「魚群探知→交通事故防止」から
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三点に注目したい
1.ケイパビリティ」
2.手段とは何か、何が手段か
3.PPMとシナジー接点
関連代表記事 Business Journal 2018.11.20
https://biz-journal.jp/2018/11/post_25595.html
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A 古野電機は魚群探知機のパイオニア的企業であり、現在では船舶用電子機器メーカとして世界シェアNo.1 (15%)を握る企業である。売上の80%を船舶事業が占める。船舶事業においては、商船用途が市場規模1,700憶円に対してシェア15%、漁業用途が市場規模500億円に対してシェア48%である。船舶事業(本業)の深耕は当然として、平時の経営として、国内インバウンドを機会と捉え通信・GNSS業を次の柱に育てようとする姿勢は素晴らしい*1 。
B 位置測定についてはこの先の時代を更に進め支える技術であり、そこに狙いをつけるのは悪くはないし、運転と場所に関するデータ収集という蓄積した経験を活かせると考えるのも悪くはない。ただし、この戦略には注意点が存在する。それは、スマホエコノミーの影響である。何をプロダクトとして、どこにどうやって搭載して、何をモニターし、価値に転換するか。これを考えるときに、従来のプロダクト屋が技術開発で新しいデバイスを作るのだが、スマホエコノミーの影響を無視すると痛い目に合う。
A インバウンドにターゲットを絞るとした場合、スマホを中心に据えれば、出来ることが飛躍的に増える。新しいデバイスが必用だとしても、例えば、飛行機の中や入国ゲートなどで全員に配布できるようにするといった策も考えられる。仮にこのようなモデルができれば、インバウンドと運転といった局所領域に対し、レンタカー/シェアカー屋などを最終顧客に商売するモデルから何段階も飛躍できる。交通事故という狭い枠で考えたとしても、事故率軽減という精密な実績値をもって、それの対価を官からも徴収するモデルも構築できる。
B 狙いを「インバウンドと事故」に絞るのであれば、正確な位置測量は手段の1つでしかない。当然、この位置測量をいかなるプロセスで実現するかも、自由度の1つでしかない。何をモニターするのがベターか。それを実現するには、車にセンサを組み入れるべきか、ETCなどと連動させるか、カーナビと連動させるか、スマホに組むのか、或いはデバイスをレンタカー屋伝いで運転手に持たせるのか、或いは、、、。プロダクトやテクノロジーに自信があり含蓄があり歴史が深いほど、それを使いたくなるのが人の性だろう。しかし、プロダクトもサービスもビジネスモデルも、顧客効用を最大化するための手段でしかないことを決して忘れてはいけない。
A 一方、古野電機が持っている技術的強みに対して、「運転と場所に関するデータ収集」と解釈するだけなのはどうだろうか。例えば、海水に対するノウハウを構築しているハズでる。機器の塩害対策や、船上露出状況での耐自然環境に対する知見だって深いだろう。対塩害・対暴風雨といった観点で、新規事業を探索するのも悪くない。或いは、「船舶」の周辺に、今後の環境規制関連の情報(マイクロプラスチック動向など)や、テクノロジーによる進化(GPS,IoT、AI、VR,MR…など)を加えて、時間を10~15年進めた時に、大きなチャンスがあるのではないか。「運転と場所に関するデータ収集」であっても、1つの船に対する情報と考えるのと、自社プロダクトを積んだ船団と考えるのとでは、天と地ほどの差がある。
B 例えば、船舶事業の自社顧客に対して、マイクロプラスチック自動分析センサを無償で提供し搭載してもらう。嫌がるのであれば、船舶電子機器に対するメンテ・補修のディスカウントをするなど、餌をつける。マイクロプラスチック自動分析センサを搭載した船が全世界を航海することで、自社が、すべての海のマイクロプラスチックを可視化できるグローバルリーダになる。密度分布やその動きも終えるだろう。グローバル視座でのマクロな対策だって提言できてくる。これ自体が直ぐにお金に化けるわけではないが、その意義は長期的に大きい。ビジネス性も多用な切り口で検討できる。大きく果敢なアクションとしては、例えば、そのデータをもとにグローバルな環境に訴え、船に対する海洋分析センサー搭載を義務化させるアクションをとり、自社マイクロプラスチック自動分析センサの仕様を標準化させる。仮にこの方向性で動くのであれば、欧州委員会や欧州委員会のCEP(Circular Economy Package)関連にパイプのある人財を獲得したり、関連性のある且つ船関連の現地企業を1社買収しておく、データサイエンティスト雇用を進め設備を整える…などの行動をしていくことになる。
A 戦時になってしまえば現業のやりくりで手一杯となり、次の事業創出の余力がなくなる。平時経営できている現在だからこそ、次の事業創出に向け、しっかりと歩みを進めるべき。この時に、新しい事業の本質的な位置づけについて、入念に考察しておくべき。PPMで見た時に、時間延長したとすれば、何が課題となるのか。他事業との相乗接点をどこにもたせるべきか。だからこそ、XXXな事業を創出すべき!という強い動機が生まれる。
*1 古野電機 IR・投資家情報 https://www.furuno.co.jp/ir/