『秋を奏でる芸術祭』出展まとめvol.3
気がつけば、だいぶ気温も冷え込んで朝夕上着が手放せない時期になった。暖かい飲み物を飲んで、ひと心地つく。息を吐くと、白い息が溢れた。すっかり季節は冬になってしまった。凍てつく空気に頬が赤く染まる。
街灯がチラチラと揺れて、帰り道がどこか儚く見える。地面には降り積もっている葉っぱが、絨毯と化している。サクサク小気味よい音。色づく季節、寒い冬との絶妙なバランスをとっている。ただ肌寒いけれど、どこか体の奥には温もりが漂っていた。
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さて、11月15日から募集を開始させていただきました、yuca.さんと合同企画となる『秋を奏でる芸術祭』。おかげさまでたくさんの秋を楽しむ記事を寄稿いただきまして感謝してもしきれません。どれも一つとして同じものはなくて、心が躍る。今回も先週に引き続き企画に参加いただいた記事を、ご紹介をさせていただければと思います。
■焼き栗とビートルズ / mamiさん
学生時代に突如として、私の中にThe Beatlesブームが巻き起こった。きっかけはなんだったか、覚えていない。確かその頃好きで聴いていたラジオ番組でたまたま流れていたかなんかだった気がする。それまで、The Beatlesって父の世代が聞くものと思っていただけに、衝撃的だった。
いつかThe Beatlesが活動していた場所に行きたいと思い、学生時代無事にその夢を叶えてイギリスのリヴァプールに乗り込んだ。初めて訪れた時の高揚を今も思い出す。
だからこそ、mamiさんがフランス・パリで出会った小林さんの気持ちもちょっと、いやかなりわかってしまった。それだけに、小林さんがフランスで体験したことに対してはしゃいだ気持ちも想像できた。
職人ならではの、こだわり。読み終わった後に、なんか出会いって不思議な縁で繋がっているのだな、とほぅとため息をついた。mamiさん、改めて素敵な記事を寄稿いただきまして、ありがとうございます。
久しぶりに、レットイットビー聴いてみよう。
■Fragrant Olive / Ringoさん
Ringoさんの人生、一言で言うと「波乱万丈」という言葉がぴったりくる(勝手に四字熟語で表してすいません…)。でも、それと同時に一本通った芯みたいなものも感じる。どうしたら、こんなに強く生きることができるんだろう。私はいつもRingoさんの記事を読んでハラハラしながらも、時々胸がジッと疼く。
湿った落ち葉をきっかけにして、つと紐解かれる記憶。かつて母親と対話した時のことが、ふいにフラッシュバックする。現在のRingoさんの中にある母のイメージとは少し乖離があるような気がする。大切な人との思い出が濁流の如く、押し寄せていた。
金木犀の花言葉に、「気高い人」という意味がある。まさしく、母親という存在はRingoさんにとってそんな人だったのではないか。うまく息の呼吸の仕方がわからなくなってしまったように、人との付き合い方がわからなくなってしまう時も、時々ある。
切なさとは違う。何か、過去を愛おしく思う気持ちがひしひしと伝わってきた記事でした。
■なごりおしい / しろくまきりんさん
澄み切ったパステルカラーのような空の色と、鮮やかに彩られた葉っぱがなんとも頭に焼き付いている。しろくまきりんさんの言葉通り、私は不思議と心が洗われたような気がした。
秋から冬にかけて、気温がグッと下がるけど、この時期ほど散歩していて楽しい季節は他にないのではないか。張り詰めた空気の中でも、色が映える。電線に絡む蜘蛛が、個人的にはとても好きだ。
一足早い、クリスマス。今年のクリスマス、子供たちはサンタクロースに何をお願いするのだろうか。どうやら話によると、今の子供たちはあまりにも満たされた生活を送っていて、欲しいもの何かある?と聞かれると答えに窮するらしい。
日常で見つけた小さな秋。来年も、また同じように素敵に色づいた季節が見られることを祈って。しろくまきりんさん、素敵な記事の寄稿ありがとうございました。
■秋風の街 ~ピアノソロ~ / つるさん
つるさんにはなんと今回、オリジナル音源を提供いただきました。音声ファイルでの記事自体、あまり拝見させていただくことがないのでとても新鮮ー!改めて企画にご応募いただきましてありがとうございます。
音声ファイルを再生してみると、なんとも秋の夜長にふさわしいメローなサウンドが流れて参ります。私は残念ながら音楽の才能がからっきしなので、楽器弾ける人本当に尊敬します。
つるさんが弾かれているピアノのメロディは、イメージ的には休日まったりしてコーヒーを飲みながら聴きたい雰囲気でした。なんとなく、気持ちがホッとします。
日常の喧騒から逃れたいと思っているそこのあなた、是非つるさんオリジナルサウンドを聴いてリラックスしてみてくださいね。
■Remember me / てるるさん
生きている中で、本当に気のおけない友人なんて、片手で数える人しかいない気がする。
学生時代、テニスサークルに私が所属していた時、なぜか不思議と距離の近くなった先輩がいた。残念ながら卒業後疎遠になってしまったけれど、何故だか、数年後再び遊びに行くようになった。本当に縁とはどこでつながっているかわからないものである。
てるるさんがバイト先で出会った「気が抜けた炭酸飲料のような」先輩も、きっと同じように不思議な縁で結ばれた人だったのではないかと記事を拝読しながら考えた。一緒にいて気が楽で、居心地の良い存在。
もっと根本的につながっている感覚。とても気が合うと思いつつも、先輩は自分にない行動力という武器を持っている。それが単純に羨ましい、という感情。
自分と同じ場所にいたと思っていたのに、気がつけば遥か彼方にその人は立っている。自分自身も燻る夢を抱え、先輩の背中を見て駆け出すことを躊躇しない。
何気なくかけた、くるりのRemember meに寄せられた思い。人はきっと、誰かのために生きているし、生かしてもらってる。それだけで、明日も生きていける。
何かを行動するのに必要なのは、きっと誰かが持っている"勇気"だ。
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もうすっかり気分は冬景色に向かって走っている。師走という名の通り、気がつけばあっという間に今年一年が終わってしまっているのかな。
今年の秋は、私に何をもたらしたのだろう。良いことも悪いこともないまぜになって空から降ってきた。その中には、確かな言葉も入り混じっていて私の心を安心させる。
誰かが丹精こめた文章を読んで、私も確かに明日への活力を見出していて、涼しい秋風の余韻に浸りながら、今日もゆっくり眠ることだろう。