走れ、ユリウス──『オルフェウスの窓』が映像化されるなら
池田理代子氏の『オルフェウスの窓』は、『ベルサイユのばら』に続く大傑作であり、むしろこちらの方が深い感動を与える作品です。
音楽学校を舞台に、ユリウス、クラウス、イザーク、そして"影"のように彼らを見守る先輩たちが織りなす光と影の交錯が描かれています。
ユリウスの出生の秘密を知る医師の野心、姉アネロッテへの愛を悦びとして受け入れる従者ヤーコプ、ユリウスの側に寄り添い続ける貧しいイザークと妹の哀しい思い、風のように現れロシアへ去るヴァイオリニストなど、それぞれの物語が絡み合い、深いドラマを生み出しています。
とりわけ印象的なのは、クラウスを追い求めるユリウスが馬で走りながら電車に向かって叫ぶ「行かないで!」のシーンです。
この場面にリストの「ラ・カンパネラ」が流れる演出は、観る者の心を強く揺さぶるでしょう。
その後、場面が転換し、音楽学校でイザーク少年の美しいピアノ演奏に耳を傾けるシュルツ先生の姿と鐘の音が響き渡る──映画にするなら、ここから始めるのが最もドラマティックで引き付けられる構成だと感じます。
さらに、バックハウスが貧しさから弾けなくなったイザークを引き取り、音楽の才能を伸ばそうと尽力するシーンも感動的です。
『オルフェウスの窓』は、どこを切り取っても観る者の心に響く「金太郎飴」のような作品であり、まさに映画化にふさわしい壮大なドラマだと思います。
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