【コンセプト】楽観的/ポジティブな退行<ゲゼルシャフト化からゲマインシャフト化する社会>
皆様、如何お過ごしでしょうか?
5月も中旬から下旬へと向かう時期ではございますが、皆様、どの様な書籍をお手に取っておりますでしょうか?
まだまだ朝晩は涼しい日もありますので、体調管理にお気をつけ頂ければと思います。
私はこの時期は夕方に外で書籍を読むことも多いです。気持ちの良い時期でもあるので時間が過ぎるのを忘れてしまいます💦
また、コロナウィルスの状況も依然として予断を許さない状況ですので、引き続き外出の際には十分にお気を付け頂ければと思います。
今回は【コンセプト】楽観的/ポジティブな退行というタイトルで記事を書いて参ります。副題は「ゲゼルシャフトからゲマインシャフト化する社会」としております。
【コンセプト】とは?
私、子育て×読書術研究家は昨年4月5日から音声アプリstandfmで配信を続けており、13ヶ月目になります。日々、領域を越境しながら様々な領域の書籍を横断的に読んでおり、日々気付きを配信しております。
この【コンセプト】は私のstandfmの3つの番組構成の中の3軸目の内容です。今回はその3軸目の【コンセプト】を使って、noteに文字を書いてみようと思います。
ちなみに・・・standfm内の主な配信構成は下記の様なイメージです💡
①通常配信:1冊の書籍と向き合う配信
※こんな感じです↓
【第460回】エーリッヒ・フロム/悪について
②【マガジン】読書の効用
noteの記事「読書の効用」をベースに選書、読書のお作法・マインドセット、おすすめの書籍や読書術に付いて語る配信
※こんな感じです↓
【第350回】マガジン読書の効用DAY8/どの様に読むのか?
③【コンセプト】
「言葉」と「言葉」を掛け合わせたり、加工したりと日々の読書体験でブリコラージュした「言葉」から感じた事を配信
※こんな感じです↓
【第294回】ペルソナと企投
前置きはこのくらいにして・・・・早速ですが・・・
私の知人に都会暮らしから、ご実家の田舎へ戻り大家族で子育てをする選択をした方がおられます。それも一家族だけでは無く、複数のご家族がお引越しされて行きました。ご実家に戻られて大家族で或いは地元のたくさんの大人の目で子育てに向き合いたいという趣旨の事を語られていた方もおられました。
科学史家のトーマス・クーンが「科学革命の構造」の中でパラダイム・シフトという概念を提唱さえれておりますが、シフトとまで急激に起こらないにしても、ゆるやかに舵が切られている様にも感じます。進む方向が逆向きに戻されて行く様な感覚もございます。「楽観的原始化」と言いますか、「楽観的退化・退行」しているとも捉えられますが、今後の社会や子育てはゲマインシャフト化する感覚もございます。
■トーマス・サミュエル・クーン/Wikipedia参照
また、フェルディナント・テンニースは、人間社会が近代化するとともに、社会組織は「ゲマインシャフト」から「ゲゼルシャフト」へと変遷して行くとしておりますが、社会組織が「ゲマインシャフト」から「ゲゼルシャフト」へと変遷していくプロセスで、人間関係そのものは、疎遠になっていくと考えていたみたいです。社会の機能化に伴って個人の権利と義務が明確化され、それまでのウエットな人間関係は、利害関係に基づくドライなものへと変質するからですね・・・・
■フェルディナント・テンニース/Wikipedia参照
◯楽観的/ポジティブな退行とは?
「ポジティブ」という言葉との後に「退行」というやや「ネガティブ」な印象を受け取る奇妙な言い回しを致しました。
これはハンナ・アーレントが「イェルサレムのアイヒマン」という書籍を書いておりますが、その副題が「悪の陳腐さについての報告」という奇妙な言い回しの副題が付いております。
「悪」と「陳腐」という言葉がなかなか結びつかない様に思いますが、アーレントはそんな言葉と言葉のピースを繋ぎ合わせた副題を付けております。
■ハンナ・アーレント/Wikipedia参照
アメリカのレオン・フェスティンガーはかつて認知的不協和理論を提唱しましたが、ポジティブと退行という言葉と言葉の間に何となく違和感、不快感があるとも感じられます。
・認知的不協和理論とは?
アメリカの社会心理学者、レオン・フェスティンガーが提唱した理論です。
認知的不協和理論とは、自分の考えと行動が矛盾したときに感じる不安を解消するため、考えを変更することにより行動を「正当化」する現象を説明した理論です。人間は差異、ギャップに弱いものなのか?バイアスが働き、時にはハロー効果の様なバイアスに陥る事もありますが・・・やはり人間は不安感を抱えておけない動物の様です。違和感や不快感は直ぐに解消したくなりますよね。抱え込んでおかなければいけない問いと見送って良い問いを見極める選球眼を養う必要もある様に思います。
■レオン・フェスティンガー/Wikipedia参照
・ネガティブ・ケイパビリティとは?
精神科医の帚木蓬生さんが書いた「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」書籍があるのをご存じでしょうか?
精神科医として臨床40年以上のキャリアのある帚木蓬生さんの書籍ですが、ネガティブ・ケイパビリティとは何でしょうか?
すぐには答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力を指すそうですが、元々は19世紀イギリスの詩人、ジョン・キーツが唱えた概念です。その訳としては・・・未解決のものを受容する能力というものです。ただ、日本語訳は定まっていないようで、「消極的能力」「消極的受容力」「否定的能力」など訳がつけられております。
■詩人ジョン・キーツ/Wikipedia参照
帚木蓬生さんは 精神科医の先生としてネガティブ・ケイパビリティを新たに再解釈的脱構築をしたのだと思います。患者さんを診察する際に必要不可欠な「共感」という目に見えないとても大切なものに着目をした事が書籍の中から感じ取れます。
最近、私は中原中也やリルケ、ゲーテ、与謝野晶子など詩集ばかり手に取っておりますが、詩人であるキーツの概念を医学の領域に橋を架けるブリッジングの力には脱帽致します。精神医学と言えば、ミシェル・フーコーが「臨床医学の誕生」や「狂気の歴史」という書物を書いておりますが、「共感」同様に目に見えない「狂気」というものが、社会への融合、合一、統合からの逃走、排除を経て治療の対象と成って行くプロセスが、近代精神医学の誕生へ帰結して行くという骨太中の骨太書籍でもありますが、想起させられますね。これは若干の余談ではございますが・・・保育園の朝の玄関先での親と子供の攻防にも「狂気」も見たようにも思います💦
■ミシェル・フーコー/Wikipedia参照
このネガティブ・ケイパビリティという力は不透明で不確実な現在のVUCA時代には、ある種のフューチャーズ・リテラシーの様にも思えます。コロナ禍によって突如と退屈と暇に向き合う事になった現代の我々に取っては必要なスキルセットの様に感じます。
◯ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとは?
元々はイギリスの歴史法学者H.J.S.メーンが1861年に刊行した「古代法」の中で提唱している概念を、ドイツの社会学者であるフェルディナント・テンニースが1887年に「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」の中で再解釈をした概念でもあります。
これは個人的な誤読を含んでおりますが、人々の社会や思考・行動様式が産業革命以降、資本主義の台頭によりゲゼルシャフト化して来ましたが、既に限界を迎えつつあると言われている資本主義的からポスト資本主義的ゲマインシャフトに今後も緩やかに舵を切る様な気もしております。
それは「物質」から「精神」、「地の時代」から「風の時代」、「競走」ではなく「共創」という表現でも良いのかもしれませんが、我々は史上かつて無いほどに豊かな時代を迎えております。
一方で、精神の満たされなさ、孤独感や虚無感、若干のペシミズムを抱えるコロナ禍の現代の我々には、改めて 利害関係に基づいて人為的に作られたゲゼルシャフト的な社会組織をアップデートして地縁・血縁などにより自然発生したゲマインシャフト的社会集団に変わるリミットがいよいよ迫って来た様に思います。テンニースは著書、「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」の中で人間の共同生活における集合形式・関係形象・規範、或いは価値の研究を社会学定義しており、そして次の2つの洞察を導き出しております。
①実在的・自然的な本質意思Wesenwille=ゲマインシャフトという集団類型②観念的・作為的な選択意思Kürwille=ゲゼルシャフトという集団類型
利益も確かにとてつもなく大切ですが、一方で数字の奴隷になって心まで管理され縛られて、デイビッド・グレーバーのブルシット・ジョブ的にニヒリズムに陥りながらの労働は本当にアルベール・カミュのシーシュポスの神話の様に労働に意味が見出だせず過神々からの罰の様にも思えます。
■アルベール・カミュ/Wikipedia参照
今年の1月にstandfmでも音声配信致しましたが、アメリカの社会学者、アーリー・ラッセル・ホックシールドが書いた「管理される心/感情が商品になるとき」の中でホックシールドは 「感情労働」という第三の労働に付いて言及しております。
・第三の労働とは?
肉体労働や知的労働以外に登場した第三の労働。それが感情の抑制や忍耐を必要とする感情労働。
【第310回】管理される心/感情が商品になるとき/アーリー・ラッセル・ホックシールド著
外見だけを取り繕う「表層演技」をするだけではなく、心のこもった「深層演技」を求められる事に着目した名著です。これは心のエナジーをすり減らす事になるので今日的に考えても非常に危うさを感じます。
※主に接客サービスを仕事にする人たちと書籍では設定されておりました。個人的にはその領域を超えてペルソナやシャドウの概念を想起致しました。 自分の中にある欲望や欲求を俯瞰して見た時に、認めてあげる、許してあげる。また幼少期の抑圧状態の記憶や想いに向き直ることでシャドウを自己に統合し取り戻す事が可能になって来るのだと思います。 さらにバーンアウトの記述もございました。
◯バーン・アウトとは?
仕事熱心な方やアウグスティヌスの如く強い使命感、責任感を帯びている方に起きやすいとされておりますが、バーンアウトをすると、労働や仕事に意味や意義を見い出せず燃え尽きてしまう事象です。周囲の方々にに対しては、冷たい態度やよそよそしい対応をする、感情の管理に疲れて過ぎてしまい心がすり減って、余裕がなくなる状態。この先は虚無感、孤独感が醸成されやすくなる為、非常に危うい状態と言わざるを得ません。バーンアウトした時の対処法としては・・・オン、オフの切り替えや自分の時間を作ったりと余白やスペースを精神的、物理的に意図的に作り出す事が必要のようです。
精神をすり減らすくらいの本人が不毛と感じる様な労働の話を聞きますと、本当に切なくなります。
資本主義、数字の奴隷になっている様な事例は、枚挙に暇が無い様に思います。「万人の万人に対する闘争」を超克して、縦のヒエラルキーから、マーク・グラノヴェッター、東浩紀が提唱する「横に広いゆるい」、「弱いつながり」を何となく感じながら、伴走(伴奏)、共創(共創)する様に他者を<我-それ>ではなく、<我ー汝>、或いはかけがえのない友人として他者への心からの関心や無条件の「愛」が必要になる様に思います。
テンニースはショーペンハウアーやニーチェの力への意志、ニヒリズムの超克、大いなる正午からの影響も受けているそうで、人間の意志の形式が社会や社会関係のあり方を決定するのでは?という仮説を抱えていた様です。
◯おわりに
アリストテレスはかつて、「労働は余暇(レジャー)の獲得の為にある」と語り、エリック・ホッファーは「遊びが労働に先立つ」という趣旨の事を語っておりますが、コロナ禍で退屈と暇に向き合う事も多くなりましたので、改めて自分がより良く生きる為には、どの様にあるべきなのか?などの抽象度の高い問いに向き合ったり、他者や世界に貢献するには何が出来るのか?を考え、行動する事で幸福感を醸成し、それを他者に分け与え、他者や世界との合一や融合をはかって参りたいと思います。
■エリック・ホッファー/Wikipedia参照
様々な道具は遊びの中で生まれたとホッファーは「人間とは何か」という書籍の中で語っておりましたが、仕事に遊びの要素を入れる事は大切ですが、そもそも遊びが労働に先立つという考え方をする事で日々の労働を別の視点で俯瞰することが出来る様に思います。
社会や私文脈で言えばビジネスや子育ての領域でもポジティブな退行としてのゲマインシャフト化が今後進む様な気もしております。
有難うございました~✨✨
◯読書術研究家の日々の活動↓
【子育て×読書体験ラジオ】=stand.fm
2020年4月5日~配信をスタートしており昨日(2021/5/13迄)で471本のコンテンツを配信しております。
【Twitter】
日々読書について語ったり、興味のあるツイートを拡散したりなど活用しております。
【POTOFU】
POTOFUも活動URLをまとめました。
宜しければご一読下さい!
【REC】
RECはじめました~✨✨
stand.fmと同時期にローンチされたと思われるRECでも音声配信をはじめました。本日(5/13)までに30個のコンテンツを配信しておりますが、まだこの世界にある「何か」が分からないので引き続き配信を続けてみようとおもいます
リアルの場でもSNSでも一期一会の出会いを大切にして参りたいと思います。引き続き宜しくお願い致します。
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