【神護寺展】前期のみ展示…で見られて良かったもの (8/12まで)全体像と曼荼羅ゾーン図解
神護寺展の前期に行ってきました。ほぼ《見どころ》しかない展覧会でしたが、そのうち【前期でしか見られないもの】で、見られて良かったと特に印象に残ったものをあげていきます。【通期展示】のうち前期・後期で展示替えアリのものは「前期の方はこうだった」「後期はこう変わる」ということも含めて記載
【神護寺展の全体の感想】
「地味風」イメージの仏教系の展覧会でこんなに最初から最後まで色んな角度の感動、刺激があるのはそうそうないのでは… という充実感でした
前期後期どちらに行くか判断ポイント
混雑予測・対策もこちらに記載
【前期会場】大きくわけて5つのゾーン
①空海の書ゾーン(空海さんが生きていた実感)
②神護寺三像ゾーン(伝源頼朝像イケメン)
③空海の高雄曼荼羅ゾーン(奇跡がそこに)
④狂気の精密さ圧巻ゾーン(仏教への情熱 スゴ)
⑤仏像ゾーン(時間も場所も季節も忘れる)
1つのゾーンだけでも多種多様な展示にどれも驚き、次のゾーンに移るとまた全く別の刺激がやってくるという繰り返し。無限ループ。3周してしまった。体力が無限にあったらどうなっていただろう
【図解】前期 会場全体像
基本的に前期・後期この配置で、前期の②「神護寺三像」のところが後期になると後期メインとなるもの(風信帖と九隔帖?)に変わるというイメージだと思われる
▼入口から順路の順に紹介
【前期のみの展示】印象に残ったもの
【1】(国宝)観楓図屛風 狩野秀頼筆
入口すぐの屏風の絵…神護寺だった!
室町~安土桃山時代 16世紀 東京国立博物館所蔵
2022年の国宝展で見ていた屏風
描かれていたのは神護寺の景色だったと知った
やはり紅葉といえば神護寺なのだなぁと
⚫︎画面右奥の伽藍は京都・高雄の神護寺
⚫︎左奥の雪に閉ざされた参道
愛宕神社に続く道と見られ、一般に「高雄観楓図」と呼ばれている
【空海さんの書ゾーン】感動とまらない
◎神護寺展では「空海の書」傑作と言われる5点のうち
3点が展示され、そのうち前期で2点見られる
【2】(国宝)灌頂暦名 空海筆
平安時代 弘仁3年(812)神護寺蔵
これは厳密には後期の半分8/25まで展示のもの。ずっと見たかった空海さんの灌頂の儀式出席者リストメモ。現物を目の当たりにすると本当に自分はあの灌頂暦名を見ているのか?と不思議な気持ちに。1200年前に最澄さん他、たくさんの人に灌頂の儀式をしていたという証。本当に残っているのが凄い。伝説の人のようだけれど確かにこの世にいらっしゃったということがミスしている文字からリアルに感じられる。
しっかり「最澄」「泰範」の名前 ↓「数字の打ち間違え」などチェックしてきた。後半がやっぱり面白い~
【3】(国宝) 金剛般若経開題残巻 空海筆
奈良国立博物館所蔵(平安時代 9世紀)
風信帖と共通する自然体の字。綺麗な字だなぁと「一文字 一文字」味わった。有栖川家、高松宮家伝来のもの
【4】(重要文化財) 崔子玉座右銘断簡 空海筆
東京・大師会所蔵
これは初めて存在を知ったもの。今まで見た空海さんの文字で一番大きい。まさに書道という感じ。躍動感があって、生きている感じ。筆が踊っていた。これは何度も見たい字。見られて良かった〜。所蔵先「大師会」とは?気になって調べたところ、お茶会のことだった。この重要文化財の書を掛けて行うお茶会!なんて贅沢なのだろう(今も掛けているのだろうか?)
【空海さんの絵巻】神護寺でのシーン
弘法大師の生涯を描いた伝記絵巻が「前期」「後期」で所蔵先の異なるものが展示される。前期は東寺、後期は地蔵院のもの。図録によると展示されるシーンは前期後期いずれも神護寺(高雄山寺)に関わる場面
【5】(重要文化財)弘法大師行状絵 巻第六
南北朝時代 康応元年(1389)
京都・教王護国寺(東寺)所蔵
空海の神護寺での事跡を描く巻第六のうち、
第二段「高雄練行」と第三段「伝教灌頂」2つのシーンを展示。紅葉とともにに描かれる神護寺の風景。最澄らに金剛界、胎蔵界の灌頂を行う様子を描いている
第二段「高雄練行」
空海と八幡神がお互いの姿を絵で描きあった「互御影」という説話の場面
第三段「伝教灌頂」神護寺での灌頂の場面
屏風の側に立つ空海とその隣に赤の頭巾を被った最澄が描かれる ↓ NHK「ザ・プロファイラー」空海の回に出てきたこの場面が展示されている
ちなみに「弘法大師行状絵」の別の巻にあたる「巻第三」のシーンが2024年6月まで開催されていた奈良博の空海展ポスター”海を渡り唐に向かう空海さん”の絵 ↓
神護寺「復興 立役者」の書と肖像画がアツい
【文覚上人の直筆】見られるのは前期だけ
※後期では国宝「文覚四十五箇条起請文」が展示されるが、文書の起草を文覚上人が行い、清書を別の人が書いているもの。後白河法皇の手形付
【6】(重要文化財)文覚上人書状案 文覚筆
建久8年(1197年)6月11日
「神護寺の八幡大菩薩の画像が岩清水八幡宮に渡るのを阻止したい。両界曼荼羅は後白河法皇の院宣で神護寺に戻り…五大虚空蔵菩薩も戻ったという例もあるので何卒」と鎌倉幕府の訴訟担当の三善康信宛に訴えている内容
空海さんや源頼朝の字はけっこうな崩し字で読めなかったけれど、文覚上人の字は比較的読めた。この書状にかれた両界曼荼羅(高雄曼荼羅)も五大虚空蔵菩薩も800年後の展覧会で見られている感慨深さ。「文覚さんの必死の復興のおかげで今見られますよ」と
【7】(重要文化財)源頼朝の書状 3点
◼️源頼朝寄進状 平安時代 寿永3年(1184)
神護寺復興の経済的基盤の一つとなった丹波国宇津荘の寄進状
◼️源頼朝下文 平安時代 元暦元年(1184)
藤原康通の所有する紀伊国神野真国荘に丹生屋八郎光治なるものが領地を妨害するのを止めさせるよう定めた頼朝の下文。神野真国荘は後に神護寺に寄進された
◼️源頼朝書状 平安時代 12世紀
平家の時代はさまざまな狼藉があったが、頼朝の時代になって以降は、その誤りを正し元のように神護寺領として頼朝が保障する旨、文覚に宛てたものなど計3通
【伝 源頼朝像】前期の主役に感動!
【8】神護寺三像(伝源頼朝/伝平重盛/伝藤原光能)
日本の最高傑作の肖像画
本当に美しいなぁと、頼朝の書状を見た後なので、よけいにテンションが上がった。2023年のやまと絵展で初めて見た時は見上げる感じの展示。今回は同じ目線でしかも距離が近かった。ガラスに接近して見入ってしまった。何度見ても素晴らしい
【曼荼羅ゾーン】時代を超えた思い集結
両界曼荼羅という名前のとおり胎蔵界と金剛界の二つからなる。展覧会の主役「空海制作の高雄曼荼羅」は前期と後期に分けて展示
【9】(国宝)両界曼荼羅(高雄曼荼羅)胎蔵界
⚫︎空海さんの曼荼羅は前期か後期どちらかを見られればいいかなぁと思っていたけれど…曼荼羅ゾーンの展示構成を知ると前期「胎蔵界」も後期「金剛界」両方見たいと思わせられた
《1200年前空海さんが作った高雄曼荼羅(胎蔵界)》と《江戸時代に光格天皇が作ったその完全コピー》が横並びで展示されているので見比べられる。高雄曼荼羅の元の姿の色や精密さはこうだったのか…と驚きが増す
※光格天皇コピー版は通期「胎蔵界・金剛界」両方展示
※よって後期は「金剛界」を見比べられる
【高雄曼荼羅は2回天皇に修理をされている】
修理した天皇にまつわるものが同じ空間に展示
二人の天皇も無事現代まで受け継がれて喜んでいるはず
◼️鎌倉時代後期 後宇多天皇が修理
→前期のみ
後宇多天皇(自筆)「高雄曼荼羅修理記録」展示
◼️江戸時代後期 光格天皇が修理
→通期
江戸時代に新調した高雄曼荼羅収納箱展示
【10】(重要文化財)高雄曼荼羅図像(胎蔵界)
巻第一、巻第三、巻第四、巻第五
(白描画)長谷寺所蔵
⚫︎展示スペース 「一列でけっこうな長さ」展示
⚫︎平安時代後期に空海制作の高雄曼荼羅の図や絵を残しておくために作られたもの
⚫︎前期「胎蔵界」後期「金剛界」分けて展示
⚫︎「一発勝負で描いたのすごい〜」と見入る
江戸時代 光格天皇制作の両界曼荼羅(胎蔵界)で発見!カニの位置
胎蔵界 左上の黄色枠あたりにいました
平安時代 空海制作の高雄曼荼羅(胎蔵界)のカニは…
映像解説コーナーで分かったのが、カニ部分は銀泥で酸化してX線写真でしか確認できない模様。カニの位置は分かったけれど現物を単眼鏡で見ても見えなかった〜
カニ探しは前期の楽しみポイントかと
果たして後期はどんな面白があるのか無いのか
※両界曼荼羅(髙橋逸斎筆)江戸時代 知恩院所蔵
強烈に小さく細かく描かれた高雄曼荼羅のミニ版コピーが通期で展示されている。そこにもおそらくカニがいたということだ。後期に行ったら確認したい
神護寺展では空海さんの高雄曼荼羅をもとにした
4パターンの高雄曼荼羅コピーが展示されている
・平安時代の高雄曼荼羅コピー(紙に白描画)
・江戸時代の高雄曼荼羅完全コピー(布)
・江戸時代の高雄曼荼羅ミニ版コピー(紙)
・明治3年 高雄曼荼羅のコピー(版木)
どれも脅威の細かさで再現されていて全部驚く。熱意っ
(参考)空海展の曼荼羅解説パネル ダウンロード可「マンダラには何が描いてあるのか?」ちょっと難しい両界曼荼羅の世界を、分かりやすく紹介
【地図ゾーン】は楽しい
神護寺に関係する平安時代からの貴重な地図が複数展示
前期と後期で展示が異なる
教科書に掲載されている地図は前期!
【11】(重要文化財)足立庄絵図 神護寺所蔵
⚫︎平安時代に後白河法皇に寄進された際に作成された絵図とみられ、のちに神護寺に寄進された
平安時代に描かれたものであるのに古さを感じない
これは見られて良かった
【12】(重要文化財)紀伊国桛田庄絵図 神護寺所蔵
⚫︎鎌倉時代に描かれた荘園の地図
⚫︎「日本史の教科書でおなじみ」
⚫︎後白河法皇から神護寺に寄進された荘園
自分自身は教科書の記憶は無いけれど見入ってしまった
↓(参考)展覧会画像の8ページ目
以下は通期展示のものなので9月8日まで見られる
【番外編】通期で見られるけれど印象的
入り口で神護寺の洗礼を受ける
まずは入り口
神護寺ご住職による【神護寺】と書かれた書。神護寺創建1200年の「今」を感じる。展覧会の中の人が登場。いいなぁと。ご住職揮毫の様子↓
【会場入ってすぐ】神護寺再現コーナー
(重要文化財)弘法大師像 通期
鎌倉時代1302年(正安4年)につくられた弘法大師の板彫の像。神護寺「大師堂」のように展示。展示の前面上部に「神社でよく見かける御簾」が掛けられ、神仏習合的だな~というインパクト。神護寺のご開帳の時期に一年で7日間だけ一般公開されているものが、間近でしかも通期で見られる
【狂気の精密さ圧巻ゾーン】多方向の細かさ
会場2部屋目の高雄曼荼羅の次、3部屋目にあたる場所
平安時代に作られた経典の書写とその入れ物
(重要文化財)大般若経 巻一巻ニ 神護寺所蔵
ここで綺麗〜!凄いな〜!と言ってる人多数
これはイメージとして参考まで法華経バージョン↓
(重要文化財)紺紙金地一切経経峡 平安時代
神護寺所蔵、他
大般若経を入れる布。色々な種類の光沢のある布があって色もカラフル。ところどころほつれたりしているけれど織り目を見て感動。糸が綺麗だからほつれも綺麗。やはり布は保存が難しいのだろうなと。平安時代の織物が伝わっていることにただただ感動
見ると うわっ!と立ち止まらずにはいられない2点↓↓
⚫︎両界曼荼羅(髙橋逸斎筆)江戸時代 知恩院
高雄曼荼羅の縮小版 紙に書いたもの
嘘みたいに細かい曼荼羅の衝撃。近世京都の文化人を集成した「平安人物志』に記載もある細密な仏画を得意とした画家によるもので、数多くあった高雄曼茶羅を写した図像のなかでも正しくその姿を伝えたものだという。これほどの画力の絵師……他の絵もとても気になる。
どんな筆で描いたのか、均一な線 人間技とは思えない ↓実際のサイズは小さい中にぎっしり書かれていて現物見て驚かない人はいないレベル。画像クリックして拡大して見られる!!これは衝撃
↓1089トーハク ブログにも掲載
⚫︎高雄曼荼羅版木 明治3年 仁和寺
高雄曼荼羅の図を元に彫った版木
脅威の細かさに皆足を止めて驚嘆していた
展示は2枚。板木は胎蔵界金剛界合わせて300枚以上もあるという。正しい曼荼羅を伝えるために9ヶ月かけて彫られたという。明治3年に何があったのだろうと思わずにいられない熱量
【仏像ゾーン】時間も場所も忘れる神聖さ
息を呑み自分を忘れるような異次元空間だった
こういった体験って他にあっただろうか??レベル
⚫︎(国宝)五大虚空蔵菩薩
フォルムと全方位のお姿が可愛らしいなぁと。それでいて洗練されていてイキな感じ。何周したことだろう
立体として表現された曼荼羅の配置。素晴らしい
ここは宇宙、
⚫︎(国宝)薬師如来立像
薬師如来立像のお姿に感動しきり
場の空気が明らかに変わっていた。しっかり向かって右側の衣のドレープ見てきた。ただただ美…彫った方天才
ご本尊が東博で見られる体験はプライスレス
⚫︎十二神将立像
ひたすらにかっこいい
⚫︎二天王立像 フォトスポット
神護寺の楼門で参拝者を迎えている像
平安時代後期作で外にあるにも関わらず、これほど綺麗なのはすごい。足元に注目
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神護寺に実際に行ってきました
神護寺の山登りの難易度の実態