読書記録:デート・ア・ライブ19 澪トゥルーエンド (ファンタジア文庫) 著 橘 公司
【私にとっての真実と添い遂げる事が幸福だと信じて】
祟宮澪によって齎された最悪な結末を塗り替えるべく、過去に戻った士道が始原の精霊を宿す令音と対話を試みる物語。
令音は、眠る度に同じ悪夢に魘される。
祟宮真士が、絶望的に死ぬ光景を。
始原の精霊、澪は全ての精霊の生みの親にして、真士の亡骸を吸収し、士道として産み直した存在。
複雑な前世が絡まりながら、令音と士道は母と子の関係で。
士道を真士に戻すべく、澪はある野望を見据える。贖いきれない罪を犯し、幾人を不幸にしてきた災厄。
世界の命運を懸けたデートの始まり、黒幕であるウェストコットとDEM社の野望の終焉が開始される。
澪の暴威に追い込まれた士道。
しかし、最後の最後に狂三の精霊の力、『六の弾』の力を用いる。
精霊達を全て殺され、絶望の淵に立つ士道に残された、決戦前への時間遡行。
最終決戦の前に戻って、始原の精霊相手にデートをしてデレさせる、これまで通りの戦いを始める。
精霊達のサポートも受けながら、崇宮澪と向き合おうとする士道。
真士と澪、士道と令音という同一人物でありながら別人格でもあるという特殊な関係性。
崇宮真士でなく五河士道として澪を惚れさせる為に振る舞う士道。
決して蘇らない真士を士道として、再び産み落とした澪。
たとえ、全てを壊しても、その未練をどうしても成就させたい。
それまでは死ぬにも死にきれない。
永きに渡る一つの想いに妄執して。
時空を越えた澪の儚くも切ない恋。
目覚める事のない甘美で幸せな夢。
しかし、士道はそれを踏まえた上でこう言ってのける。
「真士じゃなく俺を選べよ」と。
輪廻楽園の中で交わされるやり取り。
確かに、澪にとって士道が一番の存在になれば、自死を選ぶ必要もないし、真士を取り戻す為に世界を壊す必要もない。
「自分の為に死んで欲しくない。どんな形でもこの世界で生きていて欲しい」と。
切実な想いを秘めた真士から澪を託された士道。
そして、士道はもう一度初心に戻る。
「デート」とは親しい男女が取り決める約束。
「アライブ」とは、活動的に生きる事。
澪が真士を取り戻す為に死ぬ事を選ぶのは、それらの意味から、かけ離れるし、ハッピーエンドでもなければ、トゥルーエンドでも決してない。
絶望的な状況をやり直して、澪の霊力を封印する為に、士道は令音とデートする。
「死んでしまった人を元に戻す事は出来ない」
「亡くなった人に囚われる事はその人自身も望んでない」
「もう自分の事は忘れて、君は君自身の人生を生きて欲しい」
士道、令音、さらに真士もいる仮初のユートピアで澪はそれらを懇懇と思い知る。
哀しい運命を辿ってきた彼女の手を引いて、その純愛に終止符を打つ、救いのある楽園を目指す。
死力を尽くした、心からの説得に講じた。
しかし、その想いとは虚しく、澪は真士の純愛を貫いて、消失する。
居なくなった真士と添い遂げるという本懐。
自らが終わる事に救いを求めた澪の待ち望んだトゥルーエンド。
これが果たして正解だったのか?
徒労感に苛まれ、無力に立ち尽くす中で、消える寸前だった澪の霊結晶を掴んだ十香。
一途な恋物語は決着がついたが、十香はその力で反転してしまう。