
坂本慎太郎(関東第一2年)
リアル成宮鳴
小柄ながら世代最強の声を集め尽くした中学時代。高校入学後も体格差など“物とも”せず、早々に名門特有のハイレベルなレギュラー争いを勝ち抜いた。
以来、公式戦全試合に出場している。
3季連続を懸けた今春のセンバツ切符は逃したものの、昨夏の甲子園を大いに沸かせた全国準Vメンバーの主軸として、国スポでも全2試合を経験。
現時点でのキャリア数は、僅差の世代3位タイを誇る。
世代トップは佐藤洸史郎。
2位は明治神宮大会制覇で脚光を浴びた阿部葉太。
そして中学時代に苦楽をともにした藤田一波と並ぶ3位につけている。
このうち登板数は10試合以上で、阿部のような長距離タイプではないが、まさにダイヤのA「成宮鳴」を地で行くスーパー二刀流、それが関東一高の坂本慎太郎だ。
坂本慎太郎:プロフィール
「さかもと しんたろう」2007年5月生まれ
千葉県野田市出身
野田市立野田第一中学校(取手リトルシニア)
170cm65kg 左投げ左打ち
ポジション:ピッチャー レフト・センター
MAX142km
球種:チェンジアップ カーブ スライダー
二塁到達7.62秒(夏の神奈川2024vs芝)
三塁到達11.51秒(国スポ2024vs青森山田)
20試合連続無三振(69打席連続ゼロ三振)
※1年秋~夏の甲子園2024決勝にかけて
中学MVP「世代一の有名人」
坂本の地元である千葉最北端の野田市は、埼玉と茨城に隣接する県境エリア。
縦長の地形で西側に「クレヨンしんちゃん」で知られる春日部市、東側は茨城県で坂本が中学時代に通った取手市も近くに位置している。
そんな取手リトルシニアといえば、今をときめくギーマこと福岡ソフトバンクの柳町達らを輩出し、これまで5度の全国制覇を誇る名門だ。
柳町の代で取手初の中学日本一を成し遂げ、その10年後に坂本らが再び全国制覇を奪還という、なんとも奇縁な繋がりもある。
2度の中学日本一
坂本が初めて栄冠を手にしたのは、中学2年を目前に控えた春休み開催の全国選抜。この大会は当然ながら1学年上の代がメインのなか、坂本は最優秀選手賞に輝いている。
しかも下級生で唯一の表彰選出だ。
この時の優秀選手・ベストナイン賞には花咲徳栄からドラフト1位で巨人に入団した石塚裕惺、帝京の主将として強豪復活に貢献した西崎桔平らが名を連ねたのを考えると、決してレベルは低くない。
最上級生となった翌年もチーム初のジャイアンツカップを制覇し、二枚看板を形成した同期の藤田一波(智辯和歌山)、バッテリーを組んだ1学年下の荒井優聖(智辯和歌山)らと取手シニアの黄金期を築きあげた。
侍ジャパンU15代表→世界4位
この中学3年時には、チームメイトの藤田とともに侍ジャパンU-15代表に選ばれ、同ワールドカップで世界4位に貢献。
ともに投手陣を支えた佐藤龍月(健大高崎)とは同部屋だったことで、お互いに距離を縮めたマブダチの1人だ。
そのほか坂本同様に二刀流で存在感を示した渡邉颯人(智辯和歌山)、不動の4番に座った金本貫汰(東海大相模)らも、この時の代表メンバーに名を連ねている。
リトルシニア日本代表→全米制覇
坂本の代表経験は侍U15にとどまらない。再び藤田一波とともに、今度はリトルシニアの日本選抜メンバーとして、MCYSA全米選手権の7連覇に貢献。
この時のメンバーには吉崎創史(武相)や佐藤隆樹(青森山田)らがいる。
ちなみに藤田一波とは、ともに小学生の頃から地元の陸上大会で名を知らしめた間柄。坂本はボール投げ、藤田は100m走で、お互いにトップクラスの成績を収めていた。
いきなり二刀流で高校デビュー
晴れて関東一高に進学を決めた坂本のデビュー戦は、唐突かつ衝撃だった。入学式を終えた2日後の春季本大会チーム2戦目でスタメンに抜擢。
公式戦初打席で2ベースを記録すると、次の打席でもシングルヒットを放ち、9回には初マウンドに上がりノーヒットピッチングを披露してのけた。
