
『地雷グリコ(青崎有吾)』【読書記録#40】
『地雷グリコ』は様々なミステリーの賞を獲得している作品。
「グリコでミステリー!?」と思い気になったので読んでみたのだが、納得するような内容だった。
誰もが一度は遊んだことがあるだろう、「グリコ」というゲーム。
どのように全国に広まったのか知る由もないが、小さな子どもでも覚えやすい簡単なルールで、友人とよく遊んだものだ。
念のため作中でのルール説明を抜粋しておく。
お二人には毎ターン、『グーリーコ』のかけ声とともにジャンケンをしていただきます。ジャンケンに勝ったプレイヤーは出した手に応じて階段を上ります。グーで勝ったら<グリコ>で三段、チョキで勝ったら<チヨコレイト>で六段、パーで勝ったら<パイナツプル>で六段です。これを繰り返し、階段を先に上り終えたプレイヤーが最終的な勝者となります。
上記を基本ルールとしているのだが、ここに新たなルールを加えたのが「地雷グリコ」。
それぞれのプレイヤーが階段の中から好きな三段を選び、地雷を仕掛ける。その地雷を踏んでしまったプレイヤーは、踏んだマスから10段下がるペナルティを受ける。
今回作中で登場した階段は46段。この中の6段に地雷が埋まっていて、いかにそこを回避しながらゴールまで駆け上がることができるのか。
そういったことを競うゲーム、なのだが…。
作中に登場する人、めちゃくちゃ頭がよい上に洞察力も鋭い。生まれながらの怪物ギャンブラーがばんばん現れる。
他人の挙動を一目するだけでどんな人間か、かなりの精度で推察することができる。ピッチャーのクセを読み盗塁を成功させるランナーのように、筋肉の動きまでしっかり見ている。
射守矢 真兎(いもりや まと)もそんな怪物の一人。高校一年生の彼女は、親友の鉱田(こうだ)に頼まれ、学園祭の出店場所を決める<愚煙試合>に参加することに。この試合の勝者は校内の自由な場所に自分のクラスの催しを出店させることができる。
今年の<愚煙試合>決勝戦は上記ルールの「地雷グリコ」を、優勝常連の生徒会と行うこととなる。
では「地雷グリコ」のどこに洞察力などが必要なのか。
一番はどこに地雷を仕掛ける傾向にあるのか読むことである。
これ以上書いてしまうと、壮大なネタバレになってしまうため、これ以上はキーボードの手を止めておく。
自分だったらどの三段に地雷を仕掛けるだろうか?
本作は「地雷グリコ」のほかに、昔遊んだ様々なゲームを「改造」している。簡略化されたゲームをあえて複雑にすることで、人間性をより露わにできるような仕掛けが施されている。
ローカルルールは大富豪をはじめとして発生しやすいものだとは思うが、ミステリ作品に昇華できるほど戦略性があるものを見たことはないと言ってもいい。
『ライアーゲーム』のようにその作品独自のゲームが登場するのもよいが、みんな知ってるものが土台だったので、世界に入りやすかった。
ちなみに本作のMVPは圧倒的に鉱田ちゃん。置いて行かれる読者の気持ちになってくれるので、いてくれて安心できた。
私はミステリー作品をあまり読んだことはなかったのだが、非常にとっつきやすい作品だった。ミステリー初心者の人にもぜひおすすめしたい。
それではまた、次の本で。