delbosque

時々アカデミア。 日本語圏でのアカデミア言説のガラパゴス化に直面。 少しでも風通しが良くなるように、外国語の良い論文を勝手に日本語訳することを開始。

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時々アカデミア。 日本語圏でのアカデミア言説のガラパゴス化に直面。 少しでも風通しが良くなるように、外国語の良い論文を勝手に日本語訳することを開始。

最近の記事

二重意識

*本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/concepts/double-consciousness/) ーーーーーーー W. E. B. デュボイスは、「ベール」と「二重意識」という概念を使って、アフリカ系アメリカ人が米国で置かれている特殊な状況と、その状況を理解する(そして願わくば解体する)ために彼らが自由に使える具体的な手段を

    • カースト、階級、人種

      *本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/concepts/caste-class-and-race/) ーーーーーーー トリニダード生まれで米国在住の学者、オリバー・クロムウェル・コックスによる『カースト、階級、人種:社会力学の研究』は、社会学理論と二次分析の大著である。600ページを超える綿密な研究成果を正当に評価するのは難し

      • アシル・ンベンベ(ムベンベ)(Achille MBEMBE)

        *本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/thinkers/mbembe-achille/) ーーーーーーー アシル・ンベンベのパノラマ的な作品は、(ポスト)モダニティ、国家性、暴力、死、奴隷制、資本、セクシュアリティ、都市性、人種、人種差別、植民地主義によってイメージされ、想像され、客観化された残虐性の政治経済など、幅広い主題に関

        • トランスナショナリズム

          *本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/concepts/transnationalism/) ーーーーーーー トランスナショナリズムとは、社会的、政治的、経済的プロセスが、国民国家の主権的な管轄権の境界の間、あるいは境界を越えて拡散し、拡大することを指す。国際的なプロセスは、非国家主体や国際組織によってますます統治されるようにな

          入植者植民地主義(settler colonialism)

          *本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/concepts/settler-colonialism/) ーーーーーーー 入植者植民地主義とは、先住民を侵略的な入植者社会に置き換えることによって機能する植民地主義の一種である。入植者植民地主義国家には、カナダ、アメリカ、オーストラリア、南アフリカなどがあり、入植者植民地主義理論は、イス

          入植者植民地主義(settler colonialism)

          パンデミックは戦場であるーCOVID-19のロックダウンの中の社会運動

          ジェフリー・プリアーズ(Geoffrey Pleyers) *本論は、Pleyers, Geoffrey. 2020. “The Pandemic Is a Battlefield. Social Movements in the COVID-19 Lockdown.” Journal of Civil Society 16 (4): 295–312. https://doi.org/10.1080/17448689.2020.1794398.の粗訳である。 概要 本稿で

          パンデミックは戦場であるーCOVID-19のロックダウンの中の社会運動

          デュルケムとル・ボン

          (本論はStephen Buechler. 2011. Understanding Social Movements: Theories from the Classical Era to the Present, Routledge 『社会運動を理解するーー古典から現代までの諸理論』の第3章Durkeim and Le Bonの粗訳である)。 スティーヴン・ブッフラー マルクスやウェーバーと並んで、エミール・デュルケム(1858-1917)もまた、社会運動を研究する上で

          デュルケムとル・ボン

          ヴェーバーとミヒェルス

          (本論はStephen Buechler. 2011. Understanding Social Movements: Theories from the Classical Era to the Present, Routledge 『社会運動を理解するーー古典から現代までの諸理論』の第2章Weber and Michelsの粗訳である)。 スティーヴン・ブッフラー マックス・ヴェーバー(1864-1920)は、マルクスと同様、社会運動の理論家としてはあまり知られていな

          ヴェーバーとミヒェルス

          マルクスとレーニン

          (本論はStephen Buechler. 2011. Understanding Social Movements: Theories from the Classical Era to the Present, Routledge 『社会運動を理解するーー古典から現代までの諸理論』の第一章Marx and Leninの粗訳である)。 スティーブン・ブッフラー カール・マルクス(1818-1883)は、社会運動の理論家としてはあまり知られていない。しかし、カール・マルク

          マルクスとレーニン

          しぶとい新自由主義(Nine Lives of Neoliberalism)

          本書はDieter Plehwe、Quinn Slobodian、Philip Mirowskiによって編集された本『Nine Lives of Neoliberalism』の序章の粗訳である(https://www.econstor.eu/bitstream/10419/215796/1/Full-text-book-Plehwe-et-al-Nine-lives-of-neoliberalism.pdf)。 はじめに クイン・スロボディアン、ディーター・プレーヴェ(Q

          しぶとい新自由主義(Nine Lives of Neoliberalism)

          人種資本主義(racial capitalism)

          *本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/topics/racial-capitalism/ 2021年6月23日取得.) ーーーーーーーーー 人種資本主義」という言葉は、ロンドンの反アパルトヘイト運動が発行したパンフレットで初めて使われたと考えられています(Kundnani, 2020)。興味深いことに、セドリック・J・ロビンソン

          人種資本主義(racial capitalism)

          アブドゥッラー・オジャラン

          *本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/thinkers/ocalan-abdullah/ 2021年6月23日取得.) ーーーーーーー アブドゥッラー・オジャラン(通称アポ)は、思想家、哲学者、自由の戦士、市民権活動家、あるいは「テロリスト」として、世界的に、特にトルコで論争の中心となっている人物である。1948年4月4日、ト

          アブドゥッラー・オジャラン

          コスモポリタニズム

          マイケル・マーフィー(Michael Murphy) *本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/concepts/biopower/) ーーーーーーー ヨーロッパ中心主義の物語によると、コスモポリタニズムの概念は、ディオゲネス(紀元前412年頃~紀元前323年頃)の「世界の市民」という叫びに始まり、ストア派、パウロ・キリスト教、

          コスモポリタニズム

          生権力

          アニッシュ・チバール(Anish Chhibber) *本稿は、ガルミンダ・K・バンブラらによって運営されているグローバル社会理論プロジェクトに収録されている論文の粗訳である。(https://globalsocialtheory.org/concepts/biopower/) ーーーーーーー フーコーによれば、自己(self)は、自己が位置づけられている言説の規制的な力関係にさらされることで、時間の経過とともに言説的に生み出される(Barker 2008; 225)。

          資本主義的土地収奪と奴隷制の新たな正当化

          ジョン・ホルムウッド&ガルミンダ・K・バンブラ (2015年https://www.opendemocracy.net/en/beyond-trafficking-and-slavery/capitalist-dispossession-and-new-justifications-of-s/の粗訳) 移民についての議論は、ますますディストピア的になってきている。排除と搾取のどちらかに基づいて、国境を開くための新しいネオリベラリズムの主張は、自由ではなく、制度化された支配

          資本主義的土地収奪と奴隷制の新たな正当化

          イギリス史を説明する

          ガルミンダ・K・バンブラは、サセックス大学のポストコロニアルおよび脱植民地研究の教授である。現在、ジョン・ホルムウッドと共同で『植民地主義と近代社会理論(Colonialism and Modern Social Theory)』(Polity Press)を執筆中である→2021年に出版。今回の研究の一部は、『Review of International Political Economy』誌に掲載予定の論文「植民地的グローバル経済−−政治経済学の理論的再構築に向けて(C

          イギリス史を説明する