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パレスチナ問題に無知なので、勉強し始めの2冊。

『ガザとは何か』岡真理 ガザ攻撃後すぐの緊急講演の書籍化であるため、報道の偏りを非難し、情報操作されていることに気付いてほしい、と強く訴える内容でした。「ハマスとイスラエルは対等であり、パレスチナ問題は、宗教と憎しみの連鎖によるものだからこじれている」と思ってきた方は必読。 何故このようになったのか、という背景については、一般的な、ホロコースト後の世界の落としどころ+金の力とアメリカ選挙への影響力、という言及にとどまっている感じです。下記の書籍も紹介されていました。 『イ

    • アニメ『ダンジョン飯』20話「少しの面倒に負けて迷子にならないでね」

      優秀で柔和な同級生や社交的な兄弟姉妹を横目に、私はひきこもった。 「学校に行きたくなければ行かなくていい」という母が、 本当の本当に、今の私にがっかりしていないか? 「やりたいことをすればいい」という母が、 本当の本当に、何も価値観を押し付けたりしてこないのか? 理解ある親の下、何不自由なく好き勝手に生きてきた、私のような子どもが、いじめや身体的な苦痛などのわかりやすい理由も何もなく、やりたいことも特になく、 それでも、学校に行かない という謎の事態が、自分を更に押し

      • 『ある男』(小説)についての勝手な感想

        ※以下、『ある男』のストーリーについて触れています。 平野啓一郎『ある男』の主人公城戸は、故人である原の人生を調べていくうちに、原が感じていたかもしれない孤独・苦悩・愛といった感情に強く引き込まれはじめる。自分自身が原になったような感覚の中で、城戸自身が抱えてきた、誰とも共有できず自分ですら気づいてこなかった痛みと向き合えるようになり、救われていく。 城戸の中では、原への傾倒・シンパシィはしごく当然で、自然な流れなのだが、周りの人間には理解できない。弁護士として成功し、在

        • 岸田さんのアンサー

          岸田奈美さんのnoteが好きだ。 面白くて正直で優しくて、かつ、内側からねじりだされるような、感情のとんでもない深みに潜っていって採ってきましたあああ! みたいな宝物がホイッと並んでいる感。 今回のこのエッセイ*は、「あの出来事」の、アンサーなのではないかと思った。 出来事は、ひとりひとりの心に問いというかたちで爪痕を残す。 そして、傷が癒えるように、その問いには、アンサーが生まれる。その人なりの。 自分のアンサーが、ほかの人とは違っていて、それが苦しかったり、誰にも言え

        パレスチナ問題に無知なので、勉強し始めの2冊。

        • アニメ『ダンジョン飯』20話「少しの面倒に負けて迷子にならないでね」

        • 『ある男』(小説)についての勝手な感想

        • 岸田さんのアンサー

          『クララとお日さま』感想

          カズオイシグロ信者(痛い系)である私は、世の中の絶賛の評を目にしても、 「彼の素晴らしさを、本当にわかっている人はいるのだろうか、 彼の作品は、私というたった一人にだけわかる感動を書いているのだ」 という気持ちで過ごしていました。 全世界の人々が発売と同時に手に取った、ノーベル賞作家の待望の新作を前にして、頭がおかしいにも程があります。 ただ、読んだ一人一人が、自分の限りなくプライベートな部分に触れられたような、もっと言えば触れて「もらった」ような、痛みと驚きと癒しを感じ

          『クララとお日さま』感想

          ファーンをファーンたらしめているのは何か

          映画『ノマドランド』感想です。 (注意:以下、断片的に映画内のシーンに言及しています) 主人公ファーンは、ほとんど話さない。独白もほぼなく、何を考えているのか、これまでどんな人生を送ってきて、どのような価値観を持った女性なのか、詳しい描写は一切ない。 これは、ノマド生活の中でファーンが触れ合う、同じノマドの人達、親族、若者、すべての登場人物において言えることで、誰もがふたことみこと、言葉を交わして、すぐに別れていく。 それなのに、ひとりひとりが、大切だったり辛かったり

          ファーンをファーンたらしめているのは何か

          生みの苦しみとは何なのか

          私の好きな本『独学大全』の作者、読書猿氏の名言の一つに、「同じ本を読む人は遠くにいる」という言葉がある。 この言葉を実感したのは、株式会社コルクの代表を務める佐渡島庸平さんが、遠藤周作をテーマに読書会を開催することを知った時だった。 遠藤周作は、私の読書人生の初期に出会った、とても大切な作家だが、今までその思いを共有できた相手は、彼の本を手渡してくれた母以外にはいなかった。 佐渡島さんは、自分と同世代ということを除いて、まったく共通点のない、とても遠い人だ。あの傑作『宇

          生みの苦しみとは何なのか

          『死海のほとり』遠藤周作

          遠藤周作について語る読書会が2021年の今、存在するなんて! という驚きと感激から、気づけばサークル参加ボタンを押していました。 そして、サークル用コンテンツで遠藤周作を熱く語る主催の佐渡島さんは、なんと自分と同世代。私と同じように、10代前半でこの作家にはまり、更には『死海のほとり』が一番好きというところまで一緒! 嘘でしょ!(狂喜) ←イマココ この嬉しさを、『死海のほとり』の感想文というかたちで記してみました。 ―――――――――――――――――――――――――

          『死海のほとり』遠藤周作

          泣くという事

          最近涙もろくて困る。 いや別に困ってはいない。 むしろ大歓迎である。 生物の穴はいろいろなものが出てくる構造になっている。そして、たいていの場合、その「出る」という現象は「すっきりする」という感覚を引きおこす。 涙も同様で、すっきりするのであれば、じゃんじゃん出てもらった方がいい。 ワンクールのアニメで5度泣いた。 深夜に新曲のPVを観て30分泣き続け、目が腫れた。 200%泣くことが確実な映画が5本あって繰り返し繰り返し見ている。 読書で実際に泣くことはあまりないが、

          泣くという事

          あと少しの、母と語り合う時間について

          私には想像力がない。 このままだとどうなるか予測できない。 人の気持ちを慮ることができない。 だから、いつも「そのとき」になって、困惑し慌てふためいて周りの人を傷つけて、こんなはずではなかったと後悔する。石橋を叩いて渡るどころか、渡った後にそこに橋があったことに気づくレベルで先のことが考えられないし、よかれと思って相手のためにしたことは大抵の場合裏目に出るような人間だ。 そんな私には、70代の母の気持ちも分からない。どんなことを考えて生きているのか。出来なくなることが確実に

          あと少しの、母と語り合う時間について