の成り立ちが、2人の主人公・青埜櫂と、井上暁海の高校時代からの恋愛模様を描くことによって徐々に明らかにされていく。
小説のテーマにも流行りすたりはあって、この物語も御多分にもれず今の時代の王道をいく。
親ガチャ、
ヤングケアラー、
同性愛、
不治の病。
特に親ガチャものは私の一番苦手とするテーマで、青埜の母親は最後までほんと嫌だった。しかし、青埜の母親の馬鹿さ加減がないと、終盤へ向かってのある意味大団円が叶わない。
「凪良ゆう」の本はこれが3冊目。一番最初に読んだ「雨降りvega」の印象深かった心情描写が、この本でも通底されていた。
親ガチャものを読むと思い出す長男との会話がある。長男は大学生時代、バイトで個別塾の講師をしていた。塾がキャンペーンで無料体験講習を展開した際、一人の女子高校生が来た。休憩時間に交わした彼女との雑談を長男がその後だいぶたってから話してくれた。
「僕さ、『ジソウ』って言われて、『??それ何?』だったんだよ。『児童相談所』なんだってね。「児童相談所」って言われても実際それがなんなのかその時はよく分かってなかったんだけどね。
その子、何度もジソウにお世話になったことあるし、母親からの暴力から身を守るために空手とかの武道を複数習ってるんだって。そのお金は父親側の祖父母から出てるらしいけど。武道を習う他に、塾代も、って、難しいだろうね。
母さん、『親ガチャ』って知ってる?」
私が初めて「親ガチャ」という言葉を聞いた瞬間だった。親からの暴力から身を守るために武道を習うなんて、そんな現実が本当にあるんだと言葉を失った。
閑話休題。
2023年本屋大賞を取るだけはある、一気読みだったし、後味も悪くないのでお薦めしたい本。
映像化を期待したい。映像化されるなら「北原先生」が誰になるか一番気になる。
最後に、北原先生の印象深かったセリフを。