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ベロニカは死ぬことにした【死が差し迫る時アナタなら…】

"死ぬことにした"
ってなかなか強烈なタイトルですよね。

普通に生活していると、"死"を意識することはほとんどないと思います。
"死ぬ気で頑張る"
"死に物狂いで努力する"
という言葉もありますが、これらで使われる"死"という単語は、もはやただの形容詞のようなものです。

最近では、ビジネス書や自己啓発本で、
・自分がいつか必ず死ぬことを意識して今を精一杯生きよう
・明日死んだとしても後悔しないような生き方をしよう
というメッセージを謳う本もあります。

それはきっと正しいことなのでしょう。
でも、何だかイマイチ自分事のように感じないと言うか、頭では分かっているけど精神では分かり切れないと言うか。

それでも、文学(平たく言うと小説)だと、何故かスッと頭や精神に入ってくるというか、深みが増すというか、腑に落ちる感じがすることがあります。

"ベロニカは死ぬことにした"

死ぬことにしたベロニカは、あなたにどんなメッセージを送ってくれるでしょうか。



○著者

パウロ コエーリョ (著)
江口 研一 (翻訳)

○ジャンル

心理フィクション

○あらすじ

何だか物足りない。

主人公のベロニカ(女性)は、何かショッキングなことや、死にたくなるような決定的なことがあったわけではない。
むしろ、若さ、美しさ、素敵な彼氏、仕事、家族など他人が羨むものは手にしている。
ただ、もうウンザリ、つまらないという理由で自殺を図る。

しかし、失敗し目が覚めるとそこは病棟のベットの上。
そして、余命は残り数日ということを知らされる。
自分が残り数日で死ぬということを知りながら、病棟で様々な人と関わっていく。
そこで、彼女が見つける"人生の秘密"とは……

○感想

【様々な登場人物】

・ベロニカが入院した精神病院には、様々な経緯で入院することになった患者たちがいる。彼らが入院するきっかけが読んでいてなかなか辛い。それでも、現実世界で同じような経験をしている人もいると思う。

・ボタンの掛け違えや何かの弾み、ちょっとした契機によって、人生に影響を与えるほど、精神が大きく揺らいでしまうことがあり、それは決して他人事ではない。(自分がいつそうなってもおかしくない)

・死が迫ったベロニカを目の前にして、登場人物たちの考えや気持ちがどう変化していくのか(しないのか)。

【死について】

・死が目前に迫ることで、ベロニカの感情、死生観、精神状態、思考が少しずつ変化していく様子が描かれている。
全てがどうでもよくなるのか、逆にあらゆるものに感謝するようになるのか。どちらでもないのか。

・普通に生活をしていると、死を意識することはあまりない。しかし、このような小説を読むと、嫌でも"死"について考えさせられる。
そして、"死"について考えるということは、"生きること"について考えることにもなる。そういう意味でも、この小説は非常に読む価値があると思う。

・メンタルがキツイ時に読むと、結構食らってしまう可能性もある。
(ただ、元気な時や前向きな時は、死や生について、わざわざ考えなくても問題なく生活できるので、「結局どういう時に読めばいいのか」と聞かれると難しい。)

【印象的な言葉】

・"狂ってる"って何なのか。"狂っていない"とは何なのか。
以下↓↓で始まる46ページに登場する、王国の物語はなかなか考えされられた。(ぜひ実際に読んでみてください)

「王国全土を崩壊させようとした力のある魔法使いが、全国民が飲む井戸に魔法の薬を入れたの。その水を飲んだ者はおかしくなるように。

46P ゼドカのセリフの冒頭部分

・書かれた時代も相まって、戦争、狂人、ヒステリー、精神異常、パニック、幽体離脱、電気ショック、宗教、性についてなど、重めの言葉や事柄が度々登場する。読んでいて、心臓を少しずつ握られていくような感覚になる部分もある。


以上です!

なかなか強烈な話なので、用法用量を守って読んでください。
でも、こういった小説からでしか得られない、メッセージや気づきもあるはずです。


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