各種資格試験のためのやさしい『憲法学Ⅲ』(人権各論・経済的自由権・人身の自由他編)
各種資格試験のためのやさしい『憲法学Ⅲ』(人権各論・経済的自由権・人身の自由他編)
第1章 経済的自由権
1. 経済的自由権総論
① 二分論(積極的規制・消極的規制に対する違憲審査基準を二分する)
経済的自由、とりわけ職業選択の自由に対する規制立法には、精神的自由の規制の場合と異なり、合憲性の推定が働くと考えられます(合理性の基準)。
民主制の過程による是正が可能だからです(二重の基準論)。
そして、当該規制立法を「経済的・社会的政策実施のため」のものである場合(積極的規制)と「社会生活における安全の保障・秩序の維持等のため」のものである場合(消極的規制)とに二分して、違憲審査基準のあり方を考えるのが判例・多数説の立場です(二分論・規制目的二分論という場合もあります。)です。
② 積極的規制に対する違憲審査基準(明白性の基準)
積極的規制を内容とする立法については、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが妥当です(明白性の基準)。
経済的・社会的弱者救済のための政策も必要であり、そのような政策の必要性からあえて規制する場合、その規制の是非は、政策的問題となるため、裁判所の判断になじみません。そのような判断を担当するのは、裁判所ではなく、政治部門だからです。
よって、当該措置が著しく不合理であることが明白な場合に限ってのみ裁判所はこれを違憲とすることができるということになります。
③ 消極的規制に対する違憲審査基準(厳格な合理性の基準)
消極的規制を内容とする立法は、一定の、害悪発生の危険の存在が前提となっており、当該危険を除去するための必要最小限の手段・程度による規制が求められます。
危険を除去するための必要最小限の手段・程度であるか否かについては、政策判断の余地があまりないため、司法判断になじみやすいという特徴があります。
よって、裁判所は、積極的規制の是非の判断に比べてより厳格に審査を行うことができます。
この場合に用いられる違憲審査基準を「厳格な合理性の基準」といい、内容的には、LRAの基準とほぼ同じものです。
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