読書記録:ぼくたちのリメイク11 無駄なことなんかひとつだって (MF文庫J) 著 木緒 なち
【やり直して作り直した日々に、無駄な事なんて一つもない】
芸大を卒業した恭也は、広告代理店の社長になったが、河瀬川の連絡でゲーム企画協力から再起する物語。
創作の世界に未練を残しながらも、別の世界へ旅立った恭也。
華々しく活躍していく同期達を尻目に。
己の才能の限界を感じ、エンタメ業界から逃げるようにして去ってしまった。
シノアキや貫之、ナナコ達のチームから脱退。
しかし、河瀬川の連絡で、チームきたやまの近況を知り、蓋をした感情と向き合う。
己にもう一度やり直す資格があるのかを葛藤して。ゲームは売れなければ意味が無い。
それでも、それ以上に大切な事を仲間が教えてくれた。
ずっと仲間達は彼の帰還を待ち望んでいた。
回り道をしたけど、それも経験と糧になった。
回り道したからこそ、大切な事に気付けて、自分にとっての夢の価値が分かった。
一度離れてみて、感じた事があった。
人の流す涙の痛みが理解出来た。
もちろん、時間は巻き戻らないし、奇跡も簡単には起こせない。
でも、仲間達との邂逅が、その諦めを根底から揺り動かして、どうしてもこの昂りを抑えきれない。
本当は心を焦がすくらいに熱くなりたい。
もう、この気持ちに嘘はつきたくない。
道は違えたけど、辛うじて繋がった蜘蛛の糸のような細い繋がりが、情熱の炎を再び燃やさせる。
誰に強制される訳でもない。
自分がやりたいから、自発的に行動する。
その為の労力は、いくらだって厭わない。
だって、自分で選んだ好きな事だから。
抱えてきた想いや紡がれてきた歴史、過ごした時間の重みが意味を持ち始める。
互いの歯車が噛み合い、大きな物語が再び動き始める。
そして、動き出す『ミスティック・クロックワーク』のリメイク。
そんな想いを個々それぞれが抱いて、その想い故に、必然の如く惹かれ合い、一度挫けた夢を本物にするべく足掻いていく。
幾度と形を変えて、そのたびに何度も拾い直してきた。
生きてさえいれば、何かを始めるのに遅すぎると言う事はない。
その言霊を推進力にして、恭也達は創作の世界へとのめり込んでいく。
斎川もナナコも火川もタケナカも、皆それぞれが昔より有名になって忙しい筈なのに。
自分の為に再び集ってくれたドリームチーム。
そんな最強のチームが再結成されても、立ち塞がる問題は山積みで。
予算、人員、作る意味、他者の評価。
さらに必死に食らいついている最中に、現サクシードの茉平社長までもが、異議を唱える。
それでも、この企画は何としても通したい。
皆の努力の結晶が詰まった、自分にとってのかけがえのない生きた証だから。
やりたい事をやりきれずに終わる虚しさよりも、怖い物なんて、この世界にはない。
だからこそ、己が身を削って、与え尽くして、全てを出し切ろう。
それがきっと、自分にとっての幸福だから。
このチャンスに全てを捧げる。
諦めてしまった夢を共に叶えよう。
皆で最高の作品を創ろう。
絶対に何とかしてみせるから。
絶対に無駄になんてさせないから。
そんな恭也の力強い生き様が、どのように花開くのか?
必死に駆け抜けた集大成の行き着く先とは?
集った仲間達と今度こそ、最高の作品を創り上げられるのだろうか?
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