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読書記録:ウォーゲーム・ハイスクール (MF文庫J) 著 猿ヶ原

【立ち向かうべきは過去の自分、最強を超える為の頂】


【あらすじ】

世界中が熱狂する『ウォーゲーム』において「不敗」の名を冠するプレイヤー《IS》。
彼は僅か十四歳で全ての名声を手にしたが、事故によって、ゲームに関する記憶を喪失し、表舞台から姿を消した。

数年後、一般人として第二の人生を歩んでいた《IS》こと稲荷白斗の前に、大人気インターネットアイドル、小指結が現れる。

「センパイは、負けるのがこわいんですよね?」

結に導かれるようにバトルゲームへの想いを取り戻した白斗は、完全実力主義のゲーマー養成学校「ウォーゲーム・ハイスクール」への入学を決意する。

そこに待ち受ける百戦錬磨なライバル達、そして何よりも。
過去の栄光の自分を超える為の、VRバトルゲーム学園サバイバルが始まる。

あらすじ要約

世界が熱狂するVRバトルゲームで、頂点を極めた少年が事故で記憶を喪失する事で、少女にゲーマー養成学校に誘われる物語。


TCGからボードゲーム、ソーシャルゲームにそれこそTVゲームと言った風に、この世界には様々な種類のゲームが存在している。
寝食を忘れてゲームにのめり込む人もいるし。
暇潰しに楽しめれば良いと考えるエンジョイ勢もいる。
ゲームに対するスタンスは、十人十色であるが。
どんなゲームでも、真剣に取り組めば面白く感じるのが事実だ。

フルダイブ技術。
それは、夢と現実の垣根を超越した人類の理想郷。
時代のトレンドである、e-sportsを国技にする為に才能のある者達を競わせる世界で。
2020年代中期、「VReスポーツ主要十か国対抗戦」という世界中を巻き込んだ仮想空間内スポーツの祭典。

ウォーゲーム。
このゲームは、今でいうとe-スポーツのような物であり、戦略の構築や仲間との連携、個人の突破力など、様々な要素を駆使して勝ち進めるゲーム。

しかし、世界とそれを競う中で、日本は最下位という汚名を背負う事になる。
新時代の到来を祝う中で、日本は力無く肩を落とした。

そこで、日本で擁立された「進化の箱計画」と呼ばれる計画。
それは、黄金成長期の子供達に義務教育の代わりにゲームに関する英才教育を受けさせる、という物である。
そんな中で救世主となるISの登場で、栄冠へと返り咲く。

大人もAIも慄かせ、表舞台に登場してすぐにあらゆる大会を無敗を貫いたIS。
一世を風靡した彼だったが、事故により記憶を失う。
夢中になれる物を失って、魂の抜け殻のように虚脱した毎日を送る日々。

そんな、一般人として第二の人生を、白斗という新たな名で、エンジョイ勢として歩んでいた彼が、「ウォーゲーム・ハイスクール」への招待状を持ってきた結に一度は断るものの、その挑発を受け取る事で。
怒りの琴線を刺激された彼は、結との勝負として彼女が指定した「初心者お断り」と呼ばれる格闘ゲームにダイブする事になる。

そこで、結はまざまざと目撃する。
エンジョイ勢、などどいう生ぬるい皮の下に隠されていた獰猛なゲーマーとしての本性を。
戦いの火花を散らせる中で、錆を落として、復活していく怪物の姿を。
どうしよもなく、胸にわくわくがこみ上げてくる予感。
それは、白斗の胸の中にも、生まれていた。
再び、ゲームへの情熱を取り戻した彼は「ウォーゲーム・ハイスクール」の「特別招待生試験」の門を叩く事を決めた。
多くの好敵手達が、鎬を削る中へと飛び込んでいく。

挑発してきた結に導かれた先で、取り戻したバトルゲームへの想い。
結の導きによって、ISは白斗として、ゲーマー養成学校であるウォーゲームハイスクールへ入学試験に挑む。
しかし、そこは百戦錬磨のゲーマーの猛者達が集う学校。
そして、強き者が正義とされる圧倒的に、完全実力主義の学校であった。

どれだけ先を進んでも待っているのは、完全実力主義に裏打ちされた戦争のような日々。
強さを求める戦いには、果てがなく、終わりがない。
だけど、もう退く事はないし、逃げる選択肢は残されていない。

その学校に入学する為の、特別招待生選抜試験にて。
同じ選抜組のカイやメリーとチームを組んで、難関を突破していく。
目の前に立つのは、自分よりも圧倒的に格上な強敵達。
ライバルであるカイとユウガが立ち塞がる。
しかも、白斗はゲームに関する知識を全て失っている。

しかし、それがどうした?今の俺を見ろ。
「IS」ではない、俺というゲーマーを見ろ。
そう言わんばかりに白斗は、咆え滾り、縦横無尽に舞い踊る。
それは、自己顕示欲に裏打ちされた、ゲームを楽しむと言う純粋な心。

確かに、かつての経験は失われてしまった。
身体は、感覚を覚えていない。
だが、まるでスポンジが水を吸い込むように、凄まじい速度でゲームに関する全てを吸収していく。
事故で身につけた、光速の先すらも捕らえて、光すら遅すぎる、世界を捕らえる力を武器に、戦い抜く。
その類まれなる瞬発力で、他の追随を許さないプレイスタイルを確立する。

無意識的に過去の自分のISと、今の自分を比較してしまって、勝ち負けを恐れていた白斗。
そんな風に怯えていた白斗に結が発破をかける。
一から始め直さなければならない苦況下で。
過去の実力や技術の一端に頼る事なく、ゲームを突き進める中で、徐々に取り戻すゲーマーとしての感覚。

それは、無敵だった過去の自分を超える為の戦い。
たとえ、この才能が後天的な物であったとしても。
負けず嫌いで、ゲームを楽しむ事を第一優先に考えられるプレイスタイルは、間違いなく今の自分にとっての誇れる武器。

その目の覚めるような熱い闘志に、ライバル達や仲間達も感化されていく。
負けても良い、楽しみながら最後に勝てば良い。
だって、ゲームは勝ち負けを競う物じゃない。 
自分が楽しむ物だから。
勝って楽しいのではなく、全力で楽しみながら勝つ。

それに気付けた白斗は、かつての不敗を捨て去り、ゲームの楽しさを再認識する。
その無邪気な笑顔と熱が、周囲に伝播していく。
究極の熱は、周囲をも巻き込み、まるで火種のように周りを発火させる。
ゲーマーとして産まれ持った宿命を抱えて、業火の中へと飛び込み、見る者全てを魅了していく。

世界最強と謳われながらも、全てを失った挫折と屈辱。
それでも諦めきれず、この世界に舞い戻った覚醒と成長。
その全てを背負いながら、今、白斗はこの舞台に立っている。
自分は此処にいるんだと、力を示して、存在証明する。
その悪戦苦闘を潜り抜けて、無事に特別招待生選抜試験を通過した先で、学校入学の片道切符を手にする。
だが、この道行きはまだ通過点に過ぎない。

このゲームの猛者が集う学校で、卒業するまで生き残らなければならない。
ライバル達はまさに魑魅魍魎。
しかし、過去の栄光の自分を克服して。
絶対に昇華してみせる、この熱き想いを。
自分がいるこの場所が、時代の転換点であり、新時代の黎明期となる筈だから。

ゲーマーの為の学校で、蠱毒の壺のような戦いの果てに、最強の頂に辿り着けるのだろうか?









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