2020年8月11日 内閣官房IT総合戦略室が 「世界最先端デジタル国家創造宣言」を発表 -社会全体のデジタル化と教育現場のICT活用は どう進むのか?
今、一般的なニュースの中でもよく聞くようになった「DX(デジタルトランスフォーメーション)」だが、この「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」という概念の元に、日本でも令和2年7月17日に「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室より基本計画として閣議決定された。これまで取り組まれてきたIT戦略から、これからの社会全体のデジタル化を加速する「社会実装プロジェクト」と「GIGAスクール構想」を含めた教育現場でのICT導入がどのように繋がるのかみていきたい。
国で出されたIT新戦略基本計画では、
1.G20を軸とした国際対応(例:信頼性のある自由なデータ流通(DFFT))
2.社会全体のデジタル化(例:全省庁・全産業デジタル化、行政手続デジタル化)
3.社会実装&インフラ再構築(例:5Gと次世代信号・自動運転との連携)
と目的が定められた。
全ての国民が安全・安心に、デジタル化の恩恵を享受する「Society 5.0時代」にふさわしいデジタル化の条件として下記の5つを上げている。
(1)国民の利便性を向上させる、デジタル化
例 スマホ等により、国民は役所に出向かず、行政サービスを手のひらで完結
まずは、子育て、引越しから介護、死亡・相続等までの代表的なライフイベントに係る手続等のデジタル化
(2)効率化の追求を目指した、デジタル化
例 行政運営の効率化、労働時間の短縮、
事業活動の合理化に資するBPR・システム改革
国・地方電子化が、個人・企業への相乗効果で効率化が進む社会
(3)データの資源化と最大活用につながる、デジタル化
例 機械判読性(machine-readable)・発見可能性(findable)がデータのAI分析の要件
クリアランス(認証)を確保し、企業間のデータ共有が進み、生産性向上に
民間主体のデータ流通を前提に、国はその環境整備とオープンデータ化を推進
(4)安全・安心の追求を前提とした、デジタル化
例 スマホからIoTセンサー普及へ。ネット接続機器は幾何級数的に増加
生産性向上とチャレンジを支えるセキュリティの確保は、安全・安心なデジタル社会の礎となる
(5)人にやさしい、デジタル化
例 デジタル化により、取り残される人があってはならない。デジタル化は、あくまでも安全・安心・豊かさという大目標達成のための手段
活力のある社会に向け、デジタル・インクルーシブな環境を作り出す
上記に関連し、重点取組である「世界を牽引する先駆的取組の、社会実装プロジェクト」として、広範な分野における「実装プロジェクト」を推進しており、それぞれの社会課題とそれらに対するデジタル利用に期待される効果について、基本計画の中では下記のようなイメージをしている。
そのためにまず5G等インフラ再構築、基盤技術AI、セキュリティ対策、スタートアップ、オープンイノベーション、人材育成、デジタル格差対策といった、社会基盤の整備を進めるとし、そこからデータを新たな資源として活用しつつ、国・地方・民間の効率化を徹底することで、産業活性化や柔軟な働き方(テレワーク&シェアリング等)を可能とし、従来の社会システム上での負担の軽減に向かう方針だ。
このように「農林水産分野」、「健康・医療・福祉分野」、「湾港分野」のみならず、社会全体の課題についてデジタルトランスフォーメーションを進める事によって国民一人一人が恩恵を受けることができる世の中にしていくという。
この方針に伴い、5Gによるインフラの再構築やデジタル弱者に対する各種支援策、人材育成等を推進するため、
スマートフォン等のICT機器・サービスの高齢者等向け相談機会を提供するデジタル活用支援員の仕組みについて、全国へ横展開
2030年には12.4万人不足すると試算されるAI人材の確保に向けて、「AI戦略2019」に沿って、リテラシー教育やエキスパート教育による人材育成を推進
「子供の力を最大限引き出す学び」を実現するため、遠隔教育やデジタル教科書等、学校・教育現場におけるICT環境の整備を一層促進
地域で子供、障害者、高齢者等が、プログラミング等に触れる新たなコミュニティとしての地域ICTクラブについて、設置・運営のためのガイドラインを本年度末までに策定
という施策を施行するとしている。
これから子供たちがデジタル化の恩恵を享受していく社会で「生きる力」を育むため、小学校の指導要領が約10年ぶりに改訂された。学びの内容が進化していることも、デジタル化の大きな流れに沿って進んでいる社会全体において、「GIGAスクール構想」を含めたICT導入が早急に求められている所以であるといえる。そして、不安を緩和し、積極的に取り組むための支援は先生方と生徒両方に必要であり、教育現場でのデジタルトランスフォーメーションを支える人材育成や、教育のデジタル化が必然的に優先順位の上位となっている。
すでに導入している学校や協力企業からは、環境整備、研修に加え、サポート体制充実の必要性が口々に上がっており、「GIGAスクールサポーター」などの配置も急がれている。ICTは「教育のための道具」であり、実際はそれを使いこなし充実した授業を行う「教育者」へのサポートが途切れることなく受けられる事業スキームが肝心だ。このサポートがある事によって「負担感」を減らし、ICT活用のマインドセットができ、移行をスムーズにすることができる。
ある中学校ではすでに取り組みを始めており、「電子黒板」をより理解しやすい授業作りに活用し生徒の自主的な学習に繋げている。気軽にトライ&エラーしやすい学びの環境が実現し、失敗することを怖がる子供たちへの心理的サポートの役目も担っている。
今後はさらに教員への十分なサポート体制を整えることで教育現場でのICTの活用が進み、新しい社会が構築され発展していくことだろう。
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