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晴読雨読

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晴レノ日モ雨ノ日モ、私ハ本ヲ読ム
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#おすすめ本

あたまの中の栞 - 弥生 -

 春の麗らかな暖かさに包まれて、少しずつですがいろんなことへの気力が高まりつつあります。年度末と年度始まりは忙しくしていたのですが、それもひと段落し、あとは来週に迫った金色休暇に向けて準備を重ねています。今年は私の友人であるスケさんカクさん(水戸黄門はきっと別にいるはず)と、共通の友人カップルと一緒に東北へキャンプをしにいく予定。未来が楽しみばかりで、今からニヒヒと一人で笑っています。  もう気がつけば4月もあと少しで終わりですが、このタイミングで先月読んだ本の振り返りを行

あたまの中の栞 - 師走 -

 あっという間に、年が越えてしまった。私の気持ちを、置き去りにしたまま。新しい年を迎えるための、心の準備が整っていなかった。振り返ると、たくさんの人に助けられて、なんとかこうにか目を開けることができている気がする。  コロナが本格に流行した時期くらいからnoteを始めて、気がつけば文字を綴ることが自分の中で常態化して、これまではどちらかというと読む専門だった私が、まさしく自分の中でポンと新しく産声を上げた。最初どちらかというと自己満足に近かったのに、少しずつ読んでくださる人

あたまの中の栞 - 霜月 -

 本当に11月は私にとって鬼門となる月だった。たぶん、これから何十年と生きていく中でそれは単なる一コマなんだろうけれど、きっとあの時の自分が目の前にいたらピシャリと頬を叩いて正気に戻りなさい!と言うはずだ。残念ながら、過ぎ去った時間は戻ってくることがない。  ちなみに、これはもしかしたら好みの問題なのか、はたまた私が単純に慣れていないだけなのかはわからないが、個人的に今のnoteの仕様はあまり好きではない。ルビを振れるようになったところまでは良いのだが、どうも機能が多過ぎる

あたまの中の栞 - 神無月 -

 本当に10月の前半は秋とは思えなくらい暑かった。一体いつになったら涼しくなるのだろうとドキドキしているうちに金木犀は2回香り、弾けるように気がつけば匂いは消えていた。  空気が澄んでいるせいか、どこからか夕食の匂いがしてくる。ようやく緊急事態宣言が解かれて、図書館の平常通りに行けるようになりそれだけは私の中で小躍りしたい出来事だった。再び会社からは週に最低2日は出社するようにとお達しを受け、泣く泣く都心へと向かうバスに乗る。  流れるバスの窓の外から、遠くにスカイツリー

言葉の時雨に降り振られ

 突発的な雨に、傘のない私は濡れるままだ。  思えば昨年noteを始めて半ば習慣的に文章を書くようになってから、時にはうんうんと頭を悩ませながらも言葉を捻り出すことに不思議な安堵感を覚えるようになった。  本当は1年間毎日描き続けたら一旦この習慣をリセットしようと思っていたのに、気がついたらパソコンの前に座ってパチパチと文字を打っている。1年続けるまでは正直毎日どんなことを書こうと頭を抱えていたのに、そのしがらみがなくなった途端、むしろ文章をとにかく書きたいという思いに駆

あたまの中の栞 - 葉月/長月 -

 どこからか、美味しそうな香りが漂ってきた。グゥとお腹が鳴る。  じとっとした季節もいつの間にか通り越して、少し肌寒い季節がやってきた。私は暑い8月が好きで、お祭り拍子が聞こえてくるとどうしようもなくドキドキしてしまう。  イカを焼く香ばしい匂い、色とりどりに流れゆくスーパーボウル、海へと逃げるタイミングを逃したたい焼きたち。彼らは皆、私に夢を見せてくれる。  でもコロナによってイベントが悉く中止になり、夏休みも例年に比べると凡庸な過ごし方になった。  家でひたすら簿

理想の世界には程遠い

<2021年9月21日執筆>  いくばくかの小さな星と、大きな月が宙に鎮座している。 *  中秋の名月って、毎年満月の日に重なるものだと思っていた。  それはとんでもない間違いで、必ずしも満月の日に当たるわけではないということを恥ずかしながら最近知った。今年は偶然にも、たまたま満月にあたるということでちょっと話題になっていた。宙空にぽっかりと浮かんだ欠けることのない完璧な月は鈍く光り輝き、その存在感を示している。  昔から月が好きだった。というより宇宙という概念自体

『星のように離れて雨のように散った』

<2021年9月15日執筆>  ちょうど金木犀の花が咲き始めて、どこからともなく高貴な香りが漂っている季節に私はこの文章を書いている。気がつけばあれほど忙しなく鳴いていた蝉の声も収まり、代わりに柔らかい草木の匂いが立っている。  この時期、中編小説を書いている真っ最中だったわけだが、不思議と片手間で本を読みたい熱が沸々と湧き起こり、新橋駅からほど近い本屋さんに立ち寄った。しばらくウロウロした後、ふと一冊の本を手にとる。──早朝の7時のことである。人の姿は、まばら。  本

あたまの中の栞 -文月-

 どうやら7月は旧暦の名の通り、手紙を認めたくなる月らしい。以前イースター島で出会ったアンドレイという青年と気がつけば文通を交わすようになり、久しぶりに彼に宛てて手紙を書いた。心を鎮めてゆっくり丁寧に文字を綴っていく。不思議と気持ちが落ち着く。誰かに読んでもらうというだけで手が震える。  ようやく1年の折り返し地点。でもなんだかあっという間だった気もする。どこか遥か彼方で起こっている出来事のように感じても、今まさに私が住んでいる家の近くで各国がしのぎを削っている。そしてきら

ものを書くことについて

 今日はギリギリの曇り模様。ここずっと毎週のように雨だったのでなんだか外に出るのが億劫で大体家に引きこもっていた。ようやく外に出かけられそうだったのでいそいそと玄関から出てみる。どこからかミンミンと忙しない蝉の鳴き声がする。気だるい暑さの中で自転車を漕ぐと、風が気持ちよかった。  さてここ1週間ほど会社の新人さん向けにずっと研修をしていたお陰できちんと本が読めていなかったので、ここぞとばかりに本を読んだ。その中で今日読み終わったのが、松岡圭祐さんの『小説家になって億を稼ごう

いつだって心躍りたいではないか

 遠くから聞こえる雷鳴の音。気がついたらPCがプツンと切れて、それまで作業していたことがパァになり頭が真っ白になった。数秒後に再び電気が供給され始め、再び電源をつけると幸いなことに自動保存していた。危ない危ない。  とは言いつつも、そもそもの話雷が鳴ってる中で電化製品を使うことはすなわち故障のリスクを抱えていることがわかったため、今後はもう少し気をつけよう。油断大敵。 *  いつだって私はワクワクしながら生きていたい。仕事だってプライベートだって苦しいよりは楽しい方がい

ムクドリの逆襲

【前書き】 特に実のある話でもなく、私の周りで起きた出来事を振り返る回です。  駅への道を歩くたびに、「キイキイキイキイ」と声がする。何だかめっちゃ近くに鳥がいる!と思っていたら、続いてその声に呼応するかのようにそこから少し離れたところから「キイキイキイキイ」と声がするではないか。  こんな至近距離で愛の囁きを交わしているのか、それならば近づいて一緒に行動すれば良いのに。と若干呆れた。すると次の日も同じ場所から同じような声がするではないか。  変だなと思って調べてみたら

あたまの中の栞 -水無月-

 早いもので新しい年を迎えてから半年が過ぎようとしている。「光陰矢の如し」とはきっとこんな時に使うんだろうな。6月に入ってからは毎日のように雨が降っていて、正直な話気が滅入った。もう地面が陥没してしまいそうなくらい雨が降り続けて不安が胸を掠める。  ここ一ヶ月長い物語を書いているうちに気がつけば1日が終わっている、という日々が続いた。物語を書くのは全然私にとっては苦ではなくて、あー私生きてるって思ってしまった。なんて単純なんだろう。自分が紡ぎ出す物語の世界に没頭することによ

シエラレオネの祈り(後編)

<前書き> 今回の記事は「戦争」について触れています。この手の話が苦手な方は、後ろを振り返らずに、そっと記事を閉じていただければと思います。またあくまで私が読んだ本を参考にしており、全てが事実かどうかは分かりませんので悪しからず。今回は2部作のうちの後編です。 ↓ 前回の話はこちらです。  そういえば昔よく近所の子どもと掴み合いの喧嘩をしたことを思い出した。喧嘩の原因はよく覚えていない。たぶん、些細な主張のすれ違いがきっかけだったように思う。その頃、私は自分の考え方がまか