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耳鳴り潰し218(息子七歳誕生日、虹、踏み込み)

 息子の誕生日。七歳になる。一足早く休日にプレゼントを渡していたせいか、あまり誕生日感のない目覚めであった。子どもたちを送り出した後しばらく横になる。さすがにずっとこのままの体調では暮らしにくい。先週は息子が学校を休んでいたのでいけなかった、整形外科へのリハビリへと向かう。待ち時間の間に筒井康隆「カーテンコール」読了。「プレイバック」という話では、様々な作品のキャラクターが老いた作者の元にやってくる。「時をかける少女」の主人公、富豪刑事、パプリカ、意外なところでは美藝公もやってきた。

 新たなストレッチのやり方も教えてもらい、体調はいくらかマシになる。しかし今後はこれが続くのか。自分より遥か年上の方ばかりの部屋の中で、あの方々と同じ年齢になるまで、同じ状況が続くのか、とげんなりする。そうではないことを祈る。

 同じく待ち時間に中村文則「列」を読み始めた。ちょうど前日、スーパーのレジ待ち行列に並んでいた際に「レジを待つ間に読む本」という企画を考えていたところだった。長い列に並び続ける人物が、列をはみ出そうか、別の列に移ろうかと考えたり、一つ前が空いて大喜びしたり、前の女性といい関係になったり。幻想のようなその世界と、現実の列待ち話が交差していく。

 久しぶりに紙の本に続けて触れながら、自分は書くものをいろいろ抑制していたかな、と気付く。各方面に配慮して、これは書かない、と決めて、こちらではネタを書いて、などと。いろいろなものを取っ払って、リミッターを解除したものを書いた方がいいんじゃないかと。プロは皆踏み込んでいる。踏み込んではいけないのではと思うところまで踏み込んでいる。私は全然思いきってないし踏み込んでいない気がする。

 息子が学校から帰ってくる時間、外を覗くと空に大きな虹がかかっていた。息子がここに来るまで消えないでくれ、と願っていたところに息子の姿が見える。急いで虹を指差すと、ここに来るまでに既に見ていたという。
「誕生日プレゼントだね」と声をかける。そういえば何年か前の娘の誕生日にも虹を見た。調べてみるともう三年も前の話になる。最初の不登校の時期のことだ。

 誕生日だということで特別に、これまで拒否し続けてきた、ココからの「だっこ」攻撃に立ち向かった。抱えあげることは、出来た。身動きは取れなかった。娘を抱えてどこにも踏み出せない、という不吉な兆しと取るか、娘を持ち上げられるくらいに腰は問題なくなってきた、と前向きに見るか。

 公園で遊んでいる最中、空には晴れ間が見えているのに、雨に降られた。家に帰ろうと公園の入り口に戻ると、巨大な虹が見えた。
「空からの誕生日プレゼントだね」
「ココ、虹って一回しか見たことなかった。どうして?」
「たまにしか見られないし。ほら、今もすぐに消えていく」
 家に着くまでに雨は降り止んだので、また遊びに戻った。そして冒頭に書いた猫の話に繋がる。
 昨年のバースデーケーキのロウソクは、健三郎に二回吹き消された。今年はどうなるか。

泥辺五郎「音楽小説集」「Nine Lives」Aerosmithより


 息子が静かに宿題に立ち向かっている間、私は「青春小説集」に「青春ドンドコドコドコ」を追加していた。高校生四人が軽音部を立ち上げるが、全員ドラマー志望だった話。愛と青春とドラムと三本目の足についての汗と涙と木魚のドラムドラマ。

 近くのケーキ屋が休みだったので、いつもと違う感じの誕生日ケーキにやや不満そうな息子。だけどそれで泣いたりはしない、もう七歳。

 溜まりに溜まっていたまとめ系も追加。架空書籍紹介(155冊目~161冊目)。TOP画像の書籍女性がほんとお気に入り。

「今度本屋行ったらさ、BL本買って」と娘に言われる。
「年齢的にアウトでしょ」
「知ってた? BLって年齢制限ないんだよ」
 そんなことはないと思う。

 勢いで中村文則「列」も読了。

 今日の一枚「長い長い行列」


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泥辺五郎
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