オーケストラとの一夜限りのコラボレーション:千住明の世界
これからも、自分を信じて
千住明さんの楽曲にはドラマがある。千住さんの指揮棒に誘われて、音楽という物語りの中を旅した夜だった。
千住さんの音楽の世界には緑や風の成分が多い。東西で言うなら、西洋度が高い。湿度が低いからだろう。スコットランドを思い出した。
昨年が、60歳でアーティスト活動35周年という節目の年だったという。
コロナで様々な催しはキャンセルされた。
アーティストがアートを作る場が突然無くなった2020年を経ての、今、音楽を奏でられる喜び。表現をすることの尊さ。
それを寿ぐ場として、大好きな方々とのコラボレーションを千住さんは企画なさったのだろう。
嬉しそうに各アーティストを紹介する千住さんが(失礼を承知で言うのだが)とても可愛らしかった。とっても大好きな方々ばかりをお招きしたのだろう。
MCが長い為、妹さんの千住真理子さんを含め、何人かの方々が「巻いて!まいて!」と急かすも、千住さんからはどうしても伝えたいことがどんどん溢れ出す。結果、早口にはなるが言葉は減らない現象が起きていた。
一旦自分のマイクを置き、話し続ける千住さんを苦笑をしながら見守るアーティストさんたちの佇まいが印象的だった。
アートは、衣食住の次に、というものではない。私はそう信じている。不要不急のものでなどない。人間は、肉体だけで生きているのではない。それは、「生活する」ことと「生きる」ことの違いにも繋がる。
久方ぶりのサントリーホール、鳴りが綺麗だった。中でもパーカッションとウッドベースの抜けが気持ちよかった。ウィンドチャイムのシャラシャラも、コンコン鳴らす木の棒も(あれ、正式名称なんていうの?)、ウッベのプラッキングも、スコーンと届いた。
お若い方々が目立つオーケストラだった。若手に演奏をする場所を。演奏できる喜びを。演奏を聞ける楽しみを。色々なジャンルの演者と演者が共演できる機会を。
いろんなことをギフトとして提示されている舞台だった。
幸せ。
2回目のアンコールの際、応えるために小走りで登場なさった千住さん。小走る指揮者さん初めて見た。お人柄が忍ばれる。
初めて見たと言えば、プログラムの途中で、上手側のオーケストラメンバーを一旦袖に下がらせた。何が起こるのだろうと思ったら、袖からグランドピアノが運び込まれてきた!!!
そのグランドピアノは速やかに指揮者台の前に設置された。その後何事もないように下手袖からピアニストの若林顕さんが登場し、ピアノの前に着席して、「砂の器」のフル楽章の演奏が始まった。
曲が終わり、ひとしきりの拍手の後、再び上手側のオケメンバーは去り、そしてまた、グランドピアノがハケていく。
グランドピアノって、こんな風にささっと出し入れされるものでしたっけ?!🤣
千住さんのご希望を皆がなんとかして叶えてあげようと一丸になっているところにも、やはりお人柄が垣間見える。
幸せなコンサートだった。
音楽、やりたいな。
明日も良い日に。