ここからレフトスタメンのリリーバーとして準決勝まで4戦連続登板を果たし、まだ入学直後ながら東京準Vに貢献する異例の活躍で頭角を現している。
続く関東大会は初戦で敗れ、夏は1年生にしてクリーンアップを任されたが、ベスト16で涙を飲んだ。
この悔しさをバネに新チームの関東一高は、捲土重来の快進撃で一気に秋季東京チャンピオンまで駆け上がった。
怪我の功名を味方につけた初試練
坂本はチームトップの安打数でキャリアハイを記録した反面、登板数は初戦の1試合にとどまる。左肘の痛みに配慮した上でのスタメン起用だった。
明治神宮大会を終えた11月下旬に手術を受け、年内にはキャッチボールを再開できる状態までに回復。幸いにも大事にはいたらなかった。
それでも当面は、野手専念を余儀なくされることに。翌春のセンバツと東京大会は打者で出場を続けた。
夏に向けた練習試合で投手解禁の機会を得ると、それまでの自己最速を大幅に更新する142kmまで伸ばす。肘の負担軽減を考えた、冬場のトレーニングメニューが見事に奏功した。
完全復活も甲子園ではラストバッター
そうして迎えた2年夏、坂本は二刀流として完全復活を遂げる。
チーム初戦と2戦目で先発マウンドを託され、いずれも3イニングずつを無失点。打ってもチーム2戦目から3番に座り、全6戦中5試合でヒットを放つ活躍を見せた。
夏の甲子園初陣でも、井黒晃佑と竹田海士を擁する北陸高校の快速二枚看板を攻略したが、勢いもここまで。
次戦以降は池崎安侍朗(明徳義塾)を皮切りに、藤田琉生(東海大相模)や中崎琉生(京都国際)といった大会注目の左腕に苦しんだ。
甲子園決勝ではロースコアの延長10回タイブレークまでもつれ込む大接戦を演じたが、奇しくも坂本がラストバッターに。
この回からマウンドに上がった同級生左腕の西村一毅に、まんまと三振に仕留められた。
坂本のバットが公式戦で空を切ったのは実に21試合ぶり。1年秋の東京大会3回戦以来、69打席にわたり続けていたゼロ三振記録が途絶えた瞬間でもあった。
2度目の試練
続く秋の都大会は、坂本を主将に置いた新チームを発足。ともに甲子園で戦い、千葉ロッテにドラフト4位で入団した坂井遼からエースナンバーも引き継いだ。
新チームの関東一高は坂本を筆頭に複数の甲子園準V戦士が残るだけあって、秋季都大会の優勝候補に上げられていたが、結果は3回戦敗退に終わる。
国スポと日程が被るハンデを背負いながらも、新チームは総合的に善戦を見せたとはいえ、帝京に僅差で夏の逆リベンジを許した。
今度の試練は一体どう乗り越えるのか。中学MVP男の挑戦はまだ道半ばだ。
秋季都大会の詳細は、以下の記事を一読してくれ。
坂本慎太郎:全データ
春季東京大会2023(準V)
打率.333 OPS.733 出塁率.333 長打率.400

いきなり2安打と鮮烈デビューを飾ったが、まだ新米ホヤホヤの高校1年生だ。
続く東海大菅生戦ではエース日當直喜(楽天ドラ3)に5タコを喫し、準決勝の日大三校戦でもU18侍ジャパン選出の安田虎汰郎に2打数ノーヒット。
坂本は早々にスタメンの座を勝ち取った一方で、実は2学年上の第一線で活躍する高校級右腕から手厳しい洗礼を受けている。

高校初先発は準決勝の日大三校戦で、5回3安打1失点。4回ツーアウトまで無安打ピッチングを披露し、勝利投手で初先発を飾っている。
実は、この日大三校戦が初めてヒットを許した試合だ。公式戦初登板から細切れ起用が続いたとはいえ、圧巻の奪三振力で中学MVPの神髄を発揮した。
春季関東大会2023(初戦敗退)
序盤から主導権を握った茨城1位の常総学院が、終盤もリリーフ坂本を捉え逃げ切り勝ち。関東一高も終盤に粘りを見せたが、3対7で敗れている。
ここから先は
¥ 7,777

ちゃんと身銭を切ってくれた正直な人には、光運お裾分け倍返しで。効果は2週間まで。スキ8記事クリアも滑り込みで特別サービス。