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カフェを創ろう。(最終編~エミュが生まれた日~)
土地は契約を交わした月から、家賃の支払いが始まります。
もう、立ち止まってはいられません。
まずは、「建物」を建ててくれるひとを見つけるところからです。
何件か建築会社を訪問してみるのですが、自分の好きな雰囲気のものがありません。伝手もコネもありません。一体、どうやって見つけたらいいのか?それさえも分からずに、土地を借りてしまった私。この頃の自分は本当に何にも知らなかったなあと思います。
ちょうど、【南仏のプロヴァンス風】を謳い文句にしていた建築会社を訪問すると、担当の人が、自分たち以上に乗り気になり、何枚かカフェの図案を書いてくれました。その図面を見ながら、イメージしたりしていたものの・・・。
ただ、しっくりとこない。だって、「○○風」だから・・・。
自分たちで建てるのだから、絶対に妥協したくない、という気持ちだけが、とても強かったのを覚えています。
通っていたアンティークショップで運命の出会い
自分のお店で使いたいものを、これまで2年くらいかけて集めていました。
神戸の学校の帰りに立ち寄った、雑貨屋で見つけたスプーンや、
アンティークの椅子、シャンデリア、ガラスのアンティーク食器なども、ほとんどが県外から取り寄せたものでした。
時には、Yahooオークションで、掘り出し物を見つけて購入したり。
ちょうどこの頃、地元にも唯一のカフェ併設のアンティークショップがあり、夫婦でよく通っていました。店内でコーヒーを飲みながら、自分好みのアンティーク雑貨を選ぶ時間が楽しくて!
私は、普段からアンティークものを見たり、買ったりしていたので、私の商品の選び方に目利きがあったようで、「絶対なにかするひとだ!」と店主さんは思っていたそうです。
ある日、全く言うつもりもなかったのですが、世間話のようになった際に、カフェをやるんです・・と口走ってしまったら。
なんと、ここの店主さんは、自らが買い付けてきたアンティークの什器を使い、建築デザインをしているということが判明したのです。(現在は、メインでデザインの仕事をされていますが、当時はまだ始めたばかりとのこと)
「よかったら、受けますよ。」
そんな流れになり、一気に風向きが良い方向に変わりました。
「アンティーク風」ではなく、「アンティーク」を使えることに喜びを感じました。
BOLTさんは、昨年、せかほしに出演されて有名になられたので、今は予約でいっぱいなのではないでしょうか。
年に2~3回ほど、南フランスへ買い付けに行かれてるBOLTさん。
建築デザインを決めながら、ドアなどたくさんの什器を仕入れてもらいました。それと並行しながら、私たちは、借入のための開業計画書も作り始めていきました。(開業計画書に関しては、こちらもかなり苦戦しましたので、また別記事で詳しく取り上げたいと思います)
什器がいろいろと揃っていく中で、土地の地鎮祭、そして基礎工事も始まりました。実は、地鎮祭を行うのは2度目の体験でした。結婚した際、すでに家を購入していたためです。(現在、家は売却しています)この時、冗談で、3度目があるんじゃないか?などど話したことを思い出します。
自分の中で、店舗の名前は【Cafe de ○○】に決めていました。
当時、カフェでアルバイトをしていた時のオーナーさんが、せっかくだから、店舗名を占ってもらったらどうか、と紹介してくれました。その頃の自分は、超現実派でスピリチュアル系は全く興味のない人間でしたが、なぜか、その時は素直に受け入れ、20分の鑑定を受けてみることにしました。
お店の名前をどうするか
鑑定を受ける際、実際にはものすごく緊張していた私。
実は、この時、建築が着工していたにもかかわらず、銀行からの融資がなかなか下りない状態だったのです。融資が許可されなければ、建てられない事態でした。わたしは、この鑑定の際に、「店なんて持てないよ」と言われるのが、内心怖かった。
すると、鑑定中に、こう言われました。
「店はずっと、在り続けるね。」
「でも、この店舗名では、インパクトが弱い。」
心の中で、「あ!店、建ってるんだ!」と喜びました。
店舗の名前は、「これから建築が進むにつれて、インスピレーションが湧いてくるはず。その時に思いつくでしょう。」と。
店舗のデザインが決定した日
BOLTさんから頂いた図案で、沢山のイメージができていました。
白い箱=角砂糖のように。そして、真っ白い壁は、月日を重ねるにつれて自然に色が落ち、アンティークのようになっていく・・・。角砂糖のような箱はシンプルで、中に入れば、木のぬくもりのある、日が差し込む空間。
ヨーロッパの建具なので、高さもかなりあります。
そして、一か月半後。
私たちは、お店の名前をSalon de Ému/サロンドゥエミュと名付けました。
Emu【エミュ】という単語に、感動という意味合いがあること。
Salon【サロン】は、フランスでは芸術家などが集まる場所であったということ。
この広場に、いろんな人々が集まれるように。
この空間が、お客様と私たちにとって、出逢いと感動を与えられる場所になりますように。
そんな願いを込めて。
2007年5月下旬。
自分たちのお店が生まれた瞬間でした。
ここから、とてもとても長く・・・険しい道のりを歩んでいくことになるとは、当時の自分たちには想像できなかったと思います。
現在も、コロナ禍で大変な状況ではあります。
でも、まだ存在し続けている奇跡があります。
夢と希望があれば、奇跡がおこるのだと、信じています。
どうやって、自分たちが乗り越えてきたのか、秘訣はなんだったのか。
今だから言えること・・・など、
これからお店を持ちたい方、夢を持つ方々の応援役として、どなたかのお役に立てばと思い、お伝えしていこうと思います。
ここからは、カフェ奮闘記のマガジンにまとめていきます